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掌編集1 奇想カタログ  作者: 石屋 秀晴
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猿の手

 猿の手さまって知ってる?

 欧米の言い伝えか何かに出てくる、願い事を3つ叶えてくれるっていう、ありがたい猿の手のミイラなんだって。

 ある男の人が、その猿の手さまを譲り受けたの。もちろん彼は信じたりしなかったけど、好奇心が旺盛な人だったから、冗談で願い事を3つ紙に書いて、その上に猿の手さまを置いたんだって。それが願い事のやり方らしくて。

 そしたらその夜、彼の家に電話がかかってきた。相手は彼が付き合ってる恋人のお母さんで、信じられないようなことを言ったの。

 うちの娘が亡くなりました。って。

 駅のホームから落ちて、電車に撥ねられて。って。

 彼は、すごいショックを受けて落ち込んで、それから激怒した。

 だって彼が1つめにした願い事は、『彼女が永遠に生きること』だったから。まるっきり真逆なことが起きて、彼はものすごく怒った。

 本当のことを確かめたくて、彼は彼女の家に行ったの。彼と彼女は幼なじみで、家も近所だったから、すぐに着いた。

 でもおかしいの。彼女の実家は真っ暗で、玄関は開いたけど、誰もいないみたいだった。

 彼は何度も来たことがある家だから、とりあえず明かりをつけようとした。そしたら、「つけないで!」っていう声がした。

 彼はびっくりした。その声が、彼女の声だったから。

「お前、生きてたのか?」って彼が聞くと、「うん」って、真っ暗闇から彼女の声が答える。

「おばさんは? 家の人は?」って聞くと、「分からない」って答える。

 彼は変な臭いに気づいた。

 生臭いような、鉄臭いような。

 普通の家じゃ絶対しないような臭い。

 血みたいな。

 彼は照明をつけた。

 廊下の床に何かがいて、ものすごい叫びを上げて近くの部屋に消えた。

 見えたのは一瞬だったけど、彼には分かった。彼女だったって。

 腰のあたりでほとんど二つ折りになってて、背骨が見えてて、何本か取れた手足が神経か何かで繋がってて、首がもげかかってて、ぶらぶらしてた。そんな姿で彼女は生きてた。


 彼は彼女の家を飛び出した。

 助けを呼びながら走った。

 でもどれだけ行っても、誰もいない。

 どこへ行っても真っ暗で、街の人も、お巡りさんもいない。

 彼は自分の家に逃げ帰った。彼の家族もいない。消えちゃってた。

 彼は、自分の部屋の鍵を閉めて閉じこもった。そして、猿の手さまを思い出したの。

 紙にはこう書かれてた。




『彼女が永遠に生きること』


『自分も永遠に生きること』





『いつまでも彼女と2人だけで暮らすこと』


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