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プロメティウスの夜明け  作者: 赤い紫陽花
チュートリアルは自ら手に入れるもの

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第十話 目的を忘れて研究に没頭することってあるあるだよね。

第十話 目的を忘れて研究に没頭することってあるあるだよね。


よくよく考えればわざわざ鱗をはがす必要などなかった。皮ごと引っぺがして収納してしまう。鱗は後で処理すればいい。というか処理する必要もないかもしれないが。


相当な重労働な上にそもそもインベントリ容量に引っかかるため、全ての皮ではなく一先ず胴体一周分を3mくらいの幅で確保した。問題はここからで、蛇骨は使い様があるので取り出したいのだが、肉をナイフで掘り進める必要がある。蛇肉もこの柔軟性だ、多分硬くて不味いということはないと思うので、斬り進めながら収納していく。


どうにか背骨にたどり着き、肋骨に沿って肉をはがす。背骨から切り離したら、取り出して収納する。一応二本だけ確保した。サイズがデカすぎて象牙なみである。


次に牙。恐らくこの蛇の肉体で最も頑丈な部位である。ちなみにこの蛇の口臭は、驚きなことに臭くない。擬態のためだろうか、肉体全体から清涼感漂う森林のにおいがする。私の場合嗅覚ももちろん100%な上に感覚ステータスまであるから臭いと割と気が滅入るのだが、問題がなくて何よりだ。……まぁここまでの解体で全身血みどろなので、清涼感があってもなくても割と誤差ではあるのだが。血の匂いはそのままなのでね。


牙は根元を破壊すればどうにか引っこ抜けたので、一番長いやつとその周囲の牙を取り出して終わりとする。この時点で4時間くらいかかっている。流石に飽きてきた。


最後にあるかもわからない魔石である。そもそもこのゲームの魔物に魔石があるのかないのか知らないし、ポリゴン爆散する魔物……ゴブリンやフォレストウルフ、大蜘蛛に大ムカデだが、一部素材を落とすだけで魔石を落としたことがなかった。だがすべての素材がそのまま残っているこの魔物なら……と考えたのだが。まずどこにあるのだろうか。


一つ考えたのは心臓のあたり、である。蛇の心臓は脳よりの場所にあるのだが、正確な位置がつかめない。血管の太さとかから探るしかないのだが地獄の作業の気配がする。ただでさえ1.5mは掘り進める必要があるというのに。とはいえ、皮をはぐ時点であたりをつけていたので、肋骨を取り除いた場所からせめることができる。取りあえず、中心まで掘ってみることにしよう。





どうにか心臓までたどり着いた。その過程で私は全身血だらけ、この状態でリスポーンしてみろ、体についた血は消えるかもしれないが、身に着けた毛皮は血みどろである。最悪だ、下着で解体すればよかった。


まぁいい、あとで作り直そう。……流石に魔石が心臓の中にある、なんておかしなことはないだろう。となると心臓周辺、もしくは心臓に癒着していると考えていたのだが……となると、下側か?俺は上から掘ってたからな……あともう少しかもしれん。




カキン!


お、あったあった。よかった、実在したようだ。よし、これを取り出せば終わりだ。




「あ゛ぁー、終わったー」


いやぁ、実に長かった。結局5時間掛かった。途中で解体スキルが手に入らなかったらもっとかかっただろう。ちなみに魔石の形は多面体の結晶構造である。うーん、ファンタジー。


取りあえず、解体はこれにて終了である。疲労回復と服の作成のため拠点に戻るとしよう。拠点といっても何もないけれども。



いやまて、その前に血を拭き取らねば。まだ狼皮残ってたっけ……




ふぅ、戻ってこれた。いや、しかしインベントリが7割方埋まったんだが。服で多少消費するが誤差である。……なにか武器でも作るか……?一応サバイバルクラフトあるから生産の真似事はできるし、何より蜘蛛糸が非常に便利なため、作れないこともない。硬度∞疑惑のあるサバイバルナイフであれば何でも削れるだろうし。牙でナイフ、作ってみるか……?いややめておこう。せめて槍くらいにとどめておくべきだ。槍の柄がないが、そんなもの天井登って木々から堅そうなの取ってくればいいし。さあ、やりますか。



《スキルが進化しました》



うし、無事完成!その名も……


擬枝牙槍ミミック・ファング・スピア


擬枝の革衣(ミミック・ハイド) +VIT15


である。スキル進化の影響で作品名が自動で決まるようになってしまった。俺が作ったのは3つほど。まず裁縫のための針をどうにか牙の先端を削って穴開けてつくり、槍を作っているときにスキルが進化、サバイバルクラフトが野営工房ワイルド・ワークショップになった。


野営工房ワイルド・ワークショップ 生産職の生産行為を、生産スキルを使わずに行うことができる。作成能力に補正。


どうやら生産スキルがなくても生産に該当する行為……要するに、スキルなしでもそれがアイテムとして機能するということだ。本来武器を作ったとしても生産スキルがなければ、それはただの棒でしかないが、このスキルがあればいかなる生産行為でも効果の付与や増強が可能になるらしい。実際、擬枝の革衣(ミミック・ハイド)はVITが増加するようになった。サバイバルクラフトで作った狼皮の装備には何もなかったのに。


作成物はそれぞれ、牙を削り木の柄に嵌め込み蜘蛛糸で縛り、グリップを蜘蛛糸で作り上げた槍と、鱗を剝ぐと相当な薄さ(あのサイズの蛇にしては)である蛇皮を用いたズボンと上着である。服に関しては割と日常で着てても違和感がないレベルに仕上がった。なお裁縫もLv1000で習得した技能である。


蛮族は文明人へ進化した!


「うし、これで死に戻りしても何も問題はないな。安心して突貫できる。」


インベントリは6割近く埋まっているが、素材の系統が蛇ばかり、希少素材らしきものは精々が魔石のみ。せっかくこんなところまで来たのだから激レア素材みたいなものを獲得してから帰りたい。服は用意できたので、モンスターとの戦闘はできるだけ避けつつ、特殊フィールドか何かに突貫して採取を試みたい。モンスター殺害による採取は正直いって、一対一の状況かつあのレベルの戦闘を再び勝利する、というのは難しいので諦めることにする。


というわけで目指せレア素材、突撃である!





再び戻ってきました例の大道。今からやるのは昨日……昨日か?割と一昨日の可能性がないか?……まぁいい、昨日やったランニングと同じことである。違いは、モンスターがアクティブ化しても殺さず逃げ切るという点。モンスター同士で敵対行動を取ることがあるのは確認済みなので、トレインしながら進めばなんとかなる、と考えている。


え?じゃあなんでわざわざ槍作ったんだって?まぁあれは素材消費の目的もあるが、一番はリーチの確保である。トレインするにしても正面から来られてナイフで受け流すというのは厳しいものがある。槍であれば相手を避けさせることが可能なので、すり抜けることもできるはずだ。(希望的観測)


さて、走ろうか。


AGIが与える走力への影響は明確に判断できないが、現在の速度は大体風の感じからして時速50kmちょい。全速力で走れば60kmくらいは……まてよ、まさかAGI数値そのまま限界速度とかいうんじゃないだろうな?いやそれだと初期値は動けすらしないわけで……うーん、偶然とみるべきか……そもそも近接戦闘時の速度は体全体はともかく、腕のみであればもっと早いし。人は素で150kmのボールを投げれるわけだしな。……そもそもAGIは筋力ではない、んだろう?筋力は筋力でSTRとして独立しているわけだ。であればAGIはそもそもが筋力由来ではないファンタジー的ステータスとなるわけで……


ああもうこんがらがってきた。今走ってるとき筋力を使っているのは確かなんだが、謎の加速があるのか?感覚で分からなかったが……動体視力は間違いなくAGI由来なんだがね。ああもしかして筋力にバフが入っているのか?加速行動全般にAGIによるバフが入っていると見た。明らかにSTR以上の筋力が加速に用いられている。……しかしなぜSTRとAGIをわざわざ分割したのか……


まてよ、もしかして筋力に対するバフではないのか?確かにSTRのバフだとSTRを参照した数値が出力されてしまう。であるならば完全に別の代物であるはずだが……


ステップを意図して筋力(・・)で行う。進む意志ではなく肉体を持ち上げる意思で。


ズダン!


明らかに遅くなった。まぁここまではいい。次に加速の意思で……


グン!


うん、明らかに早い。では次に……体を足で投げる感覚。蹴るではだめ、恐らくあれは加速挙動をAGIで、衝突時の加圧がSTRで処理されているのでSTRのみで判定される。だが投擲挙動は物体の重さをSTRで、投げる速度がAGIで処理される。これであればSTRとAGIの両方を使えるのでは……


ズ、ギュン!


「あっ」




やっべ



ズゴン!!




……すっころんだ。



「いたたた……走ってる最中にやる実験じゃない」


あと別に速くなってない……だが、なんか掠った感覚がある。もう一回。



ズ、ギュン!



うーん、飛んでるだけだな……というか、走るのも別に体の重さをSTRで、速さをAGIで処理しているはずだし……うーん……だが投擲というのは間違っていないと思うんだが……そういえば、加速じゃなくて減速処理はどっちで行われるんだ……?


ステップを踏んでみたところ、どうやらSTRである。


まぁそうか、マイナスの加速はべつにAGIじゃないか…………ん?ではそれは減速の処理をSTRで行えているということか?では逆説的に言えば、加速の処理をSTRで行えるのでは?いやそのはずだ。STRのみでの移動は先ほど行えた。であれば。


地面を蹴り押しながら、自らを加速すれば……いや逆だ、加速が先だ。いける。


極致(ゾーン)


自らを加速させ、加速の反動をさらに筋力で蹴り殺す。




ヒュガッ!!





「ハハッ」




めっっっちゃ加速した。見てみろ、加速した場所が凹んでやがる。そんでもって当然のように体力が通常の倍以上に消し飛んだ。なるほど、成功だ。


しかしながら極致(ゾーン)、最低でも集中(フォーカス)を使わなければ成功する気がしない。修練が必須である。それに、今できたのはあくまでも足での加速。全身で行えたわけではない。……日々コツコツ練習する以外の方法がないタイプだ。うん。今日はともかく、これの練習は明日からの日課にすることにした。


うーん、最初の目的がどこかへ吹っ飛んでいってしまった。まだ道の先にたどり着いてもいないのに。


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