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LOOP  作者: プンプン丸
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第3話 一週間

異世界に召喚されて、海斗が自分の最弱さに絶望してから一週間程が経過した。


現在、海斗は自由時間を利用してこの世界の事を調べることにした。

その手には〝世界大全〟と呼ばれる巨大な書物を手に持って椅子に腰掛ける。


この1週間…ヴァレンヌ団長やユリウス団長から戦闘訓練などを教わったが、一向にレベルとステータスが上がる気配は見られなかった。

せめて、出来る限り皆んなの力になりたいと思って、この世界の知識を蓄えて貢献する。


本を読みながらも、考えるのは自身の事。

皆んな、訓練や本格的に弱い魔物の討伐に入り始めたというのに俺はこんな所で…

自身のステータスを改めて確認する。


==================================

カイト・ヨミ 15歳

性別:男 

レベル:1

筋力:1

体力:1

敏捷:1

魔力:1

幸運:1

固有スキル:輪廻神の祝福

保有スキル:言語理解


==================================


一週間、真面目に鍛錬をした結果だ。

なんも変わってない…はは、全く笑えないね。

成長するのは、武器の使い方ばかり。


一方で、響聖夜達のステータスは著しく成長しているらしい。


==================================

セイヤ・ヒビキ 15歳

性別:男

レベル:10

筋力:400

体力:400

敏捷:500

魔力:350

幸運:500

固有スキル:勇者

保有スキル:全属性耐性・物理耐性・状態異常耐性・剣術・縮地・気配察知・魔力回復・危険感知・魔力感知・限界突破・言語理解・高速詠唱・魔法適正


==================================


凄まじい成長力である。


海斗とは比べものにならない程の才能と成長ぶりには嫉妬してしまう。


響聖夜や東雲有栖が保有する高速詠唱や無詠唱はこの世界の魔法概念を揺るがす程の驚異であるとされている。


この世界の魔法は詠唱が長ければ長いほど上位の魔法へと成長すると共に使用する魔力は多くなる。

魔力量の大小によって威力や効果も範囲も上がっていく。

しかし、基本的にこの世界では魔法使いという職業はかなり不利でもある。


魔法とはイメージ。


口で詠唱し術式を刻む必要がある他に、頭の中で自分が扱いたい魔法のイメージをする必要もある。

発射速度、飛距離など細々な物を頭の中で組み立る複雑な並行作業。


また、全ての人間が魔法を扱えるわけではない。

この世界にはそれぞれに与えられた魔法適正に沿って魔法を扱う事が出来る。

例えば、適正が"火"の一属性だけの場合は生涯において扱える魔法は火に関係するものしか扱えない。

無理に他の属性を扱おうとすると、身体の魔力回路が焼き切れて暴発してしまう恐れがある。 


魔力は大きく分けて、五つの基本属性に加えて複数の派生属性が存在する。

 

海斗は一応、魔力は『1』あるので魔法が全く使えない訳ではない。

が、適正が不明な以上は扱う事は出来ない。


近接戦闘に於いても知識や技術があっても、肝心のステータスが低すぎるので一般人相手にしか通用しない。

魔法など持っての他である。


スキルの方も同じだ。

名前が反応していても、肝心の効果が説明されてない以上…どんな力があるのか、どういう風に発動するのか…全く不明。

つまり、無意味だ。


異世界に来てから一週間。

俺はクラスメイトの男子から執拗な嫌がらせを受けている。

それは海斗が最弱だから、という理由でだ。

女子たちからも日々、嘲笑われる。


海棠先生や有栖や時雨なんかは海斗を気遣うが、海斗にとってその同情や憐れみはこれ以上ないくらいの屈辱でもあった。


ヴァレンヌ団長だけは、海斗に対して無理に気遣う素振りもなく他の勇者達と同じような扱いで鍛錬に付き合ってくれている。

それだけが、救いである。


しかし、居心地の悪さというのはどうしても拭えない。

世界大全を読みつつ、どうせ異世界に来たのなら様々な国々に行きたいなとも思う今日この頃。


やはり、異世界だけの特権である亜人には会ってみたい。

どうやら、この世界を担う一カ国を除いた全ての国は亜人を嫌っているらしい。

大陸の中心部から少し外れた南側にある大海林と呼ばれる場所に亜人族の国々があるらしい。


亜人族は被差別種族であり、人間の国に入ることは基本的に許されていない。

居たとしてもそれは、奴隷などと言った人権の失われた者のみである。


何故、亜人族が被差別種族として扱われているのか。


それは数千年いや、それ以上の時を遡る。

人類と魔族による激しい戦争の中で亜人族は中立という立場を貫き通していた。

しかし、魔族が亜人族の住まう領地を侵略すると脅しを掛けたことで亜人族は人類との戦争に参加した。


その結果。

戦争が佳境に差し掛かると魔族は魔王を討たれて敗北し、戦争に参加していた亜人族もまた人類の敵であるとして激しい迫害を受けることになってしまった。


そして激しい迫害の果てに亜人族は、大陸の中央部にまで住処を追われることになった。

生き残った様々な亜人族は互いに協力し長年の犠牲と努力の果てにこの時代まで種を絶やさずに生き残ることに成功した。


亜人族は、獣族・エルフ・ドワーフなどと言った異世界ものではもはや定番の存在が中心である。


次に、魔大陸にも少しだけ興味がある。


魔大陸に存在する魔族。

全員が高い魔法適性と身体能力を有した人智を超えた存在。

人族や亜人族よりもはるかに優れた力を持つ種族であり数は少ないが、大陸北部に長きにわたって君臨している。


人族とは敵対関係にある。

毎年、幾度となく人類と魔族は紛争を繰り返している。

そして勇者召喚という事態に踏み込んだ原因として"四大魔卿"と呼ばれる4人の大魔族の出現により人類は再び窮地に陥ってしまった。


「うん、魔大陸はなしだね」


大陸の南。

孤立したカッタル商国に行くのもありかも知れない。

その理由は、商国は国境が海に囲まれているという事で海鮮料理や海鮮漁業が盛んである。


カッタル商国に行く手段は主に2つ。

神聖国や帝国の港町に向かい魔導船に乗って行くか、王国の転移魔法陣を利用して行くか。


しかし、海鮮か…カッタル商国には是非とも一度、訪れてみたいものだ。

 

大陸の西側にはメシア神聖国。


名の通り、ガチガチの宗教国家。

この世界を創ったとされる原初神イドラを信仰しており、人間絶対主義を掲げる国。

その為、魔族や亜人族を敵対視していて激しい戦争を繰り返している。

各国に神聖教会が設けられ、イドラ教団の信者は止まる事を知らない。

"聖女"と呼ばれる人物が有名。


東には、インドラ帝国。

最強の武力国家であり勇者の力に頼らずに自国の力だけで何度も魔王軍を撃退する武闘派国家。

また、王国とは仲が悪くよく戦争をしている。

謎が多い国。


数ある国の中でも一番興味を持ったのは…

大陸の中心部に位置する冒険都市アルデバラン。

小さな都市国家であり、国を追放された犯罪者などが行き着く終着駅と呼ばれている。

都市の周りには凶暴な魔物や魔獣が蔓延っている。

また、迷宮が存在しており冒険者達は迷宮に潜りまだ見ぬ秘宝を手に入れるために命を賭けている。


有名なのは、三代迷宮だ。


深い霧が立ち込める湿地帯に存在する死者たちの楽園【屍王の墳墓】。


禍々しく不気味で恐ろしい黒山羊が蔓延る牢獄【黒山羊王の豊穣】。


待ち構えるのは、約束された死と嘲笑の歓喜【蛇竜の楽園】。



いつか、三大迷宮を攻略した最強の冒険者になってみたいものだ。

パタンと本を閉じて、時計を確認する。


そろそろ、鍛錬の時間だ。

気が滅入る…が、この世界で生き抜くためには必死で足掻き続けるしかないのだ。


憂鬱だがいつまでもメソメソしている訳にもいかない。

今は早くステータスやレベルが1でも上がるように努力しなければならない。


だが、クラスメイト達に馬鹿にされて修斗達の鍛錬のサンドバッグにされる位ならこのまま王国図書館に引き篭ってるのもありだな。


「失礼します。カイト、勉学は捗っていますか?」


図書館にヴァレンヌ団長が入ってきた。

そして、海斗の隣の席に腰を掛ける。


「おかげさまで」

「そうですか…カイト、この世界に来てから辛いでしょ?」


ふと、ヴァレンヌ団長がそんな言葉をかけてきた。

それは海斗の心の核心をつく言葉だった。


「まぁ…そうですね」

「どうしようもなくなったら私に相談してください。できる限りのサポートはしますから」

「ありがとうございます。ヴァレンヌ団長は優しいですね…皆んなから慕われる理由が分かります」


本当に心の底から海斗を案じてくれている。

この世界に来てから、ヴァレンヌ団長には世話になりっぱなしだ。


「一つだけ聞いてもいいですか?」

「ん?」

「団長は最後まで俺の味方ですか?」

「ああ、約束しよう…私は最後まで君の味方であり続けるよ」




 

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