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掌編集1 奇想カタログ  作者: 石屋 秀晴
11/21

できもの

 膝にコブができた。

 別にぶつけてもいないのに変だなとか、膝にもコブってできるんだなーとか、そういうこと思っていられたうちは、まだよかった。

 そのうちだんだん大きくなって、なんでスラックスの下にプロテクター着けてんの? とか言われるくらいになってきて、いよいよ病院に行った。

 でも、なんとなくそんな気はしてたけど、あっさり「原因不明ですね」って。病変とかじゃないから切って取るとすごく高額になりますよって言われた。

 別に痛くないし歩くのに不都合もない。だからこのままでもいいかなって思ってた。彼女に振られるまでは。


 彼女は夜中に見たんだそうだ。俺の膝のコブには三本のシワが入ってて、見ようによってはそれが目と口みたいになってる。で、その見かたでいうと口にあたるシワのところから、ピンク色の舌が飛び出してヒラヒラ動いていたらしい。

 まず俺は彼女が見たっていうその異常事態の件よりも、3年も付き合った大事な彼女をほんとに失っちゃったんだなあっていう、そっちのほうがどうにも耐えきれなくて、辛かった。

 死のうかな。もう死ぬしかないかな。

 辛いとき、俺は体育座りして悩む。そのときも、2時間くらいそうしてた。そしたら夜中。ちょうど彼女がピンクのヒラヒラを見たって言ってた時間帯。膝がもぞもぞし始めた。びっくりしてハーパンはいた膝の辺り見て、また余計びっくりした。


 動いてる。

 鳥の雛とかハムスターとか、そういうのが、布地の下でじたばた動いてるみたい。あまりのことに体育座りのまま動けなくなった俺の目の前で、だんだんと、ハーフパンツの裾がずり上がってきた。

 ずりずりと、ズボンの裾がたくし上がってく。すぐ鼻先で起きてることから、俺は目が離せない。そしてついに、有り得ないものが、にょっきりと突き出されるのを俺は見た。

 細い枯れ枝みたいだと思った。色も形も、そんな感じだった。でもそれは動いてた。裾を掴んで、ぐいって、押しのけた。寝てる人が掛け布団を押しのける、あの動きだった。

「ギギ、ギ。……ガ、ガ」

 ああ。目眩がする。

 こいつは、喋ってる。口がある。うっすら目を開けた。目玉がある。腕もある。一本だけど。

 こいつは人面瘡だ。こんなものができちまって、俺はどうすりゃいいんだ? それか、俺は完全に狂っちまったのか?

 どっちでもいいや。もう駄目だ。やっぱり死のう。ちくしょう、死ぬしかない。目の前が真っ暗になった。

 人面瘡は、ギョロリと俺を見た。立てた膝に付いてるから逆さまだ。そいつはしばらくのあいだ口を開け閉めしてたけど、やがて、キーキーという耳障りな声で喋り始めた。



「元気だしなよ」

「おまえが言うな」


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