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~魔王無双~ 転生した俺、無双しちゃうけど構わない?  作者: 六波羅朱雀
第三章 〜商業国家ルーグリナ連邦国編〜
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3-9.随分と態度の悪い人だこと


 翌日、ルーグリナ連邦国国境付近にて。予定通りに屋敷を旅立った俺たちは、荷馬車に揺られてここまでやって来ていた。肺の悪いディリス卿はもちろん、屋敷に残っている。


「あ、やってきましたね」


 荷馬車を降りて新鮮な森の空気を吸っていると、遠くから馬の蹄の音が聞こえて来た。シャルク先生が道の先を見る。俺たちがやって来たのと同じ方角だ。ただ、相手はディリス卿の屋敷ではなく、王都から来たはずだ。何といっても……。


「あれは……?」


「ルーグリナ連邦国防衛隊のマークだ。クロスした二本の剣とその奥の盾。そんなことも知らずに来たのか、クリストファー・ガルシア?」


 呟いていると、隣からぽんと肩を叩かれる。同時に丁寧なご説明が投げられた。聞いたことのある声、というか、俺を抜いて生徒は六名なんだし、昨日のうちに全員顔を合わせているんだから誰かは容易く分かる。そう、最近の戦闘相手。


「クラッド、先輩」


 そう、フェンリル寮三年、苦労人の金髪イケメンだ。とはいえ、俺の横に金髪イケメンの権化のようなヴァルがいるせいで霞んでしまっているが。


「あ、あの、そちらの方は?」


「ん?」


 恐る恐る口をはさんでくる女性が一人。あれ、誰だ? 今回生徒に女子は三人、だったよね。セイレーン寮のハルル先輩はシャルク先生とお話している。にしても、随分と可憐な雰囲気のある人だな。箱入り娘、か。さぞかし大事にされて生きて来たんだろう。今回は実戦だけど、魔獣とかち合わせて平気なのかなあの人。


「あたしはシエラ・リードリアン、セイレーン寮二年ですわ。長女ですの」


 目の前のこの人は……昨日は寡黙だった気がするが、なんだか前のめりの姿勢で積極的に来る人だな。意外だ。いかにも貴族令嬢って感じの赤いドレス。これで戦うのか? いやまあ、魔法戦なら服装はあんまり関係ないのかもしれないけども。


「ええっと、シエラ先輩、何か御用でしょうか?」


 聞くと、緑の目をキラキラとさせて金の髪を振り乱しながらより一層前のめりに。ちょっと近いぞこの人。本当に貴族令嬢か? 距離感おかしくないか? バグかな。修正したら離れてくれる? というか縦ロールの金髪令嬢ってほんとに存在するんだ。絶滅危惧種だと思っていたわ。


「ええ、ええ!! 御用ですとも!! あたしとしたことが、一体何をしていたんでしょうか!?」


 知りませんね、ええ。俺に聞かれましてもですね、はい。


「荷馬車で酔っていたとはいえ、このように美しい殿方に気が付かないだなんて!!」


 ン? 雲行きが怪しくなってきたぞい。美しい殿方? となれば、九歳児の俺じゃないなあ。……待てよ、荷馬車で酔っていて気が付かない?? おかしいぞ、あの狭い車内で人の顔が分からないなんてことはないはずだ。


「あ」


 なるほど。


 昨日、荷馬車は狭いから使い魔には空を飛ばせていた。具合の悪かった彼女は屋敷に着き次第すぐに部屋へ向かったのだろう。使い魔が空の散歩を終えて屋敷に入ったのはそのあとだった。んで、夜までは使い魔は二人とも俺の部屋にいたからな。ディナーの時は、俺たち三名は端の席にいた。それに乗り物酔いで食事を楽しく取る気分じゃなかったなら、うつむいていたかもしれない。


「ヴァル、ですか」


 そう気が付いたのは、俺の隣にいるのがヴァルであり、グレイはこちらへ向かってくる荷馬車の方へやや歩いていて距離があったからである。


 あー、なるほどねえ。


 うんうん、分かる、分かるよ。性格は難ありだけど、見た目だけは悪魔的にいいんだよねえ。人間をたぶらかす姿しているよねえ。金髪赤目、筋肉質で高身長。これでもかっていうほど良い見た目してるわ。この間の決闘の日同様、ヴァルは黒のスーツに赤いネクタイ。ホストっぽくはあるが、その概念がないこの世界ではただのイケメンとして映るだろう。ちなみにグレイもあの日同様だ。


 でもねええ。


「なあなあクリスよ!! 我、早く戦いたいぞ!!」


 こういうヤツなんだわ、ヴァルは。目の前の令嬢には全く興味がないらしい。


「貴方、あのお方の主だと聞きましたわ!!」


 おやまあ、ヴァルが使い魔でありファイアードラゴンだという噂を知ってなお惚れたのか。案外、異世界というのは異種族間恋愛に抵抗がないらしい。平和で何より。


「ヴァルは、ええっと、ご存じかもしれないけれど、ファイアードラゴンです」


 シエラ先輩がもう一度口を開き何かを言おうとしたところで、こつ、と蹄の音が止まった。荷馬車が目の前まで来ている。ご到着のようだ。


「おや、驚いた」


 最初に荷馬車から下りて来たのは、細身で長身の男だった。白くて長いローブを羽織っている。長い黒のブーツ。肩まで伸びた金髪。高い鼻、白い肌、鋭い瞳。何処をとっても凛々しい顔立ちだ。冷たい声音で漏らされた言葉は、俺の傍に居る者へだった。


「負け犬がよく顔を出せたものですね」


「……ッち」


 舌打ちしたのは、クラッド先輩だ。負け犬……なるほど、新人の俺に負けた話か。あれから二か月、隣国とはいえ、噂くらいはいっただろう。クラッド先輩は実戦実習は二回目だったっけ。去年何かあったのかな。それか、母親が違うとはいえ彼も貴族なんだし、そういう知りあい??


「弱者には帰っていただきたいですね。戦力外ですから」


 なんだこいつ、ちょっとムカつく。クラッド先輩のことはまだ好きでも嫌いでもない。負けを負けと認められるし、親や弟のことで苦労している気もする。その辺は好ましいというか、同情するというか。


 ただ、今は純粋に……目の前の男がウザいな。急に遅れて現れて、いきなり暴言かよ。


「おい、言いすぎじゃねえか」


 子供であることを忘れ、ドスの聞いた声を出してしまうが、後悔はない。


「あ? 子供がいたのか、すまないね。幼子の前では確かに、不適切な発言であったかもしれないな……謝罪しましょうか。負けた者はお帰り下さい、と言うべきでしたね」


 なんも変わってない気がするし。絶妙にいらつく~、そりゃそっちは18歳にはなっているだろうけどさ! 身長差があるからってガキ扱いすんじゃねえよこら。


「確かに九歳だが、ガキ扱いすんじゃねえよ。俺はクリストファー・ガルシア。聞き覚えは??」


「……」


 相手は名乗り返すでもなく、顎に手を当てて唸る。少しあって、思い出したように言った。


「ああ、負け犬を倒した子供ですか。小さくて見えませんでしたよ」


 子馬鹿にした態度だなあオイ。俺に恨みでもあんのか!? 初対面だよねえ!! なら前世か!? いや、前世じゃないな! 前世覚えているもんね俺!?


「ガキ扱いするなって今言ったんですけど??」


 この男、最近仕事でミスしてイラついていたりする?? いるよねえ、ミスってイラついて回りにあたる奴。気持ちは分からんでもないよ、無理難題押し付けられることもあるもんね。でも九歳児に当たるようじゃいけないよ。俺もクラッド先輩も、異国からお呼ばれしてんだから。お客よお客。


「……一つ言わせていただきますがね、この数か月、魔獣及び魔物の活動は活発になり、数だけでなく威力としても巨大化しています。学院の力は信頼していますが、負け犬と子供では相手にならないかと。怪我をしないうちにお帰りになったほうがよろしいですよ。いくら実戦実習とはいえ、怪我や死亡となれば我が国が責任を問われる可能性がありますから」


 ……天然か、あるいは本気の嫌味か。とりあえず、ムカつくな。俺が舐められている。


「そういう貴方は強いんですか、俺よりも?」


「ええ、もちろんですよ。私は防衛隊の隊長ですからね」


 自信ありげ、か。だが……魔力量っていうんだったか、持っているオーラが、薄い。いやそこらの人よりはあるけれど、クラッド先輩にちょっと多いくらいっていうか。


 ……この人、魔法はあんま、強くない??


「いいですか、ぼく? 怪我をしないうちに帰った方が」


「うるさいなあもう!! あんま言うとクラッド先輩にしたのと同じ魔法かけるぞ!!」


「それは駄目だ、クリス君!」


 俺がつい声を荒げて言い返すと、シャルク先生が全力が叫んで止める。わかったよ、今絶賛伝説級かどうか検証中ですもんねはい!!


「ふむ、そんなに魔法戦に自信があるのですか??」


「ええありますねえはい」


「ふむ……なら、こうしましょうか」


 ん? 急になんか思いついた顔したぞこいつ。つかヴァル、勝手に空飛ぶなこらあ!!


「森の奥の洞窟に、群れの主がいるそうだ。それを先に倒したなら、君を認めてあげるとしましょうか」


「別にいいけど……それは、学院側と防衛隊で競うということか?」


「ええ、そういうことですね。何か不満でも? 人数はそちらの方が多いですし、先生もいて経験者もいる。十分かと思いますが」


「十分すぎるね。俺と使い魔二名で充分だ。というか、どうせ俺たちが勝ったって、人数差がどうとかで俺を認める気ないだろ」


 あとからうだうだ言われたくないんだよなあ~。


「じゃあ、こうしましょうか。防衛隊、君、学院。三つの勢力に分かれて参りましょう」


クリスは平和主義かつ正義感の強い、ただただ不運な生前でした。

だから、こうして強気な一面があることに「?」となる人もいるかもしれません。

でも、よく考えてみるとですよ??

ただただ不運で、家族以外味方がいないみたいな学校生活でも、正義感を持って真っすぐ生きていけた。悪いことをする人がいれば、一人であっても立ち向かい、注意できた。不運な負けで終わると分かっていても。

これって結構、強気な性格していないとできない事ですよね。孤独に耐える強さ、正義を貫ける強さ、自分の考えを信じられる強さ。どれ一つ欠けても、叶わない。現世ではそこに圧倒的な武力による自信がついたんでしょうね。そしてそれを、「前世で憧れた魔法という存在」に対する「少年心」や「興味・好奇心」がありながらも正義のために使おうとする。その性格、貫けるといいね!!(作者の私次第だけど!!あはは!!)


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