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夢見の家 追憶4

それにしても自分の周りにいる人間は『普通ただの人』ではない者が多い、と威は自分のことを棚上げして改めて思った。

目の前にいる風の少年は勿論のこと、それらと同属性と言われ使いっ走りにまで使っている恵吏、炎を自在に操り封印から何からやってのかす威の父親・良弘、異世界の人間にまで評価される森の能力を持つ洸野、異世界の闇の王とかいわれた義兄・理……威自身だってその世界では光の王とか言われていた。

もしかしたら自分が知らないだけで他にも突出した異能を持つ人間はこの世界には溢れているのかもしれない。威はそう思い小さく苦笑した。

とりあえずは、目の前の少年の申し出が何であるのか、彼等の幼馴染の少女が何をサプライズにしたのか聞いてみるべきだろう。

「で、何を頼まれたんだ?」

興味深そうに訊く威にリュウファは得意満面に口角をあげて宣言した。

「理の夢、クリスマスバージョン」

「「はあ?」」

声を揃えて訝しげな視線を送ってくる威と洸野に、少年は「ちっちっちっ」と少し古い映画みたいに指を立ててみせた。もしかしたら、外見よりももっと年上なのかもしれない。

「2年前のクリスマスでの理の姿だよ、見たくない?」

2年前といえば彼等の幼馴染である恵吏がアメリカに旅立った年になる。

(そういえば、あの日、変な化け物がでてきて大変だったな)

奇妙な化け物がでてきて襲われて、なんか誰かきて終わったそんなどたばたな一日だったような気がする。ただ今ではそんな特殊な記憶ですら、それ以後の椿事や騒動のせいで、茫洋な記憶の中のありふれた一つとなってしまっていることに彼らは少なからず苦々しさを感じずにはいられなかった。

「それが月路からのサプライズなのか?」

サプライズが何なのか聞かされていなかった洸野が問いかけると、リュウファは「うーん」と跋が悪そうに頭をかいた。

「ていうか、先にこれを恵吏に見せたら『これは理から二人へのメッセージなんだからきちんと見せなきゃだめだろ』って叱られた」

どうやら人との交流が乏しい(と思われる)リュウファにはそれが理からの『メッセージ』を含む記憶だと認識できていなかったらしい。

もちろん、指摘を受けた彼は大慌てで二人に見せに行こうとした。しかし恵吏に彼女はそうするよりもいい解決法があると、彼にサプライズにするよう提案した。

実際、彼女が言うとおりにこの時期に見せたほうが、メッセージを託した理の意に合うようだ。

「えっと、二人の了承が得られればすぐにでも取り掛かれるけど、どうする?」

最終結論を委ねてきたリュウファに、二人は視線を合わせると深く頷いた。

理からの言葉が聴けるなら、動いている姿が見れるなら、過去の記憶の映像であろうとも諸手をあげて見たかった。

了承した二人にリュウファもにっこりと頷いて返した。

「それで、どうすりゃいいんだ?」

それでは、とばかりに行動に移してもらおうと問いかけた威に、リュウファは部屋の中を見渡した。そしてベッドの傍に置いてあったクッションを適当に並べ、それを指で示す。

「ここで横になって、目を閉じて。後は僕が何とかするから」

年相応にも見える笑顔の申し出に二人は素直に従った。

目を閉じると同時に、彼等の枕元に座ったリュウファは静かに手の平を彼等の額に置く。それと同時に暖かい風と包むような光の温もりが二人を包んだ。

「それじゃ、おやすみなさい」

優しいその声は、先ほどまで聞こえていた声よりも少し大人びて聞こえた。

風が更に体に優しく絡みつく。穏やかな光は緩やかな明滅とともに、彼らを眠りの淵へと導いていった。

すぅっという感覚と共に意識が遠のき、夢とも現実ともつかない中、彼等の知らなかった物語が目の前で始まろうとしていた。

やっとこさ、前置き終了です。

ここからはこの話ひさびさのファンタジーセクション(?)です。今回の部分は、前に書いた時とはニュアンス的にもかなり変更したので、書いては消し、消しては書き、入れ替え、立ち代えになってしまいました。ファンタジーの部分はそれほど手を加えなくておいいかなと、安易に思っています(それでも多分、変えなきゃいけない部分は山のようにあるとは思いますが)

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