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2.ワンチャン俺TUEEEE出来ますか?

ノートには数ページにわたってPhoenix校の生徒3人、つまりこの物語の主役級3人が授業を受け、授業を終えて廊下を移動し、その途中にMonstrosity校の敵キャラ3人とエンカウントして、という様が綴られている。……うーん、見るに堪えない文章力!さておき、ノートは何ページか書き込まれたのちしばらく途切れて、白紙のページが続く。いや、なんかプロット立ってた気がしたし友達にこの後こうするんだ!って話はした気がするのにな。こんな少ししか書いてなかったんだ。


ペラペラと白紙のページを捲っていくと、かなり最後の方にまた文字が現れた。なになに、ドラゴンが出てきとる。突然のドラゴン。ラスボスか?最後のオチだけ決めてたタイプか?プロットガバガバですね旦那。…あ?てか6人手ぇ組んでるよ。敵対してたんじゃなかったん。まぁ、アレね、よくあるやつね。より強い敵が現れると手を組むんだよね。分かりみが深い。5万回見た。


まだ後ろには数ページ残っているけど、ラスボスシーンも途中で止まってるな。しかも、途中から字が変わっている。あれ、ここ印刷……だよな。書き込まれた最後のページは、拙い字で数文書かれたあと、真ん中あたりに数文今の私の字が入る。そしてその後、何故か印刷したような綺麗な明朝体でまた数部続いているのだ。えーっと……


『「ちょっと、どこ行くの!?」

突然ドラゴンと反対の方向へ走り出したヒースにサイネが声を上げる。

「対抗できるものがないんだ、あれを止められるものを召喚する!」

叫びながらヒースは走り去ってしまった。』


ここが最近の私の字にそっくりな部分やな。待って?サイネとかヒースとか誰だっけか。サイネは確かこれの主人公で、まいいや後でもっかい最初のページ見よ。そんでこの後しばらく続く残った5人の会話が印刷明朝字。思いきしドラゴンに火を吐かれて、セカモアが被ったところで終わっている。絶体絶命じゃん。……でセカモアは誰だっけ。


「ほんとにろくすっぽ覚えてないなぁ…『炎がセカモアを包み、』……ここで止める、普通。」


誰が聞いている訳でもないけど、指でなぞりながら最後の文字を読み上げる。はー、埒が明かないな、記憶がクソほどない。我ながら切なくなるほどの鳥頭。いいや最後手ぇ組むってんならMonstrosity校に拾ってもらおう。野営なんて無理だし。そう思って一度本を閉じた瞬間、


一瞬、ほんの一瞬だけ視界がぐにゃりと歪んだ。


…何いまの。何事もないようにまた風の音が耳に届く。私は座っていた状態からやっぱりノートを開く直前の体勢に戻っていて、場所も門から離れて最初の場所に移動していた。でも確かに、それだけじゃなくて、さっきと違う…なんか今景色が波打ったんだけど。またこの本?恐る恐るもう一度本を開いて、最初から何か変わったところはないか点検していく。うーん時止めまくりだな私。にしてもこの無音は何度やっても、気持ちが悪い。


一見何も変わっていないように見えたんだけど、最後の明朝体のところが少しだけ増えていた。火で倒れたセカモアに、ウィズが駆け寄るシーンが追加されてる。うーーーんだから誰なのーー???カタカナにしときゃカッコイイとか思ってたんやろワレ、カタカナ覚えづらいんだよだから世界史落単ギリギリやったんやろがい私ぃ!!!!!!!!


というか、そっかー……この本勝手に文字が増えるタイプかァ…。なんかそういう怖い話映画にあった気がする。もういいや、難しいことは衣食住を確保してから考えようそうしよう。だって増えても私止め方知らないし。改めてノートを閉じて、ラスボス城…じゃなかったMonstrosity校に向き合う。うん、普通に怖い。だれもドラキュラの住処になんか行きたくない。ルイー〇マンションに見えてくる。向かい風もいい演出してくるし、ほんと……いやほん……これ学校なの……?デザインミスってるでしょかつての私…


「そこで先程から何をしているんです。」

「ンギャア!?!!?!」


耳元で声がして、咄嗟にめちゃくちゃ酷い声をあげてしまった。なんなら10cm跳ねた。振り返ったそこにいたのは、


「ロッt……」

「はい?」


eンマ、じゃなくて、いやマジで絵に書いたような古き良き教育係みたいなおば様。あぶねぇ思わず口に出すところだったわ。あ、でも人の良さそうな笑顔だ。


「え、と何を、と言いますと。」


挙動不審のお手本みたいにジリジリとおば様から距離を取っていく。ここで本を開いて時を止めたところで本を閉じたらここに戻ってきちゃうことはさっき学習したんだ。適当に誤魔化して、あわよくばこのドラキュラ城にいれてもらわないといけない。


「人が倒れていると彼から聞いたのです。それから、その倒れていた人が立ち上がったかと思えばぽかんと我が校の門を眺めている、とね。」


おば様の指さす先を見れば、先程からうるさく鳴いていた鴉がじっとこちらを見ている。ほぁ〜おば様の使い魔的な?ヲタクこういうの大好き〜〜!!


それにしても本当に本を見ているあいだ時が止まっていたなら、鴉は私が立ち上がって、泥をはたいて、本を拾い上げて、そんでついさっき門と睨めっこしていた、っていう所しか見てないことになる。私が本を開いたり閉じたり、そこらを走り回ったりしてる所は認知されてないって事ね。なるほど助かる。


「で、どうしたんです?我が校に何か用が?」

「えー…と。」


もごもごと口ごもって目が泳ぐのが止められない。何?私どこポジでこの世界に来たの?これ下手な事言って大丈夫?答えに窮する私を見て、おば様の眉間にシワが撚った。ひぇ、教育係的迫力がめちゃくちゃ増すね。


「まさか、貴方Phoenix校の生徒じゃあないでさょうね?」

「違います!転校生、転校生の河中楓です!」


Phoenix校の生徒はまずい、スパイかなんかと思われる。お互いの生徒が敷地はいるだけでフルボッコにされる的な感じだった覚えがある。実際さっき読んだ冒頭で主人公s6人ボコりあってたし。…ん?慌てて口走ったけど、いや、これ結構まずいことをいったのでは?転校生なんていなかったし、本名を思いきし名乗ってしまったし、おぉん?早速やらかし、あれ?おば様の顔が最初の笑顔に戻った。


「あぁ、聞いていますよ!カエデさん!」


……は?

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