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~魔王無双~ 転生した俺、無双しちゃうけど構わない?  作者: 六波羅朱雀
第三章 〜商業国家ルーグリナ連邦国編〜
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3-6.怪しい情報屋


「いやぁ~、高い買い物だったなあ……2000万ルプル……消えちまった」


「良いではないか。しかしこの指輪、1属性しかないのであるな」


「文句を言うなヴァル。自然物に魔力を込めるなど、一般的な生命体には不可能なんだからな」


 三人並んで大通りを進む。各々、買ったばかりの綺麗な指輪を右手人差し指に付けている。俺のは黄色の石がはまったものだ。琥珀みたいで、すごくきれい。語彙力がないからそんな褒め方しかできないけど、とにかく綺麗だ。ヴァルのは赤、まるでスピネルだ。グレイのは青で、サファイアみたい。


 宝石って言っていいのかな、これ。


「ヴァル、これって宝石?」


「いや、魔鉱石であるな」


 へ~。言われてみれば、授業でそんなの習うって担当教師が言ってたっけ。


 ガヤガヤと騒がしい大通りを、無数の露店店主たちの宣伝声を聴きながら歩いていく。やや先で飴を買っている友人たちに追いつこうと、足を速めながらも、買ったばかりの高価な指輪から目を離せない。そんなだからだろうか。背後を付いて来る人物に、気が付けなかったのは。


「少年よ、少し話を聞いてはくれないかい?」


 脳内に響き渡るような、大きくはないけれど確実に聞こえる声に呼び止められる。背後を向けば、怪しい雰囲気を纏うお兄さんが立っていた。


「その指輪、綺麗だね。三つも買うだなんて随分とお金持ちらしい」


「……あれ、つけられてた?」


「なんだ、気付いておらんかったのか。知っていて何も言わないもんだと思っておったぞ」


 指輪に夢中で気が付かなかったというのもなんだか癪だ。ここは無視。目の前の人物を探ることに専念しよう。見た目は……そうだな、身長は高め、といっても百七十センチちょっとかな。ヴァルやグレイみたいな大柄というほどではない。髪の色はフードに隠れているが、少なくとも前髪は赤に見える。目の色は暗い黄金色。瞳はしっかりと俺たちを捕らえている。


「そんなに警戒しないでよ。おれはぁ~、そうだな、ウィルとでも呼んでくれ。情報屋をやってる。さっき君たちが大金で購入するのを見てね。それから、ギャンブルで大勝するのも見た」


 そんなところから見ていたのか。


「んで、これはいいお得意様になると思ってね。どうだい? 初回は安くしとくけど?」


 ……宣伝かよ。良いカモだと思われたわけだ。ま、中身が二十過ぎの男だとは思わないもんな。大人らしき二名が使い魔である以上、主人であるガキが釣れればいいわけで。ちょろいとか思ったんだろう。だが残念、俺は詐欺にはうるさいぞ。


「胡散臭い。どっか行ってくれ」


「はは。こりゃ酷い。でも安心してくれよ。おれは王都一番の情報屋だ。客のことを売ることはない。無論、悪人だったんなら売るかもしれんがね? でも、君みたいな幼子を売ることはねえさ」


「ふん、信用ならんね」


 怪しい、ひっじょうに怪しいぞ。初回を安くして、次からぼったくるんだろう?? 分かっている、分かっているとも。現実でもそういった詐欺は多かった。この世界でもこういった連中はいるんだな。異世界にインターネットはないが、こういった古風な手口があったか。


「だから、おれはお得意さんをカモにしようなんて思わないわけ。ほら、試しに何か言ってみ? 初回だ、信頼を勝ち取りたいし、ここは五千ルプルで結構」


 無料にしないところが上手いな。無料だと、本格的に怪しいからな。とはいえ、まあ、そうか。前世と違って本格的に個人情報を取られるわけではないのだ。一回くらい、構わんか。仮に奴の背後に危ない連中がいたとしても、返り討ちでいいし。


「んじゃ、そうだな……」


 今一番大事なことは…………学院、いや違うな、そうだ、行くべき場所があったな。脳裏に先日の光景が思い起こされる。真白の空間で与えられた、いや、願われたこと。


 マジェスティは言った。「場所は、西の商業国家ルーグリナとの国境付近にある村である」と。


 そこへ行って何が起こるのかはさっぱり分からんが、奴の言い分が正しいのであれば最初の統合相手とやらがいるのだろう。危険極まりないに決まっている。


 それと、こうも言っていたはずだ。「優秀な生徒は隣国ルーグリナとの共同実習がある」と。それに志願しろとのことだった。新入生とはいえ先輩を倒したのだ。実力は十分にある。


 ということで、聞きたいのはつまるところこの件である。


「じゃ、聞かせてもらおうか。商業国家ルーグリナとイージス王立騎士学院は、共同実習をしているらしいな。それについて教えてくれ」


 ウィルは首を傾げ、金色の目を丸くした。まつ毛をやや伏せ、訝し気に俺を見る。今度は俺が怪しまれる番らしい。しかし、右手で顎に触れ考えるそぶりを見せたかと思うと、最終的には口を開いて語り出した。


 ヴァルはすでに興味を失っており、グリムたちの元へ駆けて行ってアイスクリームを頬張ってやがる。あやつめ、少しは聞いたらどうなんだ。お前も関係ある話だろうて。それに比べ、グレイよ。お前はいいなあ、良いヤツだなあ、たまに俺以外に攻撃的になることを除けば、非常にいいヤツだ。


「じゃ、まあ語るけどよ。でもこんなの、学院のせんせー方に聞けばいいんじゃないのか?」


「隣国との関係性や客観的視点を求めているんだ。それに、先生に聞いたら、行く気満々な生徒になっちゃうじゃないか。ヤバい案件だと知っても、もう手遅れになっちまう」


「ま、それはそうだな。せんせー方は耳当たりの良い事しか言わん」


 ウィル曰く、ルーグリナ連邦国という国は、商業国家と言われるだけのことはあるそうだ。鉱山資源の豊富なレムナ地方。農業盛んなカルナ地方。人口豊富で商売の窓口であるエルナ地方。全てがバランスよく揃った、完全な土地。平和的であり、この地では、各国は武力を一度横に置いて商売をし合うという。北東にサンクチュリア大森林があるため、主な商売は北以外の方面に向けてだ。


「んで、武力ではなく商売に重きを置く平和主義なルーグリナは、防衛術を求めている。もっといえば、商売に使うルートの安全を確保したがっている。というわけで、わが国は実戦に慣れたい学生を送っているんだよ」


「なるほど。お互い良いようにし合っているわけだ」


「そ。とはいえ、予定外の敵が来る可能性もある。だから有望な生徒だけを連れて行くってわけだ。無論、危険だからな。当人が嫌がればそれまでだ。学院とて、万が一が起こった場合に親である貴族たちに謝罪を入れるのは面倒だからな」


「んじゃ、これまでに死人はいるのか?」


「いないな。ただ、死にかけた者はいる。なんでも、小型とはいえドラゴンが出ただとか、盗賊団が来ただとか。貴族の子っていうのは、誘拐すれば学院に対しても親に対しても金をとれるからなぁ」


「じゃ、新入生でも可能か?」


「あ? なんだ、君は新入生か。まあ無理じゃねえよ? ただ、止めといたほうがいいぜ。参加したがるのは、箔を付けたい貴族の子か、戦いを好むヤバい奴か。なあ、君、どこの所属だ?」


「キマイラ寮だ」


「あー……それなら、大丈夫かな」


 ん?? なんで大丈夫と言われたのかよく分からんが、決していいことではない気がする。心なしか、諦められたような。納得されたような。失礼を受けた感覚だ。変なの。


「さ、情報はこんなものかい?」


「そうだね。5000ルプルなんだし、こんなものかな。最後に一つ、いつ行われるの?」


 今は四月。もうすぐ五月。あ、俺5月誕生日なんだった。じゃあもうすぐ九歳になるのかあ。楽しみだな。そうだ、さっきは両親たちにこれまでの礼で金を送ろうとか思っていたけど、プレゼントに変更しようかな。息子に大金送られても心配だろうし、ジャンさんもせっかく支援で金を渡したのに倍になって返されては良い気がしないだろう。となればこのあと、王都で買い物だな。可愛い可愛い妹にも何か贈り物をしないとっと。


「六月最初だ。真夏っていうのは、魔物も活動盛んらしいぜ」


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