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寿司戦隊ニギリンジャーX  作者: 冷詞 奴
EP1 寿司戦隊と日常と
6/7

6話 謎のウイルスと愛しの犬

とある日の昼下がり。イカイエローは庭で、愛犬であるブルドッグ「モンゴウ」と戯れていた。


「たくさん食ってデカくなりや〜」イカイエローはモンゴウの前に、山盛りになった餌皿を置く。大きな体に見合った食欲で、一心不乱に食べ始める。


モンゴウは与えられた餌をペロリと平らげていった。イカイエローはその様子を眺めながら、満足そうに微笑む。庭の木々が青々と茂り、風が心地よく吹き抜ける穏やかな昼下がりの中、二人は幸せな時間を過ごしていた。


すると突然、遠くの方で何かが動く物音が聞こえた。モンゴウもその耳をピンと立てて聞き入っている。

「なんや、野良猫か?」イカイエローも不思議そうにその方向を見やるが、特に何もない。


「まぁええわ。ちょっと待っとき、モンゴウ。お花摘みに行ってくるわ」イカイエローは用を足すために、ベランダの扉を開けて家の中へ入る。


モンゴウは主人が中に入るのを見送った後、庭をウロウロと歩き回り始めた。その時、再び遠くで物音が聞こえた。今度はもっとはっきりと、何かが動いている音だった。


モンゴウは興味津々でその方向を向いて耳を澄ませると、そこには見知らぬ犬の姿があった。茶色い毛並みの小型犬だ。モンゴウは少し警戒しつつも、興味深そうにその犬を見つめていた。


イカイエローが戻ってきたとき、庭は静寂に包まれていた。しかし、地面には血痕が広がっており、モンゴウの姿が見当たらないことにイカイエローは動揺する。


「モンゴウ?どこにおるんや?」イカイエローは庭を探し回りながら呼びかけたが、モンゴウの姿は見当たらない。嫌な予感と不安が胸を締め付ける。


すると、遠くの方で小型犬の低い唸り声が聞こえた。イカイエローはその方向に目をやると、そこには見知らぬ小型犬がじっと彼を見つめていた。その口元には血のしみがあり、丸い眼は凶暴な光を放っていた。


「この犬が……モンゴウを襲ったんか?」イカイエローは悲しみと怒りが入り混じった声でつぶやいた。彼は慌てて小型犬の方へ走り出したが、茂みの奥へと素早く姿を消してしまった。


モンゴウは犬小屋の裏でぐったりとしていた。幸い、まだ息はある様子だ。

「すまんモンゴウ……ワイが遅くなったばっかりに……」イカイエローは目に涙を溜めながらモンゴウを抱き上げ、慎重に家の中へ運び込む。


モンゴウは血だらけで、弱々しくもイカイエローの声に対して微かに尾を振った。明らかに重傷を負っている様子だった。


「ワイがちゃんと見とれば…こんなことには……」イカイエローは力無い声で呟きながら、モンゴウを優しく抱きしめた。


「せや。はよせんと……!」

慌てて電話を取り出し、近くの動物病院に連絡を取る。向こうで医師の声が聞こえた。「すぐに来てください。状態を見ないと、どれだけ深刻な傷か判断できません」とのことだった。


イカイエローはモンゴウを車に乗せ、急いで動物病院に向かう。車内は静かな緊張が漂い、ハンドルを握るイカイエローの手は震えていた。


病院に到着し、モンゴウはすぐに診察室へと運ばれた。医師たちは丁寧に診察を行い、モンゴウの状態を調べていた。しばらくの間、イカイエローは待合室で祈るように時間を過ごした。


診察室の扉が開くと、医師が静かにやってきた。「重傷を負ってはいますが、今のところ命には別状はありません。ただし、手術と治療が必要です」と告げられた。


イカイエローは深い安堵と同時に、強い責任感を感じた。彼はモンゴウのために何ができるかを全力で考え、決意を新たにした。



イカイエローは、医師の指示に従いながら手術の同意書にサインし、必要な手続きを済ませた。モンゴウが手術室に運ばれていくのを見送り、再び待合室で待つこととなった。時計の針はゆっくりと進み、時間が経つたびにイカイエローの不安は募るばかりだった。


手術は数時間に及んだ。やっとのことで医師が待合室に戻ってきたとき、イカイエローは息を呑んで医師の言葉を待った。


「手術は無事に終わりました。モンゴウは現在、回復室で様子を見ています」と医師は穏やかな口調で告げた。


イカイエローはその言葉に胸をなで下ろし、感謝の意を込めて医師に深々と頭を下げた

「ありがとうございます、ほんまに…」


「ただし、今後も経過観察が必要です。しばらくは入院が必要になりますし、後遺症が残る可能性もあります。リハビリも必要になるでしょう」と医師は続けた。


イカイエローはそれを聞いても、モンゴウが生きているという事実だけで十分だった。彼はモンゴウのために全力でサポートする決意を新たにし、医師に改めて礼を述べた。


家に着くと、イカイエローは柔らかなクッションの上にモンゴウを慎重に下ろす。モンゴウは久しぶりの家の匂いを嗅ぎ、リラックスしているようだった。


「おかえり、モンゴウ。ここがやっぱり一番やな」とイカイエローは微笑みながらモンゴウを撫でた。


「それにしても……あの犬は一体何やったんや」

怪訝そうに呟きながら、イカイエローはふとリビングのテレビをつける。昼のニュース番組が流れ、キャスターが深刻な表情で何かを伝えている。


「最近、寿町で動物が突然凶暴化する事件が増えています。特に犬や猫が理由もなく攻撃的になるケースが多発しています」とキャスターが話すのを聞き、イカイエローは驚いた。


「なんやと……?」

 イカイエローは画面に釘付けになった。


ニュースは続けて、専門家のインタビューを放送した。動物行動学者の男性が深刻な表情で説明している。「現在、原因は不明ですが、何らかのウイルスや環境要因が関与している可能性があります。今後の調査が必要です」


イカイエローはその言葉を聞きながら、モンゴウのことを思い返した。

「もしかしたら、あの小型犬もこの影響を受けていたんかもしれん……」


その夜、イカイエローはモンゴウのそばで眠れぬ夜を過ごした。彼は何か行動を起こすべきだと感じたが、具体的な方法が思いつかないまま朝を迎えた。


翌日、イカイエローはモンゴウを動物病院に連れて行き、再度診察を受けた。医師に相談し、モンゴウが襲われた経緯やニュースのことを話すと、医師は深く頷いた。


「実はここでも同じような症例が報告されています。彼の傷も通常の犬同士の喧嘩とは異なるものでした。今後、更に詳しい検査が必要かもしれません」と医師は説明した。


イカイエローは医師の言葉を胸に刻み、モンゴウのためにもこの問題に取り組む決意を新たにした。


その後数日間、動物病院の医師たちはモンゴウや他の動物の検査に集中した。専門家たちも、動物の凶暴化の原因を突き止めるためにあらゆる手を尽くしていた。


ある日、医師の一人がイカイエローに声をかけた。「イエローさん、少しお時間をいただけますか。興味深いデータが出てきました」


イカイエローは医師に案内され、検査室へと向かった。そこで見せられたのは、数匹の凶暴化した動物たちの血液検査結果だった。


「これを見てください」と医師は血液サンプルの結果を示しながら説明を始めた。「これらの動物たちの血液には、共通して異常なウイルスが検出されています。このウイルスが動物の脳に影響を与え、攻撃的な行動を引き起こしている可能性が高いです」


「ウイルスが原因やったんか……」イカイエローは驚きと共に納得した。


「さらに、このウイルスはかなり感染力が強いことが分かりました。他の動物に広がる危険性もあるため、早急な対応が必要です」と医師は続けた。


イカイエローはその言葉に危機感を抱き、すぐに行動を起こすことを決意した。

「すぐに何か手を打たなあかん。ワイら戦隊の出番かもしれんな……」



「なるほど。それは深刻な問題だな」

サーモンブルーがコーヒーをひと口すすり、冷静に言う。


「せやろ?何かしらの影があるのかもしれん」

イカイエローは戦隊の仲間に協力を求めるべく、まずはサーモンブルーと喫茶店で落ち合うことにしたのだ。


「なるほど。それは深刻な問題だな」

サーモンブルーがコーヒーをひと口すすり、冷静に言う。


「せやろ?何かしらの影があるのかもしれん」

イカイエローは戦隊の仲間に協力を求めるべく、まずはサーモンブルーと喫茶店で落ち合うことにしたのだ。


「他のメンバーにも連絡を取った方がいいな。この問題は我々全員で取り組む必要がある」

サーモンブルーはスマートフォンを取り出し、他の戦隊メンバーにメッセージを送り始めた。


数時間後。戦隊の秘密基地、もとい寿司屋に全員が集まった。レッド、ブルー、ピンクが揃ったところで、イカイエローがこれまでの経緯を説明し始めた。


「急やのに集まってくれてありがとな。ウイルスが原因で動物たちが凶暴化してるってわかったんや。これ以上被害が広がる前に、ワイらで何とかせなあかん」


レッドが頷きながら言った。「うむ。まずは、ウイルスの原因を突き止める必要があるな。それさえ分かれば俺たちでも何とかできるはずだ」

「医師たちの協力も頼もう。彼らと情報を共有しつつ動くのが良い」

サーモンブルーが続けた。


「よし、調査班を編成する!俺とブルーは現地での調査を担当。イエローとピンクは、病院や施設と連携してウイルスの解析を頼む!」

マグロレッドがきびきびと指示を出す。


「了解!モンゴウのためにも、全力を尽くすで」

イカイエローが力強く答えた。


こうして、寿司戦隊は動物凶暴化の原因究明と解決に向けて動き出した。まずは動物病院と連携し、ウイルスの詳しい解析を進めるためにサンプルを集める。レッドとブルーは現地での調査を開始し、ウイルスの発生源を探る。


数日後、イエローとピンクから重要な報告が入った。「ある地点に集中して、異常に多くの動物が凶暴化してるみたいや。その周りを徹底的に調査したんやが……地下に秘密施設がある可能性が高い」


「その施設がウイルスの発生源か……!」

マグロレッドが緊張した面持ちで言う。


「全員で現地に向かおう!ウイルスの発生源を突き止め、止めるためにッ!」


戦隊は現地に向かい、秘密施設への侵入を試みた。



4人は、秘密施設があると思われる地点に到着した。周囲は廃工場のような雰囲気を漂わせており、施設の入口は錆びついた鉄扉で覆われている。


「ここがその施設か……!」

マグロレッドが辺りを警戒しながら言う。


「間違いない。この付近で異常なデータが集中している」とサーモンブルーがデータ端末を確認しながら答えた。


「なら、早速突入やな。気ぃつけていこうや!」

イカイエローが先頭に立ち、錆びついた鉄扉を力強く押し開けた。中は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。


4人は慎重に進み、奥へと進むにつれて異様な装置や試験管が並ぶ部屋にたどり着いた。壁には何枚もの研究メモが貼られており、内容はウイルスに関するものだった。


「見て!ウイルスの培養装置がある……やっぱりここが発生源みたいね」ハマチピンクが一枚の研究メモを指し示しながら言った。


「この研究、かなり進んでいるみたいだな。どうやらウイルスの特性を利用して何かを企んでいるようだ」

サーモンブルーがメモを読み取りながら顔をしかめた。


その時、突然施設全体に警報が鳴り響いた。

「侵入者発見。侵入者発見。セキュリティシステム起動」機械的な声が響き渡る。


「やばい、見つかったか!早くウイルスのデータを確保して脱出するで!」イカイエローが急いで装置のデータを端末にコピーし始めた。


「侵入者ヲ排除セヨ」

数体の警備ロボットが現れ、戦隊メンバーに向かって攻撃を開始した。レッドが素早く反応し、ロボットを一撃で倒す。


「急げ、イエロー!」

マグロレッドが叫ぶ。ロボットは4人の息の根を止めるため、際限なく湧いてくる。


「もう少しや……よし、コピー完了や!」

イカイエローが端末を手に取り、他のメンバーに合流した。


「出口はこっちよ!」

ピンクが案内し、4人は施設の出口へと走る。ロボットたちの攻撃をかわしながら、何とか施設から脱出することに成功した。


外に出ると、夕陽が地平線に沈みかけていた。

「ふぅ、何とか脱出できたで……」

イカイエローが安堵の息を吐く。


「ウイルスのデータを解析して、すぐに対策を立てよう。これ以上被害を広げさせるわけにはいかない!」

レッドが熱く燃えたぎる決意を込めて言った。


【次回予告】


ウイルスの発生源を突き止めた寿司戦隊は、解決に向けて奔走する。しかしそこには、彼らを狙う悪意の影があった……果たして戦隊は、悪を打ち破ることが出来るのか。 そして愛犬モンゴウの運命は!?次回もお楽しみにッ!!

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