プロローグ
ミアンにアンデッドが攻め寄せ、リリアルが救援に駆け付けオリヴィ=ラウスと『彼女』が出会う少し前の話。
サラセンのソロモン美麗帝の度重なる侵攻により、大原国は事実上、ほとんどがサラセンの領土若しくは保護国となる。
帝国皇帝の支配下にある東方大公領の都市ウィンを包囲し、西へ軍をすすめようと考えた若き日の皇帝は、その軍をとある英雄の活躍で頓挫させた。
その英雄は、大沼国の『スラヴァ総督』となり、かのサラセンの統治に抵抗する敗残兵を集め、その南辺にある城塞を守っている。
先代帝国皇帝が死去した報を受け、美麗帝は老いた体に鞭打ち仇敵である『ニコロ・シュビッチ』を倒し、帝国の前哨拠点であり多くの反乱兵が集まる城塞を落し、沼国内に潜む反サラセンの勢力をも挫こうとしていた。
迫る軍勢は、過去最大の遠征軍に匹敵する十万の戦力、対する城塞に籠る兵は僅か二千数百。
その昔、ウィンで共に戦った英雄の為にオリヴィはビルと共にその城塞に駈けつける。英雄の依頼を叶えるために。
ソロモン美麗帝は名君の誉れ高いサラセンの君主。それまでの帝国の築いた軍・官僚機構・法体系を駆使し、内海沿岸に広がる巨大帝国を形成する。が、帝都から遠く離れた地域も多く、総督を置き間接的な支配を行わざるを得なくなり、その国土の維持コストが大きな負担となりつつあることは古の帝国と同様となりつつあった。
ニコロ・シュビッチは四十年前の帝国都市ウィンを包囲した美麗王の包囲網に大きな打撃を与え、退却のきっかけを与える。実際はサラセン軍の冬季の野営及び、兵站の枯渇を嫌い退却したものだが、帝国は『救国の英雄』を必要としており、それに利用された形でもある。
年齢はオリヴィより少し下であり、ウィン包囲戦ではかなりオリヴィの世話になった。軍功のかなりの部分はオリヴィ達の手柄を押し付けられた形であり、その結果の美麗帝の仇敵認定に、オリヴィも責任を感じている。
伯爵令嬢と結婚し、かなりの子だくさんでもある。シュビッチ家は大沼国南部において有力な貴族の一族でもある。蓄えた財貨を担保に、オリヴィに城を爆砕するに足る火薬の入手を依頼する。
オリヴィはその依頼を受け火薬を手に入れ届けると同時に、最後まで籠城に付き合うと約束する。
英雄の死をもって、サラセンに降らないことを大沼国と帝国の民の心に刻み付ける為に。
シゲットは『島』を意味する古語。川の氾濫原に生まれた沼地に浮かぶ島に要塞を建設し、その前に「旧市街」「新市街」と建設された。要塞部分は石塁により守られているが、市街は共に土塁と木柵で防御されているに過ぎない。
最大の防御は沼に囲まれ、攻め口が一箇所しかない事だが、大軍により攻囲された場合、保持することは困難だと考えられていた。
【作者からのお願い】
「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。
よろしくお願いいたします!
【本作の元になるお話】
『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://ncode.syosetu.com/n6905fx/
下部のリンクから移動する事も出来ます。