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メイド人形  作者: Ichiko
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スカウト

『あなたも私たちの仲間になりませんか?』


アリサは落ちぶれたとはいえ有名人の友理を人形にスカウトしたのだ。


(え、まさか?)


ピュア★ラブリーにいる時はAIがメイド人形になりたいという人に反応してスカウトをしてきたのだが、アリサは自分が人形になって半年以上ひとりもスカウトが出来なかった。


これは、アリサに力がないのではなく、アリサが優秀過ぎて同じ基準の人形候補者が現れなかったからなのである。


(友理さんが人形に?)


アリサはAIが発した言葉を一瞬読み取れなかった。


『そうなれたら嬉しい……。アリサさん、人形のはずなのに凄く生き甲斐を持ってるって感じだから。私、ここに来てアリサさんを見てからずっとアリサさんみたいになりたいと思っていたの。』


アリサが元人間だった事を知ってはいないはずの友理がアリサの様になりたいと思っているというのは驚きだが、アリサ自身は歓迎したいと思う。


『分かりました。担当に連絡をして後程友理さんの自宅に向かわせます。』


友理は喜んで田代が待つ車に向かい、アリサはタブレットで武藤に報告した。


[アリサの目にかなったという事はかなり基準が高いのだと思う。まさかあの飯島友理がねぇ。]


武藤もアリサの報告を受けて驚いていたが、直ぐに友理の住むマンションに向かい、ファーストコンタクトを行なった。



友理は自分の部屋に戻り、気持ちを整理している。


(これからどうなるんだろう。今さら芸能界で仕事なんてないし。ホントにアリサみたいに人形になりたいよ。)


友理は自分が芸能界では賞味期限切れだとは認識していたが、アリサの言葉は友理を励ますための冗談でしかないと思い、ため息を吐いていた。


そんな時、インターフォンが鳴り、重い足取りで友理は応答する。


『はい。』


『飯島友理さんですね。私、カスタムドール社の武藤と申します。我が社のアリサことA0000023号より連絡があり、参りました。』


(アリサさんから連絡!)


アリサの言葉は本当だったのだと友理は喜ぶ。


『今開けます。ご足労ですが823号室までお越し下さい。』


武藤は友理の言う通り、823号室に入った。


『はじめまして。カスタムドール社の武藤です。』


『飯島です。まさかアリサさんのお話が本当だとは思いませんでした。』


友理は武藤にコーヒーを淹れ、話しを進めた。


『お察しと思いますが、アリサことA0000023は元人間、しかも男性でした。彼は我が社が経営しているメイド喫茶で自ら人形になりたいと申し出て、今は優秀なメイド人形として働いております。』


『……男の人?』


友理はアリサが元人間ではないかとは薄々感じていたが、男性だった事までは予想外である。


『ここからは重要な機密事項ですので、話す以上、友理さんにはそれ相当の覚悟を持って聞いて戴きたく存じます。』


友理の覚悟は決まっていた。


『我が社が開発したボディスーツとヘッドマスクを着用してライフユニットに入るとまず肉体がスーツに侵食され同化致します。同時にマスクによりメイドとしての機能が与えられ、自分の意思は残りますがスーツで保護されるため自ら言葉を発したり身体を動かす事は不可能となります。』


武藤は淡々と説明する。


『ちょっと待って下さい。自分の意思で身体を動かせないなら人間をベースにする必要はないのではありませんか?』


『最初はそういう考えで人形を開発していましたが上手くいかず、より人間らしい人形を作るために人間とAIを同期する必要があったのです。もちろん、同期するにはアリサの様な高い基準が求められているのですが、友理さんがかなり高い基準を持っているとアリサから報告があったのでこうして伺った訳です。』


友理は自分がそんなに人形になるほど高い基準があるとは思ってはいなかったが、武藤から言われ俄然その気になってきた。


『しかし、今までと違うのは友理さんが有名人という事です。今までは一部の人の記憶から人形化する人間を抹消すれば良かったのですが、友理さんくらいになるとそうはいきません。もちろん、所属事務所にもしっかり話をしないと大問題になります。』


『どうすれば良いんですか?』


『友理さんには午後3時にホテルで記者会見をして戴きます。そこで久保塚と破局した事、芸能界を引退して海外に移住する事を発表してもらいます。それから半年も経てば飯島友理という存在は世間からはもう忘れ去られるでしょう。』


『酷い言われようね。でも、その通りだと思います。分かりました。今はドラマもCMもないから違約金は発生しないし、後は事務所とかこのマンションだけど。』


武藤は友理をただのお飾りタレントだと思っていたが、意外に細かい配慮をするのでアリサがスカウトしただけあると感心した。


『それは全て我が社が受け持ちます。友理さんは記者会見が終わりましたら我が社が用意した車で本社工場に向かってもらいます。』


もう明日には飯島友理という女優はこの世からいなくなるのだ。


『全てお任せします。』


こうして、友理は久保塚への未練を断ち切るべく、記者会見に向かうのだった。

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