人形の性能
インキュベーションタワーに配備されたメイド人形は全部で40体で、久保塚専属のユウリを除くと上・中・下層階それぞれに13体づつ配置されている。
A型はアリサ、カリン、ティアラだが、その他B型9体、C型27体が揃えられた。
[アリサさん、C型って元は死刑囚の人たちですよね。そんな人たちがメイドの仕事が出来るんですか?]
[メイドといっても主に雑用専門ですからね。]
掃除やごみ捨てといった単純作業はC型に任せられるが、子どもの面倒を見たり食事を作るのはB型以上でなければ出来ない。
当初はB型とC型の比率が逆の計画だったので、かなりアリサたちに負担が掛かりそうである。
[効率的に動けばなんとかなります。]
久保塚の部屋以外は専属ではないので、各部屋を巡回してサービスをしていく訳だが、部屋によってサービス依頼はまちまちである。
朝、どの様に部屋を回るかをメイドたちに指示を出し、A型、B型が分担しC型はその補助をするのだ。
ただ当日即時のサービス依頼もあるので、そういう時はとりあえずC型のメイドが対応する事になり、心配の種は尽きない。
単純作業だけなら特に問題はないが、多少スキルの高い仕事になるとエラーと呼ばれるミスが多くなるのがC型の特徴である。
[またC0001018号エラーですね。今月4件目です。]
C型でも個体差があり、全くエラーがない人形もいるが、C0001018号は特にエラーが多い。
夜、仕事が終わりドールセンターに戻った人形たちは、それぞれ自分のライフユニットで充電に入るが、アリサはC0001018号を呼んだ。
『ちょっと宜しいですか?』
アリサは部屋にあるタブレットを取り出し、管理者モードから通信機能を呼び出した。
『はい、タブレットを通じてだけどこれであなたの気持ちを伝えられますよ。』
C型も本当はB型同様にタブレットで自分の意思を表現出来るのだが、普段は意思が暴発しない様にロックしてあるのだ。
[気持ちを伝えられます……って、どうなってんだ?]
『大川一太、28歳。6年前に相良陽子さんとその家族を殺害して死刑判決……ね。ずいぶん恐ろしい事をしたんですね。』
アリサはC0001018号の過去データを読む。
[そうだよ。俺はそのままこの世とさらばするはずがなんでこんな事になったんだ?]
『工場でも言われたでしょ?贖罪。』
[こんな恥ずかしい格好で自分の思う様に動けないなんて死んだ方がマシだ。だいたいあんただって元人間だったんじゃねぇのか?]
『そう、私もあなたと同じ元男性です。あなたと違うのは自分がなりたいからなったの。だから私の心はAIとシンクロしていてあなたみたいに一方的に支配されている訳ではないんです。』
AIと一体になったA型と心が閉じ込められているC型は大きく違うのだ。
『自分が望んだものだから毎日楽しいわよ。』
[楽しい……ってバカじゃねぇのか?]
『バカかもしれないけど、楽しいんだから良いんじゃない?あなたもせっかく死刑台から解放されたんだから楽しく仕事してみれば?そうすればエラーも減る筈なんだけど。』
[楽しくやったってずっとこのまま変わらないならずっと雑用係してやるよ。]
『本当はあなたたちはL型にされたかもしれなかったのに、メイドが不足していたからC型になったの。』
[L型?なんだ、それ。]
A~C型の他、S型やL型の開発も進んでいる。
『特に性犯罪者向けに開発されたお人形。所謂ラブドールよ。男性のはけ口に使われるの。L型は感じると声を出せる様になっているだけで、身体は動かせないの。例えば所有者が飽きて全然充電してくれなかったら、自分では充電出来ないからそのまま死を待つだけ。』
おもちゃとして使われたあげく惨めな末路を味わう事になる。
『C型ならその気になればB型に改造は出来る可能性はありますよ。A型同様の基準を維持する必要があるからかなりハードルは高いけど。』
[こんな風に自分の気持ちを表現出来るのか?]
『B型になれば自分のタブレットがあるからね。でもAIとシンクロするにはあなたみたいな性格では難しいですよ。逆にこのままエラーばかりするならL型にされるかもしれないからね。』
性能の低いメイドをいつまでも使う訳にはいかず、エラーが続けば別の人形と交代する事もあり得るのだ。
[脅しか?]
『あなたのエラーを減らしたいだけ。せっかく一緒にお仕事しているのだからね。』
アリサがそう言うとタブレットの通信を切断し、C0001018号は再びAIが支配してそのまま自分のユニットに戻った。
(これで少しはエラーが減ってくれれば良いけどな。)
C0001018号がこのままメイドとして奮起してB型を目指すのか、エラーが減らずにL型にされてしまうのかは分からない。
あくまでも本人次第なのだ。




