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プロメティウスの夜明け  作者: 赤い紫陽花
チュートリアルは自ら手に入れるもの

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第三話 哲学とは何か☆

哲学回です。まぁストーリーに大きな影響はないので読み飛ばしても問題はありません。

なんならゲーマーとしての主人公を楽しみたいならノイズにもなりえますので、哲学に興味のある方だけ。

第三話 哲学とは何か


「自己紹介をしよう。私の名前は久世哲。24歳、ここで哲学講師をしている。」


「私の講義は変則的に進む。そのためガイダンスは、評価方法と授業資料に留める。その後、哲学概論だ。今日の講義はそれで終わる。」


「評価方法はシンプル、出席点と最終授業における成績、それのみである。よって、君たちは現状、出席と授業の理解だけ気にしていればよろしい。」


黒板(ブラックボード)……巨大な黒いスクリーンに、触れることさえなく字が刻まれていく。


「授業資料は事前に配布してあるものがある。理解のため、予習もしくは復習どちらかをすることをお勧めする。自分に天才の自覚があるなら、チャレンジを止めることはないが。」


「これらに関する資料は初回講義としてまとめてある。それを参照しろ。」


「……さて、哲学講義といこうか。第一回は哲学概論、哲学とはなんであるか、だ。」


「諸君、哲学とは何だと思う。まぁ起源から語れば、人類原初の学問であり、科学の根幹であり、知恵の始まりと言えるだろう。」


「だが過去ではなく現在を問おう。私の授業では基本的に過去の哲学者を参照しない。過去は過去であり、現在はより進歩してしかるべきだ。特に自然哲学たる科学の発展著しい現代においては。」


「哲学以外の他の学問は、科学の発展とともに成長してきたことはわかるだろう?少なくとも、それを認知できる。」


「だが、哲学だけはもはや停滞していると言っても過言ではない。そもそも人類に対して成果と言えるものをコンスタントに出せていない。」


「故に、過去の哲学の方式から我々は逸脱すべきである。そうだろう?」


「さてまぁ、長々と話すつもりはない。これはまぁ、前置きだ。」


「答えから言おう。できる限りわかりやすく、正しく。哲学とは、何であるかを。よく聞いておけ?私はこう考える。哲学とはすなわち、聖書の執筆作業である、と。」


「さてシンキングタイムだ。聖書の執筆作業といったが、その『聖書』は何に対するものだと思う?10分やる。考えろ。」


現代というのは便利になったもので、壁にあるスクリーンに直接、思考操作で文字や、簡単な絵すら書ける。無理やりこの教室に導入させたが、授業の効率化に非常に貢献してくれている。あと楽しい。


ああそうそう、正直言って学生諸君がこの問題を理解できるとは思わない。思っていない。だが、答えにたどり着くことができないわけではないのだ。過程が何であれ、な。私はこう考える。哲学において何よりも重要なのは考えることをやめないことだ。それさえできれば、誰でも簡単に哲学の天才になれるだろうさ。私は現に、そうやって今ここにいる。


「さて、十分だ。なにか思い付いたやつはいるか?」


手を挙げ、促す。


お、手を挙げたのが3人。


「いいね、それぞれ言ってみたまえ。左から。端的に。」


「ここでいう聖書とは即ち、自らの人生に対しての聖書ではないでしょうか。」


「次」


「私は、世界に対する画一的な聖書だと考えました。」


「いいね、次」


「ここでいう聖書とは即ち、科学に対する聖書では?」


「お見事、大正解だ。少なくとも私が想定していた答えは、科学だ。おめでとう。ほかの二人もなかなか悪くない。ある意味では正解で、ある意味では間違っている。まぁ哲学においてはいつものことといえる。」


「説明しよう。なぜ哲学が科学に対する聖書の執筆作業を言うのか、を。」


「まず科学に対して聖書だと?と疑問に思うやつもいるだろうが、残念ながら科学はまごうことなき宗教だ。科学における神とはすなわち!世界そのものである、物理法則だ。」


「要するに科学とは、物理法則を信仰する宗教だといえる。しかしながら、君たちもわかっているだろう。科学と宗教には致命的な差異があると。教義があるか、否かだ。」


「そう、最悪なことに、全世界において間違いなく最大でありなおかつ普遍的な宗教である科学が、あろうことか教義が存在しないのだ。戦争はやらないべきだ、とか、人は仲良くすべきだ、とかそういうものが一切ない。よって戦争が起こり、犯罪が起こる。教義がないばかりになんと自己判断だ。もしくは、ほかの宗教、文化、常識を参照して、絶対の神である物理法則を一切参照せず、判断する。それはそれは、人が死に苦しむも仕方ないといえるだろう。」


「哲学とは要するに、教義の存在しない科学に、聖書を書き出す行為をいう。そう、哲学とは最終的に科学的でなければ話にならないのだ。正しさとは何か、善とはなにか。語るのはいいが、科学的にそれがなにか説明できないのであればさしたる価値はない。意味もない。正しさを主張することもできない。私はそう考える。」


「そして君たち、君たちの一部、もしくは大半は今こう考えただろう。こいつ何言ってんだ、と。お前が正しい保証はどこにある?結局のところそうお前が考えただけだろう?と。そう、講義を行う立場ではあるが、哲学において疑問とは何より重要だ。君たちのそれを否定することはない。ああだが、もし私が正しいと思ってしまったやつは哲学者失格だ、主張はすべからく疑いたまえ。特に最初はな。」


「理解したまえ。哲学において、最も困難な行為とは証明である、ということを。」


「とある理論を教えよう。無限後退という理論だ。物事Aに対して根拠Bを提示するとき、根拠Bに対する根拠Cが必要ではないかと。さらに言えば、Cに対してD、DにE、EにF、と、この根拠に対する根拠の提示に、終わりはあるのか?と。根拠の完全な提示が、根本的に不可能であるのなら、この世に正しさは存在するといえるのか?と。面白い理論だろう?」


「次回の授業までに、無限後退について調べ、無限後退に対する自身の回答を用意しろ。ああそう、講義前までにフォームスに入力するだけでいい。AIを用いても問題ない。私の講義を理解できるようになるならね。」


「今回の講義はこれで終了だ。」

Tips 哲学を本質ではなく歴史で語るのなら、それは疑問である。過去の哲学者は疑問を重ねてきた。科学もまた、自然を哲学することによって生まれたものである。

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