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世界が終わってもなお、続くこの世界で・・・。  作者: 高山 和義
終章 小さな世界達の終わり
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終章 「小さな世界達の終わり」 その1

次の目的地は、高山の気まぐれで決まった。

いや、決まった、というのもおかしい。目的地というより、方針が決まった、という方が正しいんじゃないだろうか。

それは、つい今朝のことだった。

「海に行きたい」

高山が突然言い出した。

「海?」

咲ちゃんが不思議そうに聞き返す。

「そうだ。海」

「海だったらここからでも見えるんじゃ……」

そう、この先をちょっと走るとすぐ海だ。事実、この道の先には雲の隙間からわずかに差し込んだ太陽光にきらきらと光る水面が見える。ちょっとだけど。

「ほら、あれ」

と言って道の先を指さす。

「……いや、俺が言いたいのは海岸線も含めての海。やっぱり景色って重要だよ!」

高山があきれたように言う。

確かに、このあたりは割と開発されていて、海岸線はコンクリートの垂直な護岸ばかりだったような。

でも、海、かあ。

山奥で育った自分たちは、水があつまっている所といえば、川と小さな池くらいしか見たことがなかった。

今まで見た中で一番大きなのは中禅寺湖だったかなぁ……、と閑話休題。

なんたらが大海を知らずじゃないけれど、せっかく海に近い東京(ここ)まできて見に行かないというのも勿体ない話だ。

「いいんじゃない?でも、ここら辺にそんな砂浜みたいなのってあるのかな?」

「探せばいいさ。な、黒田」

「えっ、そこ私に振るところ?」

「……まぁ、いっか」

珍しい高山のわがままに負け、さっさと朝食と出発の準備を整えると、空地とビルのコントラストが激しい臨海都市を早々に後にする。

高山の運転は、いつもどおりに戻っていた。

ただ、時折道路標識をガン見しながら運転しているので、時折ふらつくのはえらく不安だ。

なんだか旅を始めたばかりの時の高山の運転を思い出だして、ちょっと懐かしくなる。

直線と空き地がひたすら続く道路が途切れ、ほどなくして背の高い建物に隠され海が見えなくなる。

「アテはあるの?」

「ない」

「「おい!」」

咲ちゃんと同時につっこんだ。

せめて目星くらいつけとけ!

「でも方向性ならあるぞ。さっきちらっと海の東西を見たら、西は工場ばっかりで行く意味はなさそう。でも東はそうじゃなかった」

「つまり?」

「東に行けば、きっとある!」

ずいぶんなトンデモ論理だ。大丈夫だろうか?

そうしているうちに、車は随分と広い道路を走っていた。

ボロボロのアスファルト、謎に盛り上がった路肩、そしていつか見たように、青い看板には「船橋・千葉」の文字。

しばらく走ったところで、昼食の時間になった。

                    *

例の電波塔にほど近いバス車庫に車を入れて、そこで食事とすることにした。

食料の節約を考え、昼はいつも少食で済ませている。

さほど時間も掛からず終えると、再び来た道を東に向けて走り出す。

走り出してから幾分も経たない内に太い川を渡り、また渡り、いま走っている通りさほど変わらない太さの道路との交差点に出たときに高山が言った。

「そういやさ、川の流れる先には海があるんだよな?」

「そーでしょ」

何を当たり前な、という風に黒田が答える

「……この道なら迷わなさそうだし、ここで曲がるか」

そう呟くと高山は右にハンドルを切って、ややU他ターン気味に進路変更をすると、再び加速する。

道路標識には、「葛西」とあった。

果たして葛西というところがどんな場所かなんて知らないし、ましてや海があるなんて知る由もない。

断続的に続く陸橋を、時には上を、時にはそれを横に見ながら下を走る。バスターミナルを通り過ぎ、地下鉄のはずなのに頭上にある駅を見て、ちょっと寄り道。

黒田が地地下鉄の博物館に興味を持ったらしく、開かない自動ドアをこじ開けようとしていたり。

高山が駅に入って線路の上を歩いていたり。

児玉はそんな二人についていくのがめんどくさくなって、駅前の古本屋に行ってみたりと。

結局、各々が戻ってきたときには、日が沈んでいた。

駅前のロータリーで夕食を食べながら、それぞれの寄り道話を披露しあっているうちに、夜は更け、黒田の眠い!の一言でやっとお開きになった。

これまでもあったような、旅の寄り道を楽しんでいるひと時。

単独行動だったのに、今日はなぜかいつもより楽しく思えた。

別に一人が良かったわけではない。

みんなと笑いながら体験を話す。それが楽しかった。

こんな時が続けばいい。

毎日が冒険で、いつか言ったように、目的なんかなくていい。いつか消える日まで、こうして楽しく過ごしていたい。

そう思った。

                   *

三人が寝静まった後に上ってきた細い三日月。

バスロータリーの先には、「葛西臨海公園」の文字が、そのわずかな月明かりをはね返している。

三人がその文字に気づくには、そう時間はかからないだろう。

時折吹く、わずかに潮の香りを孕んだ風には、相変わらず白く透明な、死を孕んだ綺麗な砂が、黒いアスファルトを撫でるように舞っていた。


ストックが完全につきました。

次までけっこう時間がかかると思いますが、なんとか今月中にはあと一回更新したいと思っています。

下書きがないとあれこれ書き足して迷走気味になるのが僕の悪い癖です。

素直にアナログ下書きを再開しようかしらん……。

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