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この場所から Return to Dreamin' House 2

先日自分のもとに『大切な者たち』の内の一人───それもリーダーとも言えるべき麻樹あさぎさとるが、異世界に囚われてしまったとの連絡が入った。

更に理の義父母より、『残された彼ら』が………それも一番傷ついているはずの山下やました洸野こうやがまだ涙を見せずにいることを連絡された。

彼のそばにはもう一人の『残された人物』である麻樹あさぎたけるしかいない。明るく導く彼では洸野を泣かせることなど難しいだろう。

(あの時、あの『風』を止めれなかった結果が、突きつけられている)

自分の手のひらをじっと見つめたまだ年若い博士は少し憂いたように唇を噛んだ。口惜くやしさはいつでも自分の胸の内にある。もっと努力すればこんな結果にはならなかったのではという考えがいつでも自分を苛んでいた。

(かと言って後ろを振り返ってばかりはいられない、か)

かつて理と双璧とまで回りに言われていた『その人』瞳に強い光が宿る。冷静になるために、ゆっくりと広げたままの手のひらをぎゅぅっと握り締める。

「渡航と、僕が関与するべきことをすべて終わらせたら、旅立たせて貰うよ」

「そうなると、年明けになりますが」

自分が支えるべき博士の言葉に秘書はスケジュールの記された手帳へと一通り目を通し、冷静に予定をくみ上げた。

大学側だけでやっている研究を中断させても、他の大学や企業の研究室それに国家から委託された共同プロジェクトまで離れることは少しの期間でも難しい。メール等のやりとりだけで処理できるようにするだけで最低2ヶ月の猶予は必要だった。

もちろん、これでもこの部屋の主といえる天才博士が昼夜たがわず働いて上で、だ。

「共同研究の部分の処理があるからね。仕方ないって判ってるよ。ただし、年が明けたら旅立たせて貰うからね」

自身でもそれがわかっているのか、『その人』は苦笑しながら承諾の言葉を述べた。

それから片手でぱんっと机を叩くとにんまりと笑ってみせる。

「それから君達の給与が大学側から支給されない場合は、僕のほうに言ってくれ、二年間、君達を養っても大丈夫なぐらいの蓄えと収入の宛てはある」

自分の行く先よりも目の前の部下達の給与への責任を口にするなど、あいかわらず研究者としては珍しく研究以外に目が届く博士の言葉だった。

その何気ない優しさに本来なら窮地に立たされている研究室はその状況に相応しくないほどの大きな笑いに満たされた。

「その前に、大学側に対して給与不払いの裁判を起こしますよぉ」

笑いながらいう研究員達に、博士はにやりと人の悪い笑みを浮かべる。

「いや、そんなことしなくていいよ。どれだけあのアホ教授が色々と手を尽くそうとも大学は僕を絶対に呼び戻す。その時にきちんと賠償を支払って貰う。下手に裁判を起こしても弁護士費用が無駄になるだけだよ」

「その交渉、まさか私にやらせるんですか?」

『その人』の言葉に厭そうに眉を顰める秘書の姿に笑いはヒートアップする。

博士も彼女の不満そうな表情に、ここ最近なりを潜めていた笑顔を作った。

「大丈夫、そういうのは僕の方が得意だよ」

仲間達と遊んだ環境のせいか、『その人』の頭の中には交渉術を含めた経済学のノウハウが叩き込まれている。今では少し無駄になりつつあるその知識を、フル活用してみるのもまた楽しいだろう。

「それじゃ、僕は『大幅長期連休・・・・・・』のための準備に入る」

場を切り上げる言葉に研究員達は表情を引き締めると大きく頷いて見せた。

「迷惑をかけるが、僕を信じてついてきてくれ」

宣言された言葉に研究員達は親指を立てて応えた。

「yes.プロフェッサー・ツキジ」

「イエス。マム」

「あんた以外についていく気はねぇよ」

「エリー、私達を信じてくれてありがと」

彼らの肯定の言葉に博士は深く頷くと、旅立ちの準備をするべく研究室内にある自分の個室へと入っていった。

暫く忙しかったので久々に更新です。

今回の反省は主人公の名前を極力駄々ないようにしていたために、筆が遅々として進まなかったことでしょうか。

本編の主人公・理の幼馴染の少女・恵吏ちゃんは親にその頭脳を売られて、アメリカの某大学にて博士をやってます。(きちんと博士号を取った上で、研究室を与えられています)

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