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夢見の家 回想10

鋭利な眼光の中に母の愛情を滲ませて実は言い聞かせるように威へと告げる。

「だからな、たける……お前は一切、この家の事になど煩わされなくていい。お前はお前のすべき事に全てを集中させろ。そうじゃないとうちの長男坊は戻って来れないだろ」

その言葉に威は視線をさ迷わせた。見ると、妻の横でずっと黙って見守っていた良弘ちちおやも彼に向って大きく頷いてみせた。

さとるがあの世界に行ってしまってからのきみ我武者羅がむしゃらに道を求めすぎた挙句、八方塞はっぽうふさがりになり、行く道も解からず、するべき事も忘れて抜け殻のようになってしまいました」

歯に衣着せぬ言葉に威はうぅっと呻く。

確かに……確かにそうなのではあるがもう少しオブラートに包んで言って欲しい、と思わずにはいられない威であった。

「その上、理の役目まで引き受けようと経営学まで勉強し始めた時には、さすがにじつの父親として息子の不出来さを呪わなくてはいけませんでしたね」

良弘の言葉にどんどんと威が肩身を狭くしても、誰も助け舟を出さない。つまり他のみんなも彼の地球世界こちらがわに戻ってきてからの威の不甲斐なさに苛立ちを覚えていたのだろう。

「理はこちらに貴方あなたを戻す際になんと言っていたのですか?」

確かめるように訊ねてきた良弘に威はつい先程夢で思い出したばかりの別れの情景を思い出した。

「父さん達と共に『道』を探して欲しい」

「一人でやれとは言ってませんでしたね」

確かに父親よしひろの言う通りだった。理は『みんな』で道を見つけてくれと言った。

そして『自分』もこちらで帰路を探すと言っていた。

「それから、みんなを頼むって」

頼まれたのに何もできていない。すべてを守るために広げた彼の手は、理が一人で担ってきた役割がどれほど重たかったのか実感しただけだった。

自分の手の小ささを再確認するように視線を掌に落とした息子に、良弘は大きな溜息をついてみせた。

「それは、理の役目を引き受けろという意味なのですか?」

父親の一言に威ははっと顔を上げた。

良弘の横にいる母親も息子の勘違いに思い至ったのか額を指先で押さえながら、頭を振ってみせた。

「お前がお前たち4人組の中で担っていた役目はなんだった?」

「え……?俺の役目?」

母親の問いに威は訝しげに眉を顰めた。

確かに威たち4人はいろんな行動を起こす時、抜群のチームワークを発揮していた。それもこれもすべて理と恵吏の立てた作戦があり、一番後ろに洸野が待っていてくれるから自分たちは好き勝手に行動が出来た。

「理の役目は先の先まで考えること、恵吏ちゃんの役目は理の思考のフォローと後始末、洸野君は他の3人を優しく見守り帰る場所になること。

じゃあ、お前の役目は?」

あの4人の中で自分に役目などあったのだろうか、威にはそれをも解からなくなっている。

そんな威の様子に両親は「しょうのない奴」とばかりに静か笑ってみせた。

「威の役目は率先して行動し、笑顔で導くことだろ」

も当たり前のように答えを出した母親に彼は目を見開いた。

確かに4人が全員揃っていた時、特に全員で何かをしようとする場合はいつも自分は笑顔でいた。そしてそれに答えるように理は口角を上げてみせ、恵吏は目元だけで笑い、洸野は呆れながらも苦笑していた。

自分の中に蘇ってきた懐かしい記憶に威は自然と笑みを浮かべる。

そうだ、これは新しく自分達4人で行う『作戦』なのだ。理の指示はすでにあの『世界キュスリア』で貰っている。それをフォローしてくれるだろうブレインは電話すれば繋がる場所にいる。そして自分はそれに従って動いて、『帰る場所』たる洸野の元へと再び彼を戻せばいいのだ。

「本当、呆れられても仕方ないよな……単純な事を自分で解かってないなんて」

一人ごちる威の頭を良弘は優しくぽんぽんっと撫でた。


威、両親(みのる良弘よしひろ夫妻)に説教を受けてます。

ここの辺りは旧文章が余りにもな内容だったので、かなり打ち直しています。

そしたら異様に説教くさい父母になってしまいました。

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