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プロローグ



学校で勉強した後、バイトをしてお金を稼ぐ毎日。


おそらく多くの大学生や専門学校生が送っているであろう日々。どうにも最近そんな毎日が暇である。


周りが進学したのでなんとなく自分も進学し、専門学校に進んだまではいいがどうにも毎日がぱっとしない

もっと真剣に進路について考えるべきだったとかそんなのは思わない、なぜなら人生なるようにしかならないってのが俺の座右の銘だからだ

まあ受験も1発合格だったし?忙しいのとか嫌だし?お金がなくても魔法のカードがあるし??


察しのいい方は気づいたであろう、俺は超楽天家スーパーラッキーボーイセイントセイヤ。今日も道に落ちてた100円玉でジュースを買ってやったぜ!ラッキーだろ?


…そんな小さなラッキーもすぐにゴミ箱へと消えていった


だがこんな俺でも唯一、長らく幸せだと思えることがある

それは家に帰って猫と戯れること、それとバイト先でみんなと話ししたりふざけあうことだけである。

そしてこれから、学校が終わりバイトの時間である…ふふふ、今の我を止める者はいない!そう、あの眩しく光る太陽でさえも!!



「じゃーなーセイヤ!」「また明日!」

バイト先の先輩達に別れの挨拶を告げる

「ういー」

…ああ、今日の楽しみがまたひとつ終わった。

さっきまで学校が終わって校門の前でこれからバイトとウキウキだった。

それなのに気がついたらバイト先の前で、しかも綺麗な満月が東の空へと昇っているではないか

2月の寒空の下 ぽつんと立つ、俺。


光陰矢の如しとはまさにこの事、楽しい時間とはこの様に過ぎていくのである


明日もきっと同じことが繰り返される。いつまでこの退屈は続くのだろう、明日?明後日?明明後日??…ハッ、駄目だ、こんなことを考えていては!何か楽しいことを考えなくては!考え…かんが…


「ねえ、せいやくん」

思わず「えっ」と声が出た。振り返った先にはバイト先の後輩の晴香(はるか)さんが微笑みを浮かべながらリュックを背中に背負い立っていた。


あぁ、可愛いなあ晴香さん…スタイル良くて誰にも優しいんだよなあ…清楚系っていうのかさあ…こういう人に弱いんだよな俺、なんていうかスペシャルバイオチックオンリーワンだよなあ…


「ねえ、セイヤくんってば、聞いてる?」

「アアッハイ、ナンデショウカ」


いかんいかん、俺としたことが妄想の世界に浸りすぎちまったみたいだ、先程までアイススケートリンクのようにつるつるだったはるこさんの眉間に氷山ができてしまった。


「明日さ、ちょっと」


ごくん、明日か?明日は丁度休みだ!しかも明日丁度晴香さんも休みの日だ!どっか行くのかな、もしくはだれか誘ってカラオケでも行くのかな!?


「明日夏奈が風邪でダウンしてるからシフト代わってくれない?」


日本の冬が暖かく感じられるほど冷えきった俺のハートに追い打ちをかけるように風が過ぎてく。盛り上がった期待を砕かれるのは些か精神的にくる

特に自転車に乗る帰り道が精神的にくる。


結局明日は出勤になった

畜生、これで30連勤だ。

まだ店長の方が休みがある、社員は週休1日だから今月は俺の勝ちだ。社員の人より働く俺ってなんなんだろうか、ひょっとしてこれが社畜なのか?社畜ってなんだ?いや、そもそも俺は人間なのか?ひょっとしたら俺は牧場の牛や豚と同レベルなのか…?


いかん!こんなに暗くなってしまっては!スーパー超絶ラッキー幸福ボーイの名が泣いてしまう


…そうは言っても顔は勝手に下を向いてしまう。名が泣くというよりは俺が泣いてしまう。


もう嫌だこんな生活


自転車を漕ぎ立ち止まって下を向くと自然と涙が出てしまう

自分にあたる多くの風が俺の涙を助長させた


カサ


ん?今ひょっとして俺の自転車かごから音がした?

うわ、なんだこれ。紙が入ってる

いたずらかなあ…


しかし、いたずらにしては綺麗に4つ折りにされているではないか。思わず手に取り広げてみるとそこには


:「セイレイ満たされり、我 に入らん」


セイレイ…精霊…?なんのことだろ、というか字抜けてるし…しかし中学生のいたずらにしては綺麗な字だしなあ…

ま、いっか。どうせ自分には関係ないことだし誰かのいたずらだろう



毎日が退屈でその紙がいたずらとしても面白いと感じてしまった


月が雲の切れ間から顔を出し、柄にもなく思わず綺麗と思い見上げてしまった



何も考えなかった


何も考えていなかった


いたずらのような紙を手に持ち


なんとなく空に浮かべてみた



この時以降、俺の退屈は雪崩のように崩れ去っていく



すると書いてあった紙の文字が浮かび上がり形を変えた


:認証完了。ユーザー登録ヲ行イマス


「なん、だこ…」


眩しいほどの強く優しい光が全身を包んだ。


そこから先は覚えていない。謎の光に包まれて足から落ちていく感覚だけがあった。





ーーこれは息も白くなるような、寒い寒い2月の話。


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