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夢見の家 選挙12

「会長職に就こうとしているのに、生徒会規約をしょっぱなから護っていない人間にどれほど立派なことができるんですかぁ?」

「それとも、二番煎じで今からその頭を丸めるんですかぁ?」

音響を考えた構造のホールで、その声は大きく響いた。

一瞬にしてまたざわめきがホールを満たす。控えていた教師の一人が騒ぎ出した生徒達を止めようとするのを、威は視線だけで止める。

その上で、彼は極上の笑みをその顔の上に乗せて、檀下にて騒いでいる生徒達へと視線を投げかけ、そのまま会場も見回した。

「俺の髪の毛を按じてくれている熱烈なファンの方が騒いでしまい申し訳ないです。ですが、この髪は校則どおりのものであることは教師の面々にはわかっていただいていると思います」

威の言葉に教師の大半は困惑した顔をしている。さすがに学校長ならびに教頭クラスは知っているようだが、日頃『校則を遵守じゅんしゅせよ』とばかりに声高に怒鳴っている生活指導の担当教諭までがぽかんと口を開けている様に、威は心の中で大笑いするしかなかった。

「校則の一文『生徒会長は学園の生徒の模範となるべき服装・髪型をしなくてはならない』と記されており、その髪型がショートカットであることは規約のほうに記されています。

つまりは候補者である俺自身が、勝手に自らを生徒会長に当選すると確信し、髪を切ることは僭越な行為で、もう一人の候補者である山下隼人さんへの侮辱とも成り得ると思えたのです。

もちろん、ここにいる全校生徒が俺を生徒会長へと選んでくれたときには、きちんとその規則に則り、断髪式を行うつもりです。その時には新聞部の方達は勿論、最前列に居られる放送部の先輩達にも記録係として協力をお願いしたい所存です」

壇上で当選後のセレモニーを宣言した威に場内が色めき立つ。特に最前列に座っていた複数人の顔に紅潮していた。

(御園先輩の資料どおりだな)

威は改めて後ろでこの状況を面白がっているだろう曲者の少女に感心した。

彼女の資料では隼人が裕穂が会長在位期間に辛酸を舐める状態にあった放送部にすりより、威や洸野にとり不名誉な作り話を流そうとしていた。もちろん、自分が発信という形ではなく、放送部の部長の隣に座っている隼人の腰巾着を使ってはいたので、表立って威たちも行動を起こしにくかった。

更に放送部自体も裕穂たちを怒らせた部長が引退し、新しく部長職に就いた人間は思ったよりも常識人だった為に、隼人の作戦はほとんど不発に終わっていた。

今、隼人の側についている放送部の下っ端たちも、この演説を聞きすぐにどちらの方が自分達の『利』であるのか計算がついたようだ。

期待に瞳をきらきらさせている放送部の人間達に隼人の腰巾着の一人が小さく舌打ちをした。

「もちろん、そんなひとつのイベントだけで会長になれるとは思いません。冒頭に申し上げたとおりの俺自身の指針、それから目指すべきところへとこの学園を変えるための力は十分に惜しまないつもりです。みなさんの判断にすべてを託して、立候補の演説とさせていただきます」

威がそう締めくくり、すぅっと背筋を伸ばすと、大きな拍手とともに歓声があがった。どうやらそれなりに生徒達の関心を集められたようだ。

威は一歩後ろにさがり、左、右、正面の順に頭を下げてから裕穂とともに他の候補者が控えている場所まで戻った。

ふと見ると幼馴染の洸野と中川・篠川カップルが目線で笑い返してくれた。

(とりあえず、俺のやるべきことはやった)

彼らの視線を鑑みて、そう確信した威は優雅な仕草で自分の場所であるパイプ椅子に腰を下ろした。

「続いて2年C組・山下隼人さん。推薦者・2年C組・本橋忠行さん、お願いします」

歓声は、未だ続いている。

紹介の声がかき消されている事実に、隼人はその顔に苛立ちを乗せた。それを推薦者とされている人物がたしなめているが、それすらも耳に入っていないようだった。

やっと威の演説が終わりました。後は隼人さんがやってくれるだけです。

長かった。本当にうにゃうにゃと伸び続ける話でした。これで従来どおりにファンタジーっぽい話に戻れます。

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