十話慰謝料二千万
目が覚めると俺の部屋に古華さんがいた
ゲームをしている、しかもオフリくんの名前で……
あれ全然夢じゃなくて全然現実だった
「佐原くん、おはよう」
「おはよう」
全然昼やけど
「二日前なにがあったか話せる?」
「話せる……古華さんがダンジョン行ったあと恩光先輩にコーヒーをパシらされてコーヒーを買った、そのあと女子トイレから変な声が聞こえたんや」
「そんなへんは恩光先輩に聞いてるよ、そこじゃなくてダンジョン入ってからが知りたい」
「えっとまず三十階層に行ったんや」
「どうやって?」
「普通にゲートから」
「佐原くん三十階層行ってたの?」
「いやなんか行ったことないけど入れてん、村山さんもびっくりしてたわ」
「う、うん、それから?」
「村山さんおんぶして共鳴モードで三十三階層まで走ってたらあいつらを見つけてん」
「え?まあ続けて」
「それからはあの音声の通りや、あれ聞いた?」
「うん、聞いたよ……」
「で、壁に埋まったあいつを引っ張って助けたと」
「佐原くん……色々おかしなところがあるんだけど……」
「残念ながら全部ホンマなんや……」
「私の目をみて言える?」
「言える」
古華さんの目をみて言う
「俺は本当のことしか言ってない」
「私は佐原くんのこと信じる」
「ありがとう古華さん」
「じゃあ私なりに調べてみるね」
そして古華さんは帰ろうとする
「あっ、あと私佐原くんのこと好きだから、じゃあね」
「え!?」
あれから数日経った、あの日丸ごと夢やったかもしれないが真実はわからない
だが俺にはまだ希望がある、それを信じて毎日ちょっとずつ勉強している
外ではまたコローニャウイルスとかいうウイルスの感染者が増えてまた緊急事態宣言が出ているらしい
「おにい!遊ぼ!」
「いいよ」
妹が平日でも家にいるしな
「それでなにする?」
「リアル神経衰弱」
「却下」
今日から登校再開だ、朝飯は菓子パンからランクダウンしてなにもなくなった、俺のせいだ
「本日のニュースです、世界ではヒトネコの差別が深刻になっています、アメリカのロサンゼルスではヒトネコ政府が独立─」
はー、暗いニュースしかやってないな
「じゃあ行ってきます」
「……」
バス停に後藤っぽいのがいたので話しかける
「よう後藤久しぶり」
「おう大晴久しぶり、大変だったな古華さんから聞いたぞ」
「まあな、今日なんか朝飯抜きやし親と一切話してないし」
「おう……」
「それで二千万払わなあかんし今日からバイトせなアカンねん、ほんで部活やめなアカンし」
「おう……」
暗い話しかできない……
「おはよう古華さん……」
あれ?俺唯一の希望の古華さんが……
「佐原、律休み、体調崩したんやって」
「風邪?」
「たぶんコローニャかも」
まあクラスでコローニャにかかってる人もいるとかなんとかって情報出てたしな、現に恩光先輩のクラスは学級閉鎖らしい
「それで村山さんも休み?」
「あいつはたぶん大晴に会いたくないからかもな、体調崩したって聞いたけど」
「ありえるなー」
「おい佐原、退部届もらってきたぞ」
「ありがとう阪本」
「おう、でも俺らはみんな佐原は悪くないと思って
るからな」
「みんなありがとうな」
そのころ村山は
「げほっげほっ、佐原に謝りたいんやけど、私なんで風邪ひくのーーー!!げほっげほっげっほっほん」
放課後職員室にて
「堀口先生、写真部やめます」
「理由を聞いてもいいですか?」
「慰謝料を稼ぐためにバイトするからです」
「受理しました、佐原くん頑張ってね」
「はい」
そして写真部の先輩たちに別れを告げる
「佐原くん、頑張るんだ、そうしたらきっといいことがあるはずだ」
「うん、頑張れ」
「今までありがとうございました」
よし、頑張るぞ、俺は近所のコンビニのバイトの面接に来た
「えー、佐原大晴くんだね、えーもしかして暴力事件を起こしたのは君かい?」
「いや俺は巻き込まれたというか」
「残念だが君を雇うことはできない、受け入れてくれるところもきっとないだろう」
俺が学校に行った次の日、なぜか俺はブラックリスト入りしたそうだ、すでに顔写真は世界中に流通し役所に父さんが勤めていることが広まり役所に抗議の電話が殺到し、今父さんはうつ病で休職している、家にはマスゴミが殺到し母さんもそんな感じだ、妹もずっと家にこもりっきり
俺も家から出られないので学校に行けていない
その学校もいつ退学になるかわからないし
家からもいつ追い出されるかわからない、賃貸やし
それもこれも全部あいつらとマスゴミのせいだ
あいつらがダンジョン内での犯罪を取り扱った
そこまではいいんだが俺の事件を取り上げ
俺を救いようのない悪者に仕立て上げやがったんだ
その裏には被害者を名乗る加害者のあいつらが関わっていることもわかっている、だってあいつらインタビュー出とったから確定やろ
さらに追い討ちをかけるように俺の個人情報をネットでばら撒きやがって、俺もう詰んでんねん
でもな、全部ダンジョンのせいやねん
ダンジョンさえなければあの事故が起こらへんかったわけやし、そもそもダンジョンさえなければ……
いや壊してやる、憎くて仕方がないダンジョンを壊して
ダンジョンから解放されてやる
さてと舞鶴ダンジョンを壊すとしますか




