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第二章-56『鳴動』

「ぐぶゥッッ!!?」


 齢十二の細足で蹴られたとは思えないほどのスピードで、ロンペレはバウンドすることなくカッ飛んで壁に激突し、土埃の中に沈んでいく。


「な、な、な…………」


 後ろで見ていたカルロッタは、、ただ愕然としていた。カルロッタが知る妹は大の大人、それも戦いの中で練り上げられた肉体を持つ亜人種を足蹴にして吹き飛ばすなどできないはずなのだ。これまでもそういったカルロッタの中の"妹像"を遥かに超えたような所業を重ねてきたセカイだったが、ここに来てそれが極まった。


「──ふぅ」


「ッ! ティナ!!」


 そうして極まった疑惑は、膝をついて倒れ込むセカイを見た瞬間爆発する。


「ああ、カルロッタさん。私はティナちゃんじゃ──」


「大丈夫!? 何処も痛くない!?」


「……うん、平気。疲れちゃっただけ」


 伏す前に受け止めたティナの身体は確かにどこも変わりないようで、カルロッタは心の底から安堵し、セカイもまたその様子を微笑ましく思った。ドレイクが「へへッ、聞いちゃいねえなァー」と茶々入れてくるのには苦笑したものの、無理ない話なのは分かっている。


 立ち込める土煙を前に、二人と一匹の緊張は少しずつ弛緩していった。


「……終わったのか?」


「うん、ちゃんと当てたもの。ソルベリウム挟んだけど、騎士と戦ったときは鎧の上からでもバッチリだったし、何よりあの時とは気合が違うもん。あとはふん縛るなり何なり、楽な仕事……かな」


「そう……これでオリヴィーも救われたわ。いや、むしろこれからか」


「にひひッ、でもきっと大丈夫──ん?」


 安心も束の間。


「──ぁぁぁああああびゅッ!!」


 セカイへとバトンを繋ぐため捨て身の特攻を敢行したキヨシが、情けない声を発しながら結構な高度から落下してきた。


「きー君!? 大丈夫?」


「ゲホぇッ、どうなったッ!!?」


「……ふふ、今終わったとこ」


「アンタ、いつの間に飛行機の動力ソルベリウムを外してたワケ?」


「うェッホ、ゴホッ!! 車から降りたら誰だって鍵を抜くんだ 免許持ってねえがな!」


「いや何言ってんだか分からんけど。周到な奴」


「じゃあ家でもなんでもいい──!」


 キヨシの例え話が通用せず、カルロッタは怪訝な顔で小首を傾げる。持ち出したものが発明されたのは、元いた世界でもかなり近代に入ってからという事情を鑑みるとやむを得ないか。それにつけても、誰かしらが思いついていそうなものだが、そこまで世の中は上手く回っていないのだろう。


 しかしキヨシの関心事はそんなことではない。


「セカイ、お前どうしたんだ!? そんなにぐったりして……」


「ん? んー……なんか、眠くって」


「ね、眠い? そりゃお前、地下に入ってから随分経つけど……ハッ!? まさかこのクソ暑い環境で熱中症!? さっき俺に言いかけて遮られたのって──」


「待って待ってきー君、落ち着いて。たぶんそういうのじゃないから」


 散弾で撃たれた際に続き、セカイを襲う害に過剰反応を示すキヨシを、そのセカイ自身が宥める。そうは言っても、普通に考えたら"疲れた"とか"眠い"だとかで済むとは思えない程、セカイに置かれた比重は大きい。本当に大事ないのだとしても、少しは労るべきだろう。年寄りのような扱いで、本人は嫌がるかもしれないが。


「何にせよ、本当によくやってくれた。セカイもそうだが、ティナちゃんも空で俺を助けてくれたし。この世界の女傑たちには、しばらく頭が上がりそうにないぜ。でもまあ……信じてた」


「何を?」


「作戦だよ。なんにも言ってねえのに合わせてくれたじゃねえか」


「へ? 言ってたじゃない」


「は?」


 整然とした思考が戻ってきたキヨシは、呼吸を整えながら気になった事柄について、セカイに伺いを立ててみるが、余りにも予想外過ぎる返答に素っ頓狂な声が漏れた。


「え? え? 最後以外はちゃんと計算づくだったよね」


「そりゃそうだが、口頭で説明した覚えはない。怖いこと言うなよお前」


「えー、絶対に言ってたよ。聞こえたもん。ねー、ドレイク君?」


「ん? まあ確かになんか聞こえたな。ぼそぼそしててよう分からんかったけど……」


 なんとキヨシは喋ってもいないはずなのに、セカイは『キヨシが作戦内容を口頭で説明した』と主張し、ドレイクもそれをなんとなくだが聞いていたというのだ。しかしキヨシは本当に喋ってなどいない。それこそ創造主様とやらに誓ったっていいと、そう思っている。


 だが、セカイはキヨシに対して悪戯目的以外の嘘を吐いたりはしない。こういう状況で他者ををおちょくったりするような人ではないと、キヨシは信頼していた。


「……ロッタさん」


「アタシが知るか。大体、喋らずにどう伝えるつもりだったんだ」


「ソルベリウムでデカイ腕創ったろ? あれの内側に母国語で彫ってあったんだよ。ホラ、その辺に転がってる破片見てみれば──」


 文字を刻んだ証拠にと、周辺のソルベリウムを漁る内、あるソルベリウムの粒がキヨシの注意を引く。


 ──光ってる?


 淡く、しかし確かに白く発光していたのだ。


 ソルベリウムが発光していること自体はさして重要ではない。重要なのはその色だ。ソルベリウムが発光するということはつまり、内部にチャクラが貯蔵されているという証拠。そして貯蔵されたチャクラの属性によって色が変わる。カンテラや街灯は火のチャクラで橙、飛行機の動力は風のチャクラで緑といった具合に。このソルベリウムは完全なる"白"、"無彩色"。こんなことは初めてだ。


 キヨシは立ち上がり、好奇心半分不安半分といった心持ちで、ソルベリウムに手を伸ばす。


 そうして指先が触れた瞬間だった。


「うぐッ!?」


 ソルベリウムの粒は光を失い、左腕にずっしりとした重さを感じたと同時に、力が抜けてだらりと下がってしまう。


「……きー君?」


「どした?」


 キヨシを案ずる二人の声は、キヨシの耳に届かない。おぞましい想像がキヨシの脳を突き刺し、思考を支配していたからだ。


 この戦いにおいてキヨシは大量にソルベリウムを生成し、大量に散乱させているが、この辺りにあるソルベリウムの用途は限られている。まず、文字が刻まれたソルベリウムの腕。そして、上でキヨシがロンペレに接触した際、奴を拘束するために生成し、セカイが蹴り飛ばしたときに接触した──


「……よもや…………ッ!!」


 震える視線と共に上げた顔の先。未だ消えぬ土埃の中で一点、何かがキラリと輝いた。


「離れろォォォッ!!!」


「え──」


 キヨシが叫び、二人を肩で突き飛ばしたその瞬間だった。


「ぐァッッッ!!?」


 キヨシの右首筋を何かが掻き切って飛んでいく。


「……は?」


 突き飛ばされた二人は目の前で何が起きているのか分からず、気の抜けた声を漏らす。ただ呆然と、目の前でキヨシが苦悶に満ちた表情で、鮮血の吹き出る傷口を抑えながら倒れるのを見ていた。いや、何がどうなっているかなど、およそ察してはいる。だがどうして? 何故? といった不条理──()()()()()()()()()()()という認識と、眼前で起こったことの矛盾が、いとも簡単に思考を麻痺させた。














「ゲホッ、ぅえ…………ッふゥ……効いたァ~。あのガキ、やっぱただモンじゃなかったな」













 ──馬鹿なッ!! なんでこうなっちまう!!? まだ動けないはずだろう!!


 土煙の中から、腹を擦りながら肩で息をして現れる異形。


「ロンペレッ…………!!」


 『騎士団長の手管』を受けて、まともに動けないはずのロンペレが、自分の足でしっかりと立っていた。


「ど……どうしてッ…………セカイがキッチリブチ込んだはずなのに……目の前で、この目で見たはずなのにッ──!!」


 何故だどうしてだと子供のように喚き立てても無意味。そんなことはカルロッタにも分かっている。しかし、喚かずにはいられなかった。今、道理に反して起こっていることが理解もできず、受け止めることもできない。セカイも同じだった。セカイはこの世界にやってきてから恐らく初めて、『そんなバカな』『有り得ない』という気持ちを理解したのだ。


 当然、敵はそんな事情など知ったことではないし、まして待ってなどくれない。


「さて……」


 ロンペレが身体を捩るとパリッと軽い音が鳴り、身体に張り付いたソルベリウムが崩れ落ちていく。あれはキヨシが触れた際に、身体の自由を奪う目的で生成して張り付けたソルベリウムだ。ただそれまでと違うのは、キヨシが触ったソルベリウムと同様に、白く輝いていること。


 それらの内一つをロンペレは再び生産した水のビットで包み込み、カルロッタに向けて弾丸のように射出してきた。


 ──最悪だ……あの野郎、"気付いている"ッ!!


「こ、こんなもんッ!!」


「ダメだロッタ! そのソルベリウムに触れるな!!」


「ッ! なら!!」


 カルロッタはキヨシの忠告を聞き入れた──誤った形で。着弾の直前、カルロッタが弾丸を"叩き落とす"ために土の装甲を腕に装着していたのだ。


「違う! 土の装甲越しでもだッ!! そのソルベリウムが『手管』なんだァーーーッ!!」


「なッ──」


 仔細を伝えた頃には手遅れだった。


「ッ、ぁあッ!!?」


 弾丸に触れた瞬間、全身に電流が走ったようにカルロッタの全身がビクンと跳ね、力なく倒れ伏す。


「……あ……あぁっ…………アがっ、あッ…………!!?」


「カルロッタさんッ!! どうしたの、しっかり……!!」


 身体を揺すって気を確かに持たせようとするセカイに対して、カルロッタは何かを言おうとしているようだったが、全く呂律が回らないままで何を言っているのか分からない。ただ、その表情からはとことんまで『ワケが分からない』という感情──当惑が、とめどなく滲み出る。


「フゥ~…………俺もまともに食らったなら、ああなってたのかね? 空恐ろしい話だ、正直肝が冷えたぜ」


 一方ロンペレの態度は余裕そのもの。先程まで崖っぷちに立たされていて、その上突き落としてやったはずの人間のそれではない。


 何故か? その答えをロンペレ、そしてキヨシはおおよそ掴んでいた。


「使徒サマ、テメエのおかげでどうにか危機から脱することができたんだと思うぜ」


「ぐッ…………」


「睨むなよ。こっちは感謝してるんだから」


 皮肉交じりに笑いながら鼻を鳴らし、剥がれたソルベリウムを指の上でクルクルと回しながら、ロンペレはゆっくりと歩を進める。


「これ、使徒サマが俺にくっつけたソルベリウムな。『手管』のガキが俺を蹴っ飛ばした時……このソルベリウム越しに蹴った。それが失敗なんだ」


「まさか……でも…………」


「ああ、まあ言いたいことは分かるよ。"鎧の上からでも効く"ってのがそもそも、『騎士団長の手管』の凄いところであり、有名なところだ……ここまで話せば、もうピンとくるんじゃねえか?」


 セカイには分からないようだ。無理もない、まだ混乱しているだろうし、何よりこの世界で表立って動いていたのは宿主のティナであり、世界の常識に明るいワケでもないのだ。


 そんなセカイに、ロンペレは懇切丁寧に、しかし手短に要点を絞って教示した。


「……『手管』の正体は、チャクラに根差した何か……そういうことだと考えるしかねえ。言ってしまえば……火、水、風、土──そのどれにも属さない、全く新しい精霊要らずの"魔法"なのだ。だからソルベリウムに"吸われ"、それを使ってやれば……」


 顎で指した先では、セカイの傍らでカルロッタが倒れている。それが全てだ。


 キヨシは空中でロンペレに接触した瞬間、身動きを封じるために万全を期してソルベリウムを生成し、実際一定の効果を上げた。さもなくば、セカイの蹴りが直撃する前に逃げられた可能性も否めない。


 だがその一方で今このひととき、その機転が最後の詰めを致命的に邪魔してしまっていた。知らなかった、そして完全なる偶然であると言えど、ロンペレが無事で、セカイに向けて歩みを進めている、という事実は動かない。


 ──……何ッ!?


 そう、『セカイに向けて』。ロンペレを睨みつけるキヨシなど目もくれず。


「かァッ!!」


「おぉっと」


 気付いたキヨシが即座に間に割って入るが、やはり真の意味ではロンペレの眼中にはないようで、取っ組み合いのような形で相対しているにも関わらず、歯牙にもかけていないのがハッキリと伝わってくる。


「ッえぇい!! セカイ、ロッタとドレイクを連れて逃げろ!! ロッタの回復まで俺が時間を稼ぐから、時が来たら土の魔法で──」


 セカイからの返事はない。絶望的な予感から背後に目をやると、セカイはカルロッタを庇うように上から覆い被さり、しかし力なく横たわっていた。


「ご、ごめん……ね……眠い…………どんどん、気が……遠く…………最初の夜みたいに…………」


「セカイテメェーーーーーーーッ!! 気をしっかり持たねえか、テメエがやられたらティナも終わりなんだぞ!!」


 ドレイクが小さな尻尾でセカイの顔面をベチベチと引っ叩くのも虚しく、最早セカイには逃げる力も残されていないようだ。


 ──なんだってこんな時に……──!!


 何故? 何をきっかけに? そういった疑問もキヨシの中に湧き上がってきたが、すぐにその答えは降ってきた。


 セカイはこう言っていた。『最初の夜みたいに』と。


 最初の夜、即ち国教騎士団と相対し、逃げ果せたあの夜。確かに逃げ切った後でセカイは倒れ、目を覚ましたときにはティナに交代していた。そしてあの時と今この時の共通点──


 ──まさか!!


 キヨシの脳裏をよぎったのは、右手の人差し指。ソルベリウムを無尽蔵に生み出す異能。そして尋常ではない量のソルベリウムを生成したという事実。これしか考えられない。


 血が逆流しているような感覚と共に汗が吹き出し、顔面蒼白となる。


 ──()()()()()()ってのか!! この能力とセカイが!?


 思い返してみれば、この事実を見破る種はいくつも転がっていた。


 最初の夜や今回に匹敵するほどソルベリウムを使ったのは初めてではなかったが、そういう日はセカイが表に出てくることはなかった。中でも特に、空賊たちとのファーストコンタクトの日も、いつもなら勝手にキヨシと同衾してくるセカイはやってこなかったのだ。


「…………~~~~なんでだッ!! ロンペレ貴様、なんで俺を無視してアイツを狙うッ!!」


 ふつふつと内に滾ってくるどうしようもない怒りが頭をもたげ、それをロンペレにぶつけるように叫ぶ。しかしロンペレはそれすらもどこ吹く風といった、少々おどけた口振りで、


「……俺はよォ、この間初めて会った日にテメエが使ってた"白い炎"を、てっきりテメエの持ち物だと思ってたんだよ。でも今こうしてみて分かった。あれはあのガキの持ち物なんだろう? よくよく考えてみりゃ、"アイツ"もたぶん女だった……」


「何の話だ」


「つまり俺が戦うべきなのは使徒サマでも、まして土の有象無象でもなく。あのガキだってこと」


 ロンペレとしては過去に根差した話をしているつもりでも、キヨシが知る由もなく。一方でロンペレも、白い炎──つまりドレイクがセカイでなく、ティナの持ち物だと知る由もなく。話が全く噛み合わず、ただ苛立ちが募るだけ。


「ワケ分かんねえ事言ってんじゃねえッ!!」


 その苛立ちは爆発し、キヨシのソルベリウム装甲を伴った裏拳となって、ロンペレのこめかみに炸裂した。


 炸裂はした。炸裂してなお、ロンペレは涼し気に、しかし威風堂々とそこにただ立っていた。


「……その眼をもう少し早くできていれば、俺とアイツの間に入ってこられたのに、よォ!!」


「ッあ!!?」


 ロンペレの重い拳が、キヨシのどてっ腹に深々と突き刺さる。視界が揺れて一瞬暗転し、あまりの苦痛に意識を手放しそうになる。


 しかし、キヨシの強靱な精神力がそれをさせなかった。


「きー君……!!? ダメッ──!!?」


 キヨシに近付こうとセカイが地面を這いずるのを、手の平を向けて制止する。キヨシの願いはそうではない。助けてくれ、などとは微塵も思わない。


 ──逃げろ……セカ……


「じゃあな」


「きー…………ッ!!」


 キヨシの腹にめり込んだロンペレの拳から水の散弾が噴き出し、ズタズタに切り刻んでいく。シミ一つ無かったワイシャツが、血でネクタイよりも赤黒く染まり、鮮血の花が咲き乱れた。


「ア──────」


「『アイツに手を出したら殺してやる』。自分で気付かないか? お前は今、俺と同じ眼をしていたのに……残念だ」


 言うや否や、ロンペレは今度こそ気を絶つ寸前となったキヨシの腕を引っ掴み、まるでヌンチャクのように軽々と、背後のセカイの顔に血が飛ぶほどに振り回して放り投げてしまった。受け身を取れずに地面に叩きつけられ、痛みにもがくキヨシを尻目に、ロンペレは再び、セカイを見据えて歩き出す。


「待たせたなお嬢ちゃん……さあ、『闘争』を!! もっと!!」


 その表情は、狂おしい程の愉悦に染まっていた。


 当のセカイは唸り声を上げながら、ドレイクと共に頭を地面にこするのみ。


 策を巡らせ、段取りを組み、手を尽くしてもなお足りない。ロンペレの猛威をキヨシはその身で味わい、最早何度目になるか分からない失意に溺れかけていた。


 うずくまり、動けずにただ震えるセカイに、ロンペレが迫る様をただ指を咥えて見ているだけ。


 これがキヨシの限界だった。


 ──もうダメだッ……!!


 その時だった。





──よくもやってくれた!!──





「……え?」


 キヨシの頭の中に、誰かの声が響く。



         ──絶対許さない!!──




──然るべき報いを──




          ──焼き尽くしてやる!!──


 


 次々に流れ込む激しい感情──怒り、そして憎悪の奔流。


 その正体をキヨシは知っていた。そしてそれと同時に酷く困惑もしていた。この流れ込んでくる怨嗟のこもった声は、幾度となく聞いた声だったからだ。キヨシの生涯、そしてこの旅の中で、共に笑い合い、語らった『三つの声』。


 ──セカイ、ドレイク……それに…………。


 いや、声の種類は二つだ。だがキヨシにはハッキリと解る。最後の声はセカイとは違う、生き写しの声──


 ──ティナちゃんッ!?


 刹那、少女の身体から白き炎が立ち上り、激しく煌めいた。

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