21.女友達
期間が空いてしまい、すみません。
よろしくお願いします。
「……」
「……」
リオラベルは眉尻を下げながら目の前でにこにこと笑う人物を見つめる。
市場の近くにある街一番のカフェのなか。
周りがざわざわと賑やかに湧くなかで、リオラベルはもうかれこれ10分ほど目の前に座るバネッタと見つめ合っていた。二人の座る席のテーブルには食べ終えてしまったケーキの皿が二つ、ティーカップが二つ、仲良く並んでいる。
華やかな顔立ちのバネッタがにっこりと笑みを浮かべているものだから、周りに座る客たちが時折チラチラと彼女を窺っていた。
しかしリオラベルはたおやかに笑っているバネッタからの視線が落ち着かなくて、一刻も早くここから離れたい思いでいっぱいだった。
「……あの……お話とは?」
二人の間に広がる沈黙に耐えられなくなったリオラベルがおずおずと口を開くと、バネッタは笑みを深めてようやく口を動かした。
「私、昨日フィーニス地方に来たんだけど……」
「はい」
「やっぱり女の子のお友達がほしいなーっと思って」
「はい?」
艷やかな唇から発された言葉にリオラベルは呆気にとられる。そんなリオラベルに構うことなく、バネッタはあっけからんと言葉を続けた。
「ほら、私初めてフィーニス地方に来たから、ここでの知り合いなんてヴィニアスぐらいでしょう? でもやっぱり女の子ともお話したいし、お友達にもなりたいじゃない? 昨日貴方を見た時、直感で貴方だ! って思ったの」
「な、なるほど?」
頷いてはみたものの、まったくわからない。バネッタはそんなリオラベルに構うことなく真っ赤な髪をサラリとはらう。
昨晩、彼女と会った時は金髪のウィッグを被っていたようだったが本来の髪色は華々しい赤毛だったらしい。急に話しかけられたときはびっくりしたリオラベルだったが、その艷やかな顔つきからすぐにバネッタであると気がついたのだ。
「私はバネッタ。ヴィニアスと同じ時期に魔法師団で働いていたの、今はもうやめちゃったけど」
「そうだったんですね……リオラベルといいます。少し前からヴィニアスに魔法を教えてもらっています」
「昨日ヴィニアスから聞いたわ! あのヴィニアスが魔法を教えるなんて天変地異かと思ったけど……案外教えるのがうまいのかしら?」
楽しそうにころころと笑いながらバネッタは首を傾げる。ティーカップに注がれたレモンティーを一口飲み込んだリオラベルは静かにティーカップをソーサーに戻して口を開いた。
「とてもわかりやすいです。彼に教えてもらうまでは魔法書だけでなんとか学んでいましたが……やはりよく知る人に教えてもらうことには及びませんね」
「ふふっ。確かにそうかもしれないわね」
小さな笑みで口元を綻ばせるリオラベルを見つめながら一瞬黄金色の瞳を細めたバネッタだったが、リオラベルがそれに気づく前ににこっと屈託のない笑顔を浮かべた。
「これからよろしくね、リオラベル」
「こちらこそ……」
いつのまにかこれからの交流が決定事項となってしまったリオラベルは、差し出されたほっそりとした手におずおずと自分の手を添える。
ニコッと微笑みながらギュッとリオラベルの手を握ったバネッタの細い手は、見た目からは想像ができないほどの力強さがあった。
こうしてリオラベルには人生初、女友達とやらが出来た。
用事があることを思い出したリオラベルは「私が強引に誘ったんだから勿論奢るわよ、先にお店出ちゃって大丈夫」とバネッタが強く言うものだから、何度もお辞儀をしながら駆け足で店を出る。
リオラベルが店を出るまでにこにこと笑いながら彼女を見送っていたバネッタは、次の瞬間その美貌から笑みを消し去る。
そしてテーブルの上、リオラベルが食べていたケーキの皿にのったフォークを彼女の黄金色の瞳が温度を宿さずに見つめるのだった。
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