氷菓をぺろぺろする野良メイド【元剣聖】
ランスロット・アレクシアが剣聖から野良メイドとなり、野良メイドから僕のメイドになってからというもの彼女は僕たちの住む館で日夜家事というものに奮闘してくれている。今だってそうだ。
どうやら彼女は掃除を始めたらしい。すると「ドッタんばったん」というおおよそ掃除ではあまり聞かない擬音が彼女の掃除には適応される。
「何をしていたの?」僕は聞いた。
「レオン坊ちゃまの部屋にいるハエと少し剣を交えていたのです。」
「ハエタタキを使えば良いのでは?」と一応助言しておいた。
その他にも彼女は洗濯をしたとする。「バチコンバチコン」というおおよそ洗濯ではあまり聞かない擬音が彼女の洗濯には適応される。
「何をしていたの?」
「レオン坊ちゃまの服に着いたシミと少し剣を交えていたのです」
どうやったらシミと剣を交えることができるのか?と聞きそうになったがやめておいた。
彼女はほぼすべてこんな感じだ。なぜか彼女が家事を始めると何かと剣を交えてしまう。本当に剣技が好きなのだなあと僕は楽観的に思っていた。
仕事中に多少ドジは踏む物の腐っても野良メイドである彼女は勇者パーティーの剣聖なだけあり家事スキルの低さを体力でカバーしていた。
この時の僕は彼女という存在をあまり理解をしていなかった。
剣聖ランスロットアレクシアとはどういう人物なのかを、事件が起きたのはアレクシアが僕たちのメイドとして働き始めて10日ほどたったころだ。
僕はディナーのデザートとして、楽しみにしていた氷菓を食べようと屋敷の離れにある氷室まで来ていた。
「ガリガリガリ」おおよそ誰もいないであろう氷室ではあまり聞かない擬音が氷室の中から聞こえてくるではないか。
僕は恐る恐る氷室の扉を開ける。
すると僕の前に現れたのは僕が9日前から大事に大事に保管しておいた、氷菓をぺろぺろと舐めるアレクシアの姿であった。
「は!しまった」
アレクシアはまるでギャグマンガのように分かりやすいリアクションで僕を迎い入れる。
僕は現実逃避でもするみたいに氷室の中を見回す。そこには僕が恋をした氷菓さんはおらず。
僕の氷菓さんをぺろぺろと嘗め回す。みすぼらしい野良メイドが一匹。
「ちがうのです!レオン坊ちゃま、誤解です」
「ねえそんなことより僕の氷菓さんを知らないかい?アレクシア」
「決して盗み食いなどをしていたわけではないのです。」
「じゃあ何だというんだい?」
僕は愕然としていた。僕の前世の世界では食いつくし系夫という言葉がはやっていたが食い尽くし系メイドというのは今にも先にも彼女だけだろう。
僕は悲しげにもうすぐにでも消え入りそうな声で言った。
「言ってみれば毒見です」
「そっか毒見か、、じゃあ仕方ないねもういいよ」
僕はそっと氷室の扉を閉めようとする。
「待ってください坊ちゃま、」
「僕は君が僕の氷菓を食べてしまったことが悲しいんじゃないよ」
「では何が理由で悲しんでいるのですか?」
「本当はあの氷菓は君と一緒に食べようと思っていたんだ。君がとてもメイドとして頑張っていたから、だから9日前からずっと大切にとっておいたのに。僕は君に食べられたことよりも君に嘘をつかれたことの方が悲しいよ」
ランスロットはまるで何かに打たれたのかのような顔をしていた。
「坊ちゃま今のセリフきゅんです。私が盗み食いをしてしまって本当に申し訳ございません。私は嘘つきなダメなメイドです。」
頭を下げるランスロットアレクシア。
「もういいよ、、」
「坊ちゃまそこで一つご提案なのですが、坊ちゃまはランスロット英雄譚の58ページを覚えていらっしゃますでしょうか?」
「え?なんで急にそんなこと聞くの?確か58ページは、、、」
ゆったりと頭の中の僕が何度も読みこんだランスロット英雄譚を開く。
「体長1kmを超える氷山龍ラオ・パオシェンの討伐および北の大帝国マンスを魔族から奪還したところだろう?今やラオパオシェンの死体からとれる永久凍結石は高級品で貴族ですらなかなか手が出ない。10グラムで一軒家さえ立つほどの価値が付く場合もある」
「はい、でも言ってしまえば永久凍結石は解けることのないただの氷です」
「まあそうなのかもしれないね」
ランスロットの表情の風向きが少し変わった。
「私実は氷菓には目がなくて、ラオパオシェンの氷でかき氷を作って勇者パーティーのみんなで食べたことがあるんです。」
「そうなんだ?」
「坊ちゃまが用意してくださった氷菓もおいしかったのですが、所詮は子供だまし、、、」
「子供だましで悪かったね」
「すみません、でもあれは格別です。思い出すだけで、、、」
そう言いながら、ランスロット・アレクシア【元剣聖】は涎をたらしていた。
「坊ちゃま一緒に行きましょう。冒険です。北の国マンス、ラオパオシェンの死体跡地へ」




