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五章 「この世界は」 その2

咲ちゃんと車を降りて、高山についていく。

男に近づくにつれて、違和感が一層強くなり、最早嫌悪と化している。

男は普通の会社員のようにスーツをぴちっと着こなし、なぜか荷物は一切持っていない。

目の前に三人も人が立っているというのに、こちらには一切の関心を示さず、眠そうに、瞼は半分くらいしか開いていない。

にらみつけられているわけでも無いのに、足がすくむ。

生気が感じられない目だけをこちらに向け、ただただそこに立っている。

「あのー、こんにち、わ?」

高山もどう対応したらいいか迷っているようだった。

「―あ、どうも……」

意外にも返事早かった。見た目と違わず、気怠そうな返事だった。

「どうしましたか?困っていたら、できる範囲でお手伝いしますが……」

なぜか、今度はすぐに返事が来ない。

「……いやぁ、困っては、ないですよ?むしろ、困っているのは、あなた方の方ではないですかねぇ…」

何だろう。

気怠そうな返事の中に、なにか高圧的なものを感じる。

殺気、とは違う。じゃあ、何だろう?この胸が押し潰されそうになる感じは……。

「まあ…、僕のせいでもありますか…、仕方ないですよねぇ、こんな状況じゃあ…」

「ねえ、あんた何者?」

無意識に、問いが口をついて出てきていた。

いつもと違い、ケンカ腰な私の口調に、二人が驚く。

「すぐ聞いてくださると助かりますよ…。―児玉さん」

「っなっ、なんで私の名前を―」

男は私の言葉をぶった切って続ける・

「何者。そうですねぇ、『この世界を終わらせた存在』とでも言っておきましょうかねぇ…」

男の言葉は

―まるで、「神」のようだった。


                  *


何なんだこいつは?

ただのサラリーマンだと思っていたらどうも違う。

しかも、なんだ、「世界を終わらせた存在」だとまで言う。

普通なら、何も言っているんだ、気でもフれたか、と笑うところだ。

でも、この男から発せられる高圧的な雰囲気、生気を感じない人ならざる何かのような、そんなはっきりとしない何かが、男の言葉を肯定しようとする。

いや、そんなことは無い。あってたまるものか。

こいつの手で、こいつ一人の手で世界が一瞬にして消えたなんて、そんな、そんな…。

「―ふざけてんじゃねぇぞ?」

自分の脳は理解することをやめ、ただ体の奥から発せられる激しい嫌悪感に似た怒りに身を任せる。

「言っていいことと悪いことくらい、あんたにも区別つくだろ!?」

怒りをぶつけても、男の瞳は揺らぎもしない。

「いやいや…、ふざけてなんかかんですよ…。あくまで僕は真実を伝えに来ただけで…」

「―はぁ?真実だと?」

今にも男に飛びかかりそうなほどの激しい怒りが、「真実」という言葉聞いてかろうじて自制を保つ。

「ええ、真実です…。まあ、皆さんがはなから信じる気が無いのでしたら、面倒くさいので帰らせていただきますが…、どうしますか?」

どっちみち信じることは出来なさそうだが

「わかった、話だけは聞いてやる」


結構間が空いてしまいました。なかなか書く時間が取れずに半ば放置状態になっていましたが、やっと短いながらも更新することができました。

これからもお付き合いのほど( ^ω^)よろしくだお

…ああ、台無しだ。

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