5話
仕事が忙しくなかなか更新できませんでした。次は長くとも2週間後には更新します
さてこの刀、銘は「薄緑」といったか。源義経が使っていた刀と同じ銘だが……日本に実物はあるだし別物か?まぁ声を発することができる時点でまともな刀ではないことは確かだな。
「それで?あの獣に唯一対抗できる武器と言っているが本当か?俺は刀なんて使ったことないし5,56ミリも通用していないんだぞ?」
刀は使いこなせる人が使わないと下手な剣よりも切れないって聞いたことあるし。ましてやあの巨体に肉薄しろってことだろ?
――なに、案ずるな。長い時間放置されていたせいで大気から魔力を吸い取りすぎてな、いまや私はそこらの霊刀や妖刀よりもよっぽど切れるぞ。あの獣の毛は魔力で守られている。私ならその魔力を吸い取るなり切り裂くなりして切ることなどたやすいことよ
でもなぁ、あの巨体に肉薄して致命傷を与えるのは相当難しいな。負傷覚悟でやってもあの巨体からだと1撃もらっただけで終わりだぞ。
――不安そうだな、近づくのが怖いか?でもそれ以外に方法はない。ならばいやでも私であの獣を倒すしかないんじゃないか?
なるのほど、おどしか。ついに本音が出たな、それほどまでに誰かに使われたいか。こいつは妖刀のたぐいじゃないよな……?まぁなにはともあれこいつの言う通り嫌でもするしかないか
――いい顔だ、覚悟を決めたようだな。なら手始めにこの空間から出るか。ほれ、適当に降ってみろ、素振りじゃ素振り
言われるがままに刀を振るった。するとその空間にひびが入りちらりと見える向こう側ではあの獣が俺を探すように歩き回っていた。
――どうじゃ?振ったところの魔力を喰ってみたんだが
なんかマジックみたいで面白いな。これならいける気がしてきたぞ
ギュオアァァァァ
元の場所に戻った瞬間気づきやがったよ、はなよすぎじゃないか?そのまま突進してきている。逃げ場などない、ならば立ち向かうのみ
「っあああ!」
獣に向けて薄緑を構えながら走り出す衛、ぶつかる直前にスライディングの要領で下から切り上げつつ獣の下を通過した
獣の腹から噴き出る血、あふれ出す臓腑
あまりの痛みにたたらを踏む獣に対し衛は追い打ちをかけるように後ろ脚を切り飛ばす。たまらず転倒しもだえる獣、明らかに致命傷になりうる腹への1撃、そして起動両区を奪う足への1撃。もう勝負は見えてい……
「手負いの獣が1番危険ってね、確実にに仕留める。」
そういうともだえる獣の首を撥ねる。獣は一瞬震え、力が抜けていった。
――いった通りだろう?私で倒せたじゃないか、それにしてもこいつなかなかの魔力を持ってたな。おまえの10倍はあったぞ。なんでこんな森に現れたのか……
「まったくもってその通りだ。この近辺は何もないのに……。さて、獣も倒したことだしおまえは元の位置に戻すか。」
こんな意思を持った妖刀かもしれない刀なんて怖いし切れ味が良すぎて持て余す。俺にとっては過ぎた武器だ。
――いや待て待て待て、なぜ私を戻そうとする。もうあんな暗くてじめじめしたところは嫌じゃ!一緒に連れてってくれ!
やだよ、そこらの武器よりも性能が違いすぎて持ってるだけでいらぬ争いとか巻き込まれそうだし。
「めんどくさいことに巻き込まれそうだから嫌だ」
――そんなご無体な、なにとぞ!なにとぞ!……ん?お前ひじから血が出てるぞ?ほれ、ちょっと刀を当ててみろ
治癒効果でもあるのかと思い刀身を傷口に当てた。その瞬間刀が傷口から出ている衛の血をみるみるうちに吸いあろうことが体内の血も少し吸った。
「な!?お前何をした!!」
そう叫び刀を投げ飛ばそうとするが離れない。
……離れない!?どういうことだ、呪われたか!?やはり妖刀だった!?
――くくく、かかったな!これで私とお前は契約完了。私はお前から離れることができないしおまえも私からは離れられない。まぁ離れられるとしてもせいぜい1丈といったところか
やられた、1丈つまりは3メートルしか離れられないのか、やられた!これで持ち運びせざる負えなくなる
「それで、契約で何か影響はあるのか?それと目的は?」
――特にこれといった影響はないぞ。少し身体能力が上がって私とお前の間にパスのようなものがつながったくらいだな、おそらく。目的か、外を見て回りたい。これでは不十分かの?
「……そうか、それで納得しよう。契約の影響も悪くはないみたいだしな。」
さて……倒した獣はどうするか、大きすぎるし、でも肉はうまそうだな……
薄緑 源義経が使っていた太刀で膝丸など様々な呼び名がある。現在は箱根神社に所蔵されている。自らを薄緑と言っているあの刀は本物かはたまた……?