表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

才女の婚約者であるバカ王子、調子に乗って婚約破棄を言い渡す。才女は然るべき処置を取りました。

掲載日:2025/11/14

前編


 王位継承権を持つ第二王子フェニックは愚か者だった。

 そのため彼は、婚約者であるアローラに無視され続けてきた。


 だからこんな馬鹿げた間違いを犯してしまったのだ――




 アローラは夜明け色のミステリアスな髪色に、太陽の瞳を持った堂々たる美少女である。しかもあらゆる学問を深く学んでおり、学者と専門的な会話を繰り広げるほどの才女だ。


 しかしフェニックは“俺はアローラに負けていない!”と胸を張っていた。


 彼は黒髪黒目の醜男で、平均よりも下の成績である。しかしそれ関わらず、「あいつが夜明けの女王なら、俺は深夜の王だ! 優秀な美男美女同士だ!」と言いふらしていたのだった。


 アローラは傲慢なフェニックに愛情を抱けず、無視していた。それよりも王位継承権のない第一王子グリフィと仲が良く、いつも二人は聖魔法の話しをしていた。グリフィは目が不自由なために王位継承から外れていたが、学園の講義に参加したり、点字の本を読んだりして、とても物知りである。さらには穏やかな性格であるのに判断力と決断力に優れ、なぜ彼の目が不自由なのかと国民は嘆いていた。


 フェニックは兄のグリフィが羨ましかった。

 どんなことをしてでも、アローラを奪い返すと誓った。

 しかしその方法がひとつも思い付かない……――


 悶々とする日々、ある利口な従者がフェニックに進言した。


「今まで、傲慢な態度でアローラ様に嫌われてきたのでしょう? それなら、逆の行動を取ってはどうでしょう?」

「何だと!? 逆の行動とは何だ!?」


 理解力の低いフェニックに従者は閉口したが、すぐに答えを知らせる。


「アローラ様は傲慢がお嫌いです。それなら謙虚になればよろしい。そして手っ取り早くグリフィ様からアローラ様を取り返すいい方法がございますよ?」


 従者は粘っこく微笑んだ。




 そして兄のグリフィが謎の刺客に害され、それを弟のフェニックが助け出したという知らせが国中に広がった。幸いにもグリフィの怪我は軽く、すぐに治るものだった。そして兄を救ったフェニックは国民から祭り上げられた。


「いや、俺は大したことはしていない。それよりもすぐに現場へ駆けつけてくれた衛兵達に感謝を告げてほしい。俺はただ兄が心配だったのだ――」


 フェニックは従者に考えてもらった言葉を繰り返した。

 国民はその言葉に感動し、大いに褒め称える。

 それはアローラも例外ではなかった。


「フェニック様、今まであなたのことを誤解しておりました。あなたは兄上のことを誰よりも思う、素晴らしいお方だったのですね。ああ、あなたの婚約者で良かった」


 そこの言葉を聞いたフェニックは驚いた。

 あの偉そうなアローラがこの俺を称賛している。




 彼は一瞬だけ天国へ登り、そして一気に地獄へ落ちた。




 この女、アローラ! 今まで俺を無視してきた癖に、たった一回謙虚なところを見せただけで、掌を返しやがって! それに誤解していたってどういうことだ! 俺のことを最低な人間だと思い、遠ざけていたんだろうが! 何という女狐だ! 文句を言ってやる!


 そしてフェニックはアローラを指差し、喚き散らした。


「ふん、アローラ! 今頃気付いたのか、この間抜け! やはりお前は、勉強ができるだけの馬鹿だったんだな! この素晴らしい俺を見くびっていたなんて、哀れにも程がある! 俺の良さを見抜けない馬鹿には王妃は務まらん! よって、ここでお前との婚約を破棄する!」


 その言葉を聞くなり、アローラは悲しげな表情を浮かべた。

 そしてコクリと頷くと、足早に立ち去っていった。




 フェニックは気分が良かった――最高の瞬間だった。




 そして一週間後、王位継承権はフェニックからグリフィに移った。

 しかもそのグリフィの婚約者はアローラだったのである。

------------------------------------------------------------

後編


 フェニックは顔を歯を喰いしばって激怒した。


 どうしてこの俺が、王位継承権を失ったのだ!

 どうしてあの兄が、アローラと婚約したのだ!


 フェニックは怒りで我を失ったまま国王の部屋に飛び込んだ。


 するとそこには憎きグリフィと女狐アローラの姿があった。二人はフェニックを見るなり、視線を鋭くする。彼は襲いかかろうとしたが、見えない壁に阻まれた。


「くっ……この壁は何だ……!?」

「私が聖魔法で作り出した結界です。あなたは私を勉強ができるだけの馬鹿と軽蔑しましたが、その勉強の成果により聖女となったのです」

「何だとっ……!? 聖女だとっ……!?」

「ええ、あなたが婚約破棄を言い渡した三日後、聖女となりました」


 アローラとグリフィは共に聖女を造り出す研究をしていた。その研究がついに完成し、自ら実験台となったアローラが聖女となったのだ。人工聖力を身に着けた彼女が真っ先に行ったのはフェニックの悪事を暴くこと。彼女は婚約破棄された後、彼を疑ったのである。


 兄を助けた上に謙虚な態度を取る人間が、あそこまで最低な婚約破棄を言い渡すだろうか――?


 アローラは聖魔法の透視により、フェニックの身辺を調査した。すると彼がグリフィを襲った犯人であることが判明した。しかもその計画及び謙虚に振る舞う演技が、従者の入れ知恵だったことも発覚する。従者はすでに拘束されているが、フェニックは怒りのあまりそのことに気付いていなかった。


 そしてアローラが次にしたことはグリフィの目の治療だった。


 グリフィは第一王子であるが、目が不自由なために王位継承はできない。それなら治せばいいと、アローラは人工聖力を量産してグリフィの治癒に使った。その結果、視力の低さはあるものの、彼は目が見えるようになったのだ。




 それにより、王位継承権はフェニックからグリフィへ移り、聖女となったアローラがその婚約者となったのである。




 そう説明されたフェニックは怒りに震えた。


「そんな馬鹿な……! 二人して俺を騙していたんだな……! アローラ、この女狐め……! グリフィ、お前をもう兄とは思わんぞ……!」

「フェニック、君は勘違いをしているよ。アローラは君を支えるために沢山の勉強をして、聖女にまでなろうとしていたんだ」

「ええ、私はフェニック様のために働いているつもりでした。しかし婚約破棄を言い渡され、これまでの努力が無駄だったと悟ったのです」

「うるさいうるさいうるさいッ! お前ら、絶対に復讐してやるッ!」


 激しく暴れ始めたフェニックを、国王は衛兵に捕らえさせた。


 グリフィとアローラの言葉はある程度真実で、ある程度嘘だった。彼女はフェニックのために勉強していたが、それは彼が頼りないからだ。もしフェニックが王位を継いだら、アローラが裏で実権を握るつもりだった。さらには人工聖力研究の初期段階で、彼女は自分が実験台になることを希望していた。なぜなら聖女の地位を得れば、堂々と国の政治に関われるからである。


 これらは全て、フェニックの愚かさで国を潰さないのための努力だった――


 しかしアローラは婚約破棄を言い渡され、その三日後に人工聖力の研究が成功した。だからこそ彼女は然るべき処置を取ったのである。




 たった一週間で多くを失ったフェニックは顔を真っ赤にして喚き散らす。

 彼は頭に血が上ると、昼夜問わず激しく暴れ回るのであった。


 その時、国王が力無く呟いた。


「アローラ、フェニックをどうしたらいいだろうか? グリフィを襲った罪で投獄すべきだが……永遠には閉じ込められぬ」


 老年の国王は、愚か過ぎる第二王子に辟易していた。

 アローラはそんな国王の心労を少しでも取り除こうとした。


「国王陛下、この私にお任せ下さい。今、フェニック様は感情が抑えられない状態にあります。適切な処置を取らなければ、周囲に迷惑がかかるでしょう。しばらくの間、彼を聖女の力で鎮静します」


 その言葉に反対する者はひとりもいなかった。




 そしてフェニックはアローラの聖魔法で鎮静された。

 聖女の鎮静力は抜群で、何もできずベッドで眠るしかない。


 その後も、喚き散らす度に鎮静され、少しでも暴力を振るったら強烈に鎮静され、復讐を企てればさらに強烈に鎮静され……という処置を取られた。それを数十回も繰り返した頃、ようやくフェニックは感情を抑えなければ日常生活もまともに送れないことに気付いた。彼はアローラの顔色を伺って、大人しくする術を学んだのだ。


 これにより、フェニックは無害な愚か者となった。

 そんな彼がアローラを恐れるようになったのは言うまでもない――




 一方、アローラとグリフィは結ばれ、聖女の力により国は繁栄したのだった。




―END―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ