犬の章 ドッグパニック その2
「ってことがあったんだよ。お前はなんだと思う?正宗」
正宗。俺の高1からずっと一緒にいる数少ない友達の1人。正宗には半年前に助けられてからさらに仲良くなった。そして、こういう厄介な出来事については正宗にいつも正宗に相談する。
「突然の唸り声、だんだん四足歩行になって追いかけてくる。こういう現象は聞いたことがないわけじゃない。」
「そうなのか?」
すると、正宗はスマホを取り出してある一枚の絵を見せてきた。
「この絵は、なんなんだ?」
見せられた絵は、犬のようで犬でない、人間のようで人間でない。いや、犬というよりもモグラやネズミの方が近いのかもしれない。正直に言えば何を描いているのかが全くわからない絵だ。
「これは、犬神と言うんだ。」
「犬神?」
あまり聞いたことのない名前だ。強いて言うなら、某ゲームで出てくるようか…ゴホンゴホンッ。
「犬神っていうのは、人間に憑く犬の霊みたいなもんだな。ただ、犬神っていうのは西日本でよく見るんだが、関東の方で見るのは初めてだな。」
こっちでは見ないのか。じゃあ、なんで急にこっちに犬神が現れたのか。そのことについて俺は深く考える。しかし、よくわからない。
「犬神は他にどんな特徴があるんだ?」
正宗は何かを思い出そうとしているのか、上を見ながらだんまりしている。
しばらくすると、何かを思い出したかのように話しだした。
「犬神は確か、家に憑く霊だったはずだ。家の誰かが犬神に憑かれると、それが家族内で感染していくんだ。とすると、この町に犬神が現れた理由はただ一つだな。」
正宗の目を見ていると、俺もすぐにピンときた。
「犬神に憑かれた家族が、引っ越してきたってことか。」
西日本にずっと居続けていたが、犬神が憑いていた家族がすぐにこの町に引っ越してきた。そして、今朝のあの信号で犬神の呪いが発動した。ということなんだろう。つまり、この町で最近西日本から引っ越してきた人物を探せば、事態はなんとか収拾できそうだ。
「でも、この広い町から引っ越してきた人を探すのはむずくないか?」
「…だろうね。」
俺の住む町は人こそ少ないが、とても広い。その広い町の中をくまなく探すというのは、やはり困難というものだ。
2人でどうしようかと迷っていたら、チャイムがなり、先生ともう1人、謎の女の子がいた。
先生は名簿を教卓の端に綺麗に置いて、話し始める。
「おはようございます。今日から皆さんは2年生となります。先輩になったという自覚を持ってこれからを過ごしていってほしいと思っています。そしてもう一つ、皆さんに新しいクラスの仲間を紹介します。自己紹介お願いできますか?」
「はい。」
クラスの視線が一斉に女の子の方へと向く。
「神田薫です。兵庫から引っ越してきました。よろしくお願いします。」
神田さんはとてもあっさりした挨拶をした。美人系の顔をしている人でありながら、クールな性格だ。おそらく、多くの男子は彼女の虜になってしまっただろう。しかし、俺と正宗は全く違う反応をした。そう、俺たちはさっきちょうどこの話をしていたからだ。
最近、西日本から引っ越してきた犬神に憑かれた家族の話を…。




