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メイド人形  作者: Ichiko
11/26

オーナー

地上40階建ての高層マンション。


万全のセキュリティを誇り、住む人にとって痒いところに手が届くサービス。


そのサービスの一環として、カスタムドール社が開発したメイド人形がフロア毎に配置され、炊事・洗濯・清掃といった家事を代行する……。


アリサはその新たなサービスの先駆けとなるべく、先行して作られた最上階にたったひとつある部屋の専属メイド用に改造されている。


改造といっても優秀なメイド人形のアリサは通信機能の強化くらいしか必要なく、3日後には工場から出てそのご各種試験を経てマンションに送られた。


久保塚祐三、45歳。ネットビジネスで会社を急成長させ、時代の寵児と呼ばれるやり手社長がアリサの主人となる。


久保塚自身もこのマンション建設には一役買っているため最上階のオーナーとして住む事になったのだ。


最上階の久保塚の部屋はだだっ広いリビングのほか寝室、執務室、キッチンに別れており、アリサ用の充電ユニットもリビングに設置されているがここではアリサは立ったまま休む形になる。


『もう家財道具の搬入は完了している様だね。』


久保塚が会社に行くのは週2回程度で、普段は執務室で業務を行ない、会議もネットを通じてここから重役や部下に指示を出す。


『お待ちしていました、カスタムドール社の武藤さんですね。』


久保塚が執務室から出てきて武藤を迎えた。


『久保塚社長、こちらがアリサです。我が社のメイドの中でもトップクラスの性能ですので、家事一切をお任せ下さい。』


『アリサと申します。ご主人さま、宜しくお願い致します。』


武藤に続き、アリサが久保塚に挨拶をした。


『ふむ、他社のAIロボットよりかなり人間に近い様だな。』


さすがに他社でAI×人間という発想はないだろう。


『ただ、月2度の訪問管理と半年毎のメンテナンスは必須です。なにぶん精密な人形ですので。』


『分かりました。うちは来客が多いので、そのチェックとかも出来るのかな?』


会社に行かないという事は自宅が会社の機能の一部を担う訳で、その分セキュリティの強化が必要になってくる。


『大丈夫です。10000人程度の人認識機能がありますから接客だけでなく、マンションの警備員と連係して賊にも充分対応出来ます。』


稼動するのは朝6時から夜9時までで、ピュア★ラブリー時代より短くなるがやる仕事は多い。


久保塚には萩野幸作という社長秘書がいるので久保塚の仕事には干渉せず来客と部屋の管理だけがアリサの仕事となる。


『萩野さん、宜しくお願いします。』


『人間みたいだな。宜しく。』


萩野も秘書という立場上、ほとんど自宅に戻らず夜中リビングのソファーで寝る事が多く、そんな時はアリサは萩野が泊まる時はいつも毛布と夜食を用意してから充電ユニットに入る。


(人形より人間の方が働く時間長いよね。)


実は久保塚の来客は夜の方が多い。


独身で金持ちの久保塚に寄ってくる若い女性は多く、久保塚自身も夜になるといつも違う女性を部屋に招いている。


『おはようアリサ、今日泊まっている女性のデータだ。』


萩野はその都度泊まった女性のデータを充電が完了したアリサに伝え、アリサは改めてその女性の詳細データを呼び出す。


女好きのやり手社長のスキャンダルに発展しない様女性の保護も必要なので、萩野ひとりでは対応出来ないのだ。


『おはようアリサ、朝食を頼む。』


朝、久保塚がそう言った時は自身の朝食ではなく、一緒に泊まった女性の分も用意しろという意味である。


久保塚は夜どんなに深酒しても朝食は必ず摂るのだが、昨晩を共にした女性にも朝食を与えてから見送る事にしている。


久保塚は常日頃、朝食は必ず摂らなきゃ駄目だ、頭を回転させ原動力になると言うのが口癖で、用意した食事をほとんど食べなかった女性は2度とこの部屋に呼ばれる事はない。


(この娘は次はない。)


ピュア★ラブリー時代とは違い、スカートが長い黒のクラシックなメイド服を着たアリサも食事中女性のチェックをしており、もう2度と来ないだろうという女性のデータはその場で消去する。


久保塚は毎日違う女性を自室に招いているから、相手にしなくなった女性のデータを常に消去していかなければ不要データだらけになってしまう。


さすがに容量オーバーになるほどではないが、いちいちデータとして残すほどの女性はそう多くないのである。


久保塚の女性遍歴は既に何度も週刊誌でスキャンダルとして取り上げられているが、そんなものはどこ吹く風といった様子で相手となる女性たちも割り切っている。


久保塚は大抵昼間は執務室に籠り仕事をしているが、5時になると直ぐに夜の街へ繰り出す。


その為、お抱えの運転手は昼間は寝ていて久保塚の[出勤]に合わせて車を磨き準備をするのだ。


執務室は鍵が掛けられ、アリサも入る事が出来ない。


通常、他の仕事が忙しい朝の8時半から30分のみ清掃の許可が与えられ、その他は昼食時と10時、3時に飲み物の補充の為に入室するだけである。


朝は他の仕事を差し置いて執務室の清掃が優先されるが、とにかく毎日同じ状態で9時に仕事を開始しないと久保塚の機嫌が悪くなり、会社全体の業務に影響を及ぼしてしまうのである。


そんな久保塚には一度設定しておけば時間に正確に行動するアリサは適任といえるのだ。


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