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夢見の家 追憶3

威が理の部屋に入ると、既に食事の用意がされていた。どこからくすねたのだろうか、洸野の横にはブランデーまで鎮座している。

「本当によく寝てたから、十分、準備ができた」

との言葉どおりに、並べられた料理は洸野がこの屋敷に到着してから作ったもののようだった。どうやら彼が門を通ってから威の部屋に着くまでのメイド同士の抗争はかなりの時間に及んでいたようだ。

外を見るとすでに陽はとうに暮れていて、月も星の光も存在しない中、塵のような白いかけらが舞い踊っていた。

「天気予報どおりにホワイトクリスマスだな」

威がそう呟くと、洸野は「そうだな」と返してテラスへと続く窓へと近づく。そっと開けられた窓からは身に差し込むような冷気が入ってきた。

少し眉根を顰めた威を尻目に、洸野は窓を更に開けてすぅっと手を差し伸べた。

「月路からのサプライズの前に紹介するよ」

その言葉と共にふわりと暖かい風が駆け抜け、差し出されている指の先へと凝縮していく。空気なのだから透明なはずなのに、青や緑の光が生まれ、それが小さな中性的な顔立ちの少年を形作った。

「始めまして、だね。威」

にっこりと笑うその顔は年齢で行けば十歳ぐらいだろうか。大きくて澄んだ青緑色の瞳が飾られた可愛らしい造作、その顔を黄色が強い黄土色の髪が飾っていた。

見た目だけなら普通の外国の少年となる。しかしその足は全く地面についておらず、長い髪は重力を受けずにふわふわ宙に漂っている。

「あ、ああ………ってこいつ誰?」

何とか詰まりながらも挨拶に応えた威だったが、すぐさま不思議少年の手をとっている幼馴染みに詰め寄る。ここ最近、人外の者や特殊能力者(自分を含めて)に慣れてきたものの、改めて紹介されるような覚えはない。それも『遠い土地にいる親友』からのサプライズの前での紹介なんて、さっぱり理由が思い浮かばなかった。

「僕はリュウファ。この世界ちきゅうにおいて風を司る者を統べる者だよ」

リュウファと名乗る少年は目を細めながら自己紹介をすると、とんっと床に下りた。

それから下から覗き込むように目の前の威を見上げた。

(宙に浮いたままの方が話しやすくないのかな)

下からの視線を受けながら、威はその顔をまじまじと見つめた。この顔はどこかで見たことがあるような気がする。

(あれ?)

似ている。確かにこうして見上げてくる視線が、ここ最近、見慣れた彼女と酷似している。

御園みその先輩の親戚?」

突拍子もない威の言葉に、リュウファは目を丸くし、洸野は納得したようにぽんっと手を叩いた。

「なんで、そうなるかな。僕、人間に見える?それともその御園先輩は人間じゃないの?」

人間じゃない、の方に頷きたいのをぐっと堪えて、威と洸野は「そうだよな」と何とか答えた。

そんな二人の様子にリュウファは笑みを深める。

「でも、かなりいい所ついてるよ。彼女も属性は『風』だからね」

くるくると回る表情と悪戯っぽい視線は、本当にそっくりだ。しかし改めて観察した顔立ちは裕穂ゆうほよりも威たちの幼馴染である月路つきじ恵吏えりのほうが似ているようだ。

「それじゃ、月路も風の属性?」

再度威から投げかけられた問いに、リュウファは曖昧な笑みを浮かべ「そうなるかな」と答えた。威と洸野は視線を交わすと、これ以上この話題で話を進めるのを止めた。

「で、こいつがサプライズに関わってるの?」

話を最初の話題に戻しながら、威はリュウファを指差す。

「そういう事らしい」

洸野はそう返しながら、「だよな?」とリュウファへと視線を投げかけた。

風の少年はその問いに大きく頷くと胸を張ってみせた。

「恵吏に頼まれて来たんだ」

「月路に?」

誉めてとばかりに見上げてくるリュウファの頭を威はぽんぽんっと撫でる。その行為が嬉しいのか、彼は満面の笑みで肯定してみせた。

威、リュウファと初めて出会う、です。リュウファは地球世界を巡る『風』なのでいろんな人物を知っています。とくに威の家族や洸野の家族、それを取り囲む人物達のような特殊な人物にはしっかりと目をつけて見守る(監視?)しています。

それでも理と威がキュスリアへと飛ばされるのを止められなかったことをとても悔やんでいます。

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