乙女の怒りは三度まで
『迷宮図書館』の受付。
『迷宮図書館』の利用者、特徴的な尖った耳を持つ〈『迷宮図書館』館長〉の〈同輩〉とその従者が、贈り物をしてきた。
「どうぞ」
〈同輩〉の従者である二足歩行の狼、獣人が、受付に細長い箱を差し出した。
「なんですか、これ?」
「開けてごらん」
対応を任されている〈迷宮図書館副館長・綾読次郎四郎〉は箱を開けた。箱の中にあったのは細長い、大量の角。
「えっ、これ〈ユニコーン〉の角ですか?」
自身の〈異能〉で鑑定した〈綾読次郎四郎〉は、目を瞬かせた。
〈ユニコーン〉
ヨーロッパに伝承を持つ、一角獣。
象ですら殺すことが出来る狂暴な〈幻獣〉だが、処女の乙女だけが手懐けることができる。
角には解毒作用があり、『こちらの世界』では高額な値で取引がされる、稀少なモノ。
「私の故郷でね。〈ユニコーン〉の角狩りが行われてね」
実家から野菜が送られてきたからおすそわけ。なんかいろいろと気になるのは気のせいか。会話が聞こえていた〈司書〉を余所に、〈同輩〉は話を続ける。
〈同輩〉の故郷、『こちらの世界』でも特異な島である『幻島』での〈ユニコーン〉の大量発生。そんなことが起こるなんて、なんでもありだな。あの島と〈司書〉は思う。
〈ユニコーン〉は狂暴性から野放しにしていては危険。角さえなくなれば、〈ユニコーン〉は大人しくなるので、〈ユニコーン〉の角狩りが決行された。
そのため、処女の乙女達に協力をしてもらうことになった。〈ユニコーン〉は、処女の乙女の膝枕を強請る。そうやって寝ている間に角をきる作戦。
処女の乙女達の安全のため、〈幻島〉の騎士達はギリギリの距離で護衛についていた。それが失敗だったのかもしれない。
「〈ユニコーン〉は乙女の護衛についていた女騎士に膝枕をねだった」
囮役の乙女達を素通りして、〈ユニコーン〉は女騎士に向かった。それはちょっと良くないのでないかと〈司書〉は思った。
「次に護衛のために女装をしていた男に膝枕をねだった」
〈ユニコーン〉、女装した男はいいのか。そもそも処女かどうか見分けることは出来て、男女の区別はつかないのかと〈司書〉は胡乱な目。
「そしたら、女装もなにもしてない、一番遠くから護衛していた男の騎士にねだった」
〈ユニコーン〉の選別基準がわからなくなった。もしかして、〈ユニコーン〉はある意味で純潔であれば男でもよいのだろうか、と〈司書〉は引いた。
余談だが、膝枕をねだられた男の騎士は、女性と間違えられる容姿の持ち主。
「それで乙女達がぶちぎれちゃった」
「でしょうね」
〈綾読次郎四郎〉は呆れる。聞き耳を立てていた〈司書〉と利用者達も頷いた。
その時の光景を目撃していた従者も、〈ユニコーン〉に同情が出来なかった。
「〈ユニコーン〉は、斧やのこぎりを手に怒り狂う乙女から必死に逃げ回った」
乙女達が怖い。女性側は自業自得だと頷いている。こっちも怖い。
「〈ユニコーン〉は〈聖獣〉なんて扱われることもあるけど、実際はただの男嫌いの女好き。馬面の変態だよね」
身も蓋もない〈同輩〉の言葉に、女性陣は深く頷く。男性陣は、否定もフォローも出来なかった。




