マッハ1.5で走るメイドさん‼
僕はマッハ1.5の生物にお姫様抱っこをされていた。その生物は僕のメイドである元剣聖ランスロット・アレクシアその人であった。
僕たちはアレクシアが絶品と称する氷菓を食べるために北の大帝国マンス、氷山龍ラオパオシェンの死体跡地へと向かっている。
北の大帝国マンスはおおよそ僕たちの領土であるライオネル領から北に1200km、馬で行くのなら時速40kmほどだと仮定して30時間一日で行くには遠すぎる距離だ。
しかし素早さ実数値873の最高速マッハ1.5を誇る僕の怪物メイドにかかれば、一時間と数分でそこまでたどり着いてしまう。
地上において彼女の速度を上回るものは魔王、勇者を含めても存在しない。
僕は前世においても戦闘機などに乗ったことはないため、重力によって体が締め付けられるような感覚は初めてで興奮した。それにアレクシアの胸に押し付けられるという役得もついてくる。
「ねえランスロットさすがにお姫様抱っこは恥ずかしいよ。」
「まあ良いではないですか。私たちは今音速を超える速度です。ふつうの人間にこの姿を目でとらえることは出来ません。通りすがりの人は精々なんか黒い塊が通らなかった?程度でしょう」
「そんなんじゃすまないでしょ流石に、風圧とか騒音とか?」
「その点に関してはご安心くださいませ、剣聖の加護によって風圧や騒音は切り刻みました」
「全然安心できないよ!っていうか風圧や騒音を切るって何?」
「坊ちゃまそんなことを話しているうちに北の大帝国マンスの国境に差し掛かります。」
「軽く流すなあ、っていうか思ったより寒くないんだね、雪も降っていないようだし」
アレクシアの速度が速すぎて景色をじっくりと見ることは出来ないが、雪に覆われてはいないという事は景色全体の色味で僕にもわかった。
「はい、今の時期の北の大帝国マンスは夏季であり基本的に雪は降っていません。ライオネル領の気候と比べれば寒いでしょうが、特段心配するほどではございません」
「そうなんだ、でもさそんなことで氷菓に使える氷なんて手に入るの?」
「その点についてもご安心を、これから取りに行くラオパオシェンからとれる永久凍結石は摂氏2000度以上になっても解けることがないのです。だから基本的には貴族や王族が付けるアクセサリーなどの意匠として、美しい見た目も含めて宝石のような取り扱いで高価な値がついているのです。」
「そんなもの食べても大丈夫なの?」
「はい、実は氷山龍ラオパオシェンの体のほとんどはジャガイモのようなデンプンでできております。」
「なるほど、、アミラーゼ的な奴?」
「さすがは坊ちゃま!聡明ですわ、唾液に含まれるアミラーゼでのみ、氷山龍ラオパオシェンから取れる永久凍結石は分解可能。その舌触りはまるでシルクのように滑らかかつ、シロップをかけずとも高級なジャガイモのように自然な甘さが楽しめます。だからラオパオシェンからとれる永久凍結石は真の意味で純度100パーセントの天然の氷菓なのです」
舌なめずりをした彼女は速度をゆっくりと下げて行った、それによって見える景色もだんだんと鮮明になっていく。
「そろそろマッハ1.5の旅も終点です」
汽車のようにゆったりとアレクシアは止まる。
そんな僕たちの視界に現れたのはまるでおとぎ話にでも出てくるみたいな赤い屋根にゴシック風の黒いレンガで作られた城とそれに統一されるように黒いレンガでできた城下の町。そして空を飛ぶ機関車や強大な青い目をしたゴーレム。
「これが異世界か」
一人の少年は目を輝かせた。




