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第一話 蔑まれるべきではない潜在的な英雄

 どう報告書を書こうか。


 先日、ヌカ市で市営銀行への強盗事件が起きた。元々治安が良いとは言えない地域だったので注意は払っていた。

これだけならまだ良い。何が良いのかというと、起きた事をそのまま報告書に書けば良いのだ。


 問題は、強盗犯の見当が全くつかない事だ。警備兵は殺され目撃者もいない。もちろん手配状を出し、今も軍による捜索が続いているが全く収穫がない。


 ヨバムコはもう捜索打ち切りを提案している。私に

「市内で強盗事件があり、警備兵が殺されました。銀行内の貨幣はすっかり無くなり、犯人は未だ逃走中ですが捜索はもう打ち切ります。」

とでも書かせるつもりなのか。


 こんな未解決事件、小さなものも含めば確認できていないものは沢山あるだろう。迷宮入りと言えばそれでおしまいだが、私の職と名誉はそう誤魔化しはきかない。


 まさかヨバムコと軍が加担しているのではないか。軍の上級幹部が関わっているのなら武力で銀行を制圧することなど容易だろう。


 …いや、確証も無いのに疑心暗鬼になるのは、謎をさらに増やすだけだ。


 私は世紀の大天才では無いし、ミステリー解決の達人でも無い。しかし、早く犯人を見つけ出さなければ本当に迷宮入りしてしまうことになる。


 早く解決しなければいけない。



ー「総督、ムントームラク様からお手紙が届いております。」

午後9時過ぎのことだった。

「分かった。」


 ムントーは元々別の植民地の駐屯兵、それも上級将校だった男だ。しかし汚職の罪で逮捕され、釈放された今はこちらに来て肉屋をやっている。


 兵が手紙を机の上に置き退出すると、私はすぐに封を開けて読み始めた。


 手紙の内容は大まかに言うとこうだった。

「・ヌカ市の強盗事件の重要な手がかりを知っている

 ・ここで多くは話せないが、少なくとも駐屯軍が関わっている

 ・もしかすると反政府勢力も関わっているかもしれない

 ・詳しく話したいから今度会いたい」


 本来であれば一般市民が私にこんな手紙を届けること自体不可能だが、友人の手紙だけは通しているためムントーとは連絡を取ることが出来る。


 一般的な判断力のある人間、少なくとも国家規模の集団における上位責任者であるならば、こんな男の戯言に付き合う暇などない。そう考える人間が多数派だろう。


 だが私は彼に一定の信頼を寄せている。なぜなら、彼は様々な政治的グループと繋がりを持っているからだ。彼のパイプは反政府勢力などの敵対勢力や、植民地政府非公認の武装組織にまで繋がっている。


 もしかしたらそういったグループの中には、ムントーと私が繋がっているということを察している者もいるかもしれない。だがそれは私の考える問題ではない。



「もう、ない。」

俺はイセユの実がいっぱいに入った籠を運びながら、ムントーに言った。


「もうないか。こっちもないわ。」

ムントーは答えた。

「倉庫行こう。」


 明日は同僚が市へ出て倉庫のものを売る。


 毎日暑い日も寒い日も農園で果物狩りや畑仕事。当たり前だが死ぬまでやりたい仕事ではない。みんなだってきっとそう思ってるはずだ。


「ムントー、もうご飯食べない?」

「じゃあ飯食うか。」



ー食堂のテーブルにつき、やけに硬いパンをスープにつけて食べる。


「なんか、サビイトじゃ農奴解放令が出されたらしい。」

「優しい王様。」

「まあ、優しいっていうかまあ、うちとかが酷すぎるだけだから。」


 ムントーは反骨精神の強い男だ。いつかうちの領主を殺して、ほかの領主の農奴もみんな集めて革命を起こすことが夢だそうだ。


「サビイトがうちに攻めてきて、領主みんな殺してくれればいいのにな。」

こういう事を考えてるのは別にムントーだけじゃないだろう。

「そんなことする軍なら俺たちも殺されるだろ。」


ー「はあ。」

硬い木のベッドに布を敷いて横になる。

何で頭のいい俺が農奴に、実際差別的に使われる農奴という言葉を自分自身に使うのは納得できないが、ならなければいけないのか。


 俺ぐらいの頭があれば役人や学者にだってなれる可能性がある。いや、なれるはずだ。優しく性格もいいから部下からも慕われるに違いない。


 それを考えると俺が今置かれている状況がいかに不当であるかよく実感できる。実際ここの農奴たちは、俺よりも愚鈍でけちで頭の回らない奴らしかいないんだから。


 前にうちの領主様は

「望んだ職業になれなかったから農奴になるんだろ。」

なんてぬかしてきた事がある。だがこれには半分賛同できない。


 確かに俺は国の役人登用試験に落ちた。何種類か受けていたのだが、一つも合格することは出来なかった。


 俺は嫌がったが、両親の勧めで徴兵試験を受けた事もある。だが俺の軽くて枝のように細い体格のせいで常備軍の兵士には向いていないと言われた。俺はそれをいいことに親を説得して、兵士になることをやめた。


 このまま親に頼って職に就かず生きていても、親が死んだら俺も共倒れになる事は目に見えていた。


 仕方がないので商人になる事にした。だが商売の才能には恵まれなかったらしく常に赤字だった。それと商人の仕事は体力的にもきつく、憂鬱な日々が続いた。しばらくして俺は商人をやめた。


 今度こそはと私営の職業会館に駆け込み、俺に向いている仕事をと頼んだのが運の尽き。ここを紹介された訳だ。最初は俺も冗談かと思った。というか冗談であって欲しかった。


 子供の頃から優秀、友達には羨望の眼差しを向けられ、先生達には大学にも行けると言われた。実のところ役人登用試験の勉強はあまりせず遊んでばかりいたが、それでも他の人達、それこそ職業会館の奴らよりは賢いはずだ。


 そんな人物に

「あなたは役人になれる見込みが薄い。もう何年も勉強する労力と受からなかった時のリスクを考えると、役人を目指すのは諦めた方がいい。それより早急に一人で食べていける職を見つけるのが先だ。」

なんて、思慮の浅い間抜けな野蛮人の子供でさえ言わないだろう。


「もう一度試験を受けてみて駄目だったら考えましょう。親には一緒に説得しましょう。」

とか

「これまで勉強してきたことを活かして教師になるのもいいですね。」とか色々提案の方法はあるはずだ。よりによって最悪の選択肢を選ぶ必要は無いはずなんだ。


 全くもってふざけている。たが両親はこの勧めに乗ってしまった。しまいには、ここで働かないなら生活の保障はしないとまで言う。つまりは出て行けと言うことだ。すでに自立を失敗している俺は仕方なくその勧めに従った。


 それからは毎日朝から晩まで農作業、雑用、市での販売。たまの休みもこれだけの労働で疲れた体を癒すのには不十分だ。もはや監獄の方がましじゃないのか。


 だが俺がこんな生活から抜け出すにはまず領主を倒す、ひいてはこの国の社会をひっくり返すような事が起きないといけない。だから早く、少なくとも俺が生きてるうちに、革命が起きてほしい。革命がなくとも農奴制は廃止にしてほしい。


 反乱自体は起こってるらしいが、未だに国家を揺るがすほどまでのものはないらしい。というか全て国軍に鎮圧されてるんだな。


 

 こんな事を考えているから睡眠時間が減るんだ。もう消灯時間は過ぎている。


 替えの服を体に掛け、目を閉じる。



今回初めて小説家になろうで小説を書きました!

小学生の頃にうごメモで謎小説を書いてましたが、作文力は全然なので…小学生の読書感想文レベルのものしか書いてきませんでしたw

ちなみにプロットどころかキャラの名前や背景も全て本文を書きながら考えてます(((

↑この文体、小学生の頃に「w」とか「(」とか付けてうごメモに小説上げてたなと思い出しながら書いてます。


この小説は、時代的には近世から近代ぐらいの世界観を主軸として書いていこうかなと思ってますが、過去や未来の物語も書くかもしれないのでその限りではないです。

初めは「近世イスラーム世界を参考にオリジナルの世界線で書いたろ!」と思ってたのですが結局農奴制やら植民地やらでヨーロッパ寄りになってしまいましたw(*^ω^*)


一応戦闘シーンを出す予定なのでR15設定にしました。これ皆さんどうしてるのか気になります。どのくらいまでがR15表現なのか。


あと連載小説なのでやる気がある限り続きます!それでは!

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