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メイド人形  作者: Ichiko
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新しい人材

『志茂田さんをメイド人形にするのですか?』


『どういう事だ?メイド人形って?』


アリサは武藤に聞いたが、事情を知らない高山が驚いた。


『高山さん、黙っていて申し訳ございません。実はこのアリサはもと人間、しかも男性だったのです。アリサの場合、自ら人形になりたいて志願してくれましたが、私どもの会社は政府からの依頼で自殺者を減らす代わりに生きる希望を失った人を人形にする許可を得ているのです。』


『ちょっと何を言っているのか分からないのだけど。』


『人形は人間だった自分の意思とAIのハイブリッドで動くのです。アリサの様に高性能であればAIとほぼ同じ考えになりますが、意思が弱い人でもAIの管理があれば難なく与えられた仕事が出来る様になります。』


『ますます分からない……。』


高山も志茂田も理解不能だ。


『自殺志願者でも家族がいたりまだ生きる望みがある人は説得をして社会復帰が出来る様にしてほしいと願っています。しかし、説得しても志茂田さんの様な方はいるのです。高山さん、そういう人を生かすためにご協力戴けませんか?』


高山は頭の中を整理して答えが出た様だ。


『分かりました。自殺志願者を生かすのであれば協力致します。』


『ありがとうございます。政府の機関に報告して、それ相当の処遇を致します。』


後日、事務所には政府からかなりの資金が振り込まれた。


『僕、死なせてくれないのですか……?』


『志茂田さんは私たちの仲間になります。AIが勝手に動いてくれますから志茂田さんは何もしなくても良いのです。楽しいですよ。』


志茂田はあまり納得していないがアリサは歓迎する。


『志茂田さん、もう過去の事は全て忘れて下さい。会社やお住まいの処理は全部私どもで行ないますから。高山さん、警察への連絡も自殺志願者のカウントも一切不要です。志茂田宗一という人間は最初からいなかった事になりますから。』


どこまで信じて良いのか分からない高山だったが、下手な事をすると自分も人形にされてしまう気がしたので、従う事にした。


志茂田は迎えの車でつくばに送られ、アリサと武藤はそのまま残りの期間、高山のもとで自殺志願者を探し回り、一週間で新たに2人を救いだしたが、その2人は説得をして警察に連絡をし、家族のもとに帰された。


『あの志茂田って男はもうアリサみたいになっているのか?』


高山も一週間でだいぶ理解をしてきた。


『いえ。気持ちを整理させて、暫くは適正判断をします。これからはアリサみたいに女性型のメイド人形だけではなく専門分野で働ける人形が出来ますから、志茂田さんはもしかしたらここに配置されるかもしれませんよ。』


人形自体がデスペアーチェッカーの機能を持ち、荒れた森の中でも動く事が出来、冬でもバッテリーの消耗が少ない寒冷地に特化した人形がいずれ事務所に配置される事になっているが、志茂田は自身の経験もあるので、そうなる可能性は充分ある。



つくばへの帰り道で武藤とアリサは話を続けていた。


『ただなあ、出来ればそういう特殊型はA型が望ましいんだが、アリサは志茂田さんをどう思う?』


『良くてB型ですが、かなりCに近いと思います。今の段階では。』


アリサの見立てはかなり厳しい。


『ただ、根は真面目ですし、暫く研究所で教育を受ければ基準も上がりますよ。』


自分の気に入らないだけで人を殺してしまう死刑囚とは違い、自分の弱さに負けて自殺を図る志茂田の様な人物の方が基準が上がりやすいのである。


『そこでだ、アリサとユウリはこれから研究所で新しい人材育成のための教育係になってもらう予定なんだ。』


『私とユウリがですか?』


『今は最初はB型として製造して基準が上がったらA型に改良しているが、出来れば最初からA型で製造した方がコストも掛からないからな。教育期間中に適正を見て特殊型にする事も出来るし。』


今までは素体に余裕がなく即人形化をしていたが、素体を確保するルートが確立されれば時間を掛けて人形化する事も可能だ。


『これからは観光地や公共施設のガイドや工事現場の誘導員といった引き合いも来ているから特殊型も増えると思う。アリサたちには今回みたいにデータ採取のために動いてもらう事も多くなるだろう。』


『忙しくなりそうですね。』


『その方が良いんだろう?』


アリサは暇をもてあそぶより忙しい方がありがたい。


2人が戻ると、研究所の玄関で出迎えを受けた。


『お帰りなさい、アリサ!』


『ユウリ?!』


ユウリの修理が完了し、アリサの帰りを待ちわびていたのだ。


『お疲れさまでした。大変だったでしょう?』


S型となったユウリの口は、言葉に合わせて動き、人間そのものである。


『大丈夫。私は森の中には入らなかったし。武藤さん、強がっているけど結構見たくない物を見たってびく付いていたけどね。』


『アリサ!』


余計な話を暴露され、武藤は面白くない。


『ユウリはもう制限なしでどこでも自由にお話出来るんだよね。』


『うん。アリサも早くS型になってね。』


アリサは無二の親友であるユウリの復帰を喜び、ユウリもアリサの帰還を喜んだ。


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