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アイソレーション  作者: 長政
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櫻井潤。

高校2年生。

身長は170ちょっと。

体重は50前半。痩せぎみ。

好きな教科は日本史。

嫌いな教科は英語。

趣味...特になし。

強いて言うなら、アニメとゲーム。

友達は、いない。


今は、1ヶ月に一度の席替えタイムである


 とりあえず、一通り自己紹介は終えておいたが、何も僕に対して、憐れみの意を見せつけてくれる必要はない。全く。憐れみ...とはちょっと違うか。まぁ、言葉なんてなにを使おうが変わらないだろう。言葉なんて、ある現象を文字列に置き換えただけなのだし、100パーセントを表すことなんて不可能なわけであるわけだ。とりあえず僕に対しては、どんな言葉で表されたとしてもどれもマイナスの表現であることは間違いないだろう。友達もいないような人なんて、下等人種に決まっている。

 しかし僕だって、反論する。反駁ができる。なにも、僕が他の人間よりも劣っているのだから、独りでいるわけではない。孤独ではない。かといって、孤高までいくとなんだがたいそう行き過ぎた感じもするので、

僕は孤高と孤独の間の言葉を提案したい——

 端的に、一般的に言えば、人間関係に疲れたのだ。疲れた...とは少しニュアンスは違うが、大まか間違ってもいないのでまぁよしとしよう。人間関係は難しい。難しいなんてものじゃない。hardじゃない、very very hardだ。学校の勉強なんてものは、こんなのに比べたらひどく簡単だ。苦にならない。きちんと、わかりやすく、丁寧に、教授してくださる先生もいるのだし、攻略法が世の中に出回っている。答えも初めから決まっている。そして何より、一人で完結するものだ。トランプで例えたらソリティアである。これが一番重要である。人間関係なんかとの大きな違いだ。

 勉強をソリティアと例えるのならば、人間関係は対人戦だ。大富豪、ババ抜き、七並べ、とまぁこんな感じだろうか。対人戦でなにより大切なことは、相手の思考を読み切ることであろう。思考。嗜好。指向。相手の思考を無視して、自分勝手に、独りよがりにプレイしようとするものならば、必然的にそれは失敗する。試行錯誤はできない。一度でも人間関係の構築に失敗しようものならば、もう終わりだ。学校、クラスというコミュニティ、非常に狭い世界において、失敗したなどという評価は、たちまち広がるだろう。失敗したなんて評価はなによりも残酷で、その評価は人を寄せ付けなくなる。

 事実、僕も失敗した。簡単な失敗だった。対人戦で、一番してはいけないことをしただけのことであった。小学校、中学校のころには、友達(ここでは、友達と表記しておくが実際には友達とは似通った、全く違うものであった。互いに信頼関係のない空の友達であった。そのような状態を表す言葉は見当たらなかったので、便宜上友達と記しておく)はいた。なに、小学校で友達を作るのは簡単だ。互いに相手の思考を考量しない、幼稚なのだ。幼稚だからこそ、無邪気に、小難しいことを考えずに人間関係を築くことができる。中学に上がる時も小学校が同じ人がたくさんいたわけだあるから、友達を作るのになんの苦労もようしない(中学1年生の年齢だって、まだまだ幼稚なわけだし)。事件が起こったのは中3のあたりだろうか?明確な時期は提出できない。人間関係なんて、そんなもんだ。○月×日に貴方と人間関係を結びますといってように契約書にサインするわけでもあるまいし。僕が、相手の思考を無視して、一方的にアプローチを続けた。いや、正確には無視をしたわけではない。一方的に、相手も自分のことを好いていると思い込んでいただけなのだ。そこには、真の友情が芽生えんとしていたのとばかり思っていた。身勝手だった。そこから先は、もはや語る必要性はないだろう。


 失敗した。後悔した。二度とこんな事件は起こしてはならない。そう決意した。

 

 僕は見つけ出した。相手の思考を探る方法。刻一刻と毎分毎秒めざまじく変わっていく相手の思考、すなわち自分に対する評価——


 もっとも確かで、うつろいのない、絶対的な評価。それは、嫌われることである。


 嫌われることなんて、簡単だった。難易度でいえば、学校の勉強よりも簡単なくらいだ。人間はどうしてもコミュニケーションを取りたがる生物なのだから、無視してやればいい。既読スルーなんて言葉も流行っているが、まさにそのとおり一番有効な手段で間違えない。いとも簡単にクラスメイト全員から嫌われることに成功した。もう誰も僕に話しかけてくる人間なんていない。完璧な人間関係を気づくことに成功した——はずだった。


「やぁやぁ、櫻井君ではないか!今日から隣の席だ、仲良くやろうぜ。よろしく頼むよ!」

 と、どこからか声が響く。



 

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