第一話 転生
第一話
白い空間に眠たげな黒い髪の美しい少女がいる。
目の前にはにこやかな微笑みを携える老人。
「私死んだ?」
「そうだねえ、死んだね」
少女はふむと頷くと目の前の老人に声をかける。
「死因はトラックに突っ込まれそうな子をかばったから?」
「そうだね、善行をしたと同時に命を失った」
少女はふむとまた頷くと
「それで転生?」
「…そうだね、転生だけども君は動揺しないのかい?」
少女は肩をすくめる
「別に私はただの孤児だし、そこまで未練はないわ」
「…なるほど」
老人はふむと頷く。
「君の人生はどうやら空虚だったようだね、それは実につまらなかったろう」
「そうね、つまらなかったわ」
「トラックに轢かれたのはその子を助ける以外にも理由があった?」
「そうね」
「転生という単語があっても通常は別の世界にいくためにそんな手段はとらないけどね」
「なんでもいいから別世界に生きたかったし飽きたのよ、人生に」
「若いのによく言う、まあいいだろう、私も面白い子に会えたようだ」
老人はにこやかに微笑む。
「次の転生先は私の娘が管理する剣と魔法の世界にでもしようか」
「それは楽しみね」
「ステータスやらスキルやらレベルやらある、まあゲームのような世界だな」
「好きよ、ゲーム」
「若者達の影響で神達の間でもそういう世界を作るのが流行っているからな」
「人間ぽいのね」
「人を作り出したのは神だからね」
老人はにこやかに笑う。
「さて改めて自己紹介しようか、私は原初の創造神の一柱グランディオ」
「あら、すごく偉い神様なので私は真神キサラよ」
「うん、よろしく、まあもっとも君の情報はもう察知済みだがね」
「まあ神ならそうよね」
「君は人間らしくないな、そこは怒っていいんだよ」
「グランディオさんは私を別の世界に連れてってくれるんでしょ?怒りなんてしないわ」
「神様にさんづけか、ますます面白い子だね、私の存在にも耐えられるのも面白い」
「そうなのかしら」
「普通なら委縮しちゃうからね」
グランディオはにこやかに微笑む。
「気に入ったよ、キサラちゃん、私の出来うる全てで君の人生を彩り豊かにしてあげようじゃないか」
「あら、それは嬉しいわ」
「ああ、世界最強かつ最凶の存在にしてあげよう、娘にやたらちょっかいを出してくる馬鹿者達もいるからね、助けてあげてくれ」
「いいわよ、楽しい人生が送れそう!」
「ああ、大いに楽しんでくれたまえ」
グランディオを微笑みながらキサラの額に指をかざす
「君の可能性に限界がないようにしといた、あらゆる属性とあらゆる能力を扱える力も、そして私の加護もね、後、色々詰め込んだから、後で確認したらいい」
キサラの体が透明になっていく
「君を育てるのに一番適した父親となるべき男が住む場所に送る、第二の人生を是非楽しんでね」
「ありがとう!グランディオさん!」
グランディオをにこやかにキサラが消えるのを確認すると
「キサラちゃん、君は神をも殺す存在になれる、私はその可能性を見た、数多の驕れる神を殺してくれ…、そう私の同胞の創造神さえも」
どこか苦悶に満ちた表情で静かに告げた。