表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう姉妹には戻れない  作者: キノハタ
第1章 姉と妹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/36

第5話 姉とーーーーーー―①

 わかってた、どれだけ唇を奪っても、どれだけ翻弄してみても、この人にとって私はどこまで行っても『妹』だ。



 子どもの駄々を相手にしてるのと変わらない。はるが浮かべる笑みは優しい受容であり、同時に決して埋まらない溝でもあった。



 わかってる、そんなことは、頭では。



 でも『ずっと、お姉ちゃんだから』と言われた瞬間に、私の中で何かの形が、どうしようもなく崩れてしまった。



 ぐちゃりぐちゃりと脳内で、何かが致命的に溶けていく。



 ぼたばたと眼から落ちる雫は、その何かが零れだしていくみたい。



 だから、無理矢理に抑え込んだ。そうすることでしか、この人に私の想いがどれだけ取り返しがつかないか、理解してもらえない気がしたから。



 だから、唇を奪った、無理矢理に。



 そして、真っ暗闇の中、あなたを組み敷いてする、口づけの味は。



 苦く、しょっぱく――――狂いそうなほどに甘かった。



 腕がはるの首元に触れる。そのまま、手を下に伸ばせば、露わになった鎖骨に触れる。もっと下に伸ばせば、下着に、胸に。



 触れる、犯せる。あなたのことを。



 別にいいじゃないか、どうせ手に入らないんだもの。



 どうせ生涯、私のものになることなどないのだから、なら、このまま全部。



 あなたを傷つけてでも、奪ってしまえば、それで――――。



 胸が破裂しそうなほどに痛い。ぐずぐずになった心拍と呼吸が、私の中の思考と感情を砂のように崩していく。



 そうだ、どうせ、どうせ。



 あなたは私を『妹』としか見てくれないのだから。



 なら、いっそこのまま、何もかも。



 私ごと、あなたすら壊してしまえたら。



 少しは、この胸に空いた孔のような、空虚さも埋まるだろうか。



 そうすれば、ようやくあなたの妹じゃなくなれるのかな。



 ねえ、おねえちゃん。




 私を見てよ―――。












 ……なんて、狂えてしまえたら、それでよかったんだけどな。



 このままあなたを犯してしまえば、それで満足できたかもしれないのに。



 でも、そうはできなかった。



 致命的な一線。



 はるの服の中に指が入りかけた、その境目で。



 私の手はピタリと止まる。



 何をいまさら、もうどうせ無理矢理、唇は奪ってしまっているのに。



 こんなことして、とうに許されるはずもないのに。 



 どうして、そこだけは、手を止めてしまうんだろう。



 はるの首元の、白くて柔らかい場所を、そっとなぞりながら零れた息は、重く痛々しい。



 わかってる、ここから先は、本当にはるを傷つける。



 沢山傷つけて、本当に何をいまさらって話だけれど、これ以上ははるの心が壊れて戻らないかもしれない。



 だから、できない。私には。



 壊してでも愛して欲しいと、想えるだけの自我(エゴ)すらない。


 

 我ながら、半端が過ぎるね……。



 そして、手が止まってしばらくしたころに、はるはそっと腕を開いた。



 まるでいつものように、私が取り乱して泣いたときは、そうしていたように。



 どこか泣き出しそうな顔で、どこか愛おしそうな顔で。



 まるで、妹の苦しみを、どうにか分かち合おうとする姉のように。



 そんな表情を見ることすら、今はどうしようもなく苦しいけれど。



 でも、少し躊躇った後、結局、その腕に誘われて、はるに身体を預けてしまう。



 そうすれば、安心すると、この10年で身体に教え込まれてる。



 ああ、やっぱり、この人には勝てないや。



 「ごめんね」



 その言葉を口にするべきなのは、本当は私なのに。



 でも、その腕に包まれてしまったら、結局何も言えなくなって。



 甘えるように、ねだるように、その胸に顔をうずめる。



 暖かい、心地いい。



 ずっと、ずっとそうやって受け止められてきたから。



 その感覚が、どうしようもなく、幸せで。



 ああ、と思わず涙が溢れた。



 もし叶うなら、こんな想い、明日には忘れてしまえばいい。



 そうすれば、私たちはまた、ただの仲のいい姉妹のように笑い合えるから。



 こんな愛なんて、明日の朝には、夢のように消えてしまえばいい。



 そうしたら、またあの頃みたいに、何も知らないまま。



 あなたの隣で、ただ笑っていられるはずなのに。



 息が漏れる、熱く、震えてる。



 そんな息に乗せて、あなたに聞こえないくらい、小さく口を動かした。



 言葉になれない拙い五文字は、きっと雨のざわめきの中、何処にも届かず消えていく。



 それでいいと、そう想った。



 そう想えてしまうほど、あなたに抱かれているこの瞬間は、ただ心地が良かった。



 もし明日、この過ちの夢が覚めたなら。



 あなたは、笑ってくれるだろうか。


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ