第十一話 強襲
第十一話 強襲
「マジかよ!!」
いつもならば活気あふれる港町なのに、今は町人は一人もおらず静寂につつまれている。
たった一人の大剣をもった黒いコートと黒いハットを被った全身黒づくめの褐色の男が一人天を仰いでいた。
相対するのはこの町の町長マーロック=ミネルバ、町人特有の木綿の服を着ながらも強大な力を見ただけで判別できそうな豪快な笑みを浮かべるスキンヘッドの男。
どちらも190は超える大男でどこか海賊でも言えそうな強面だ。
「仕方あるまい、今ここにいるのは元Sランクの俺とAランク[闇烏]ブラックマンの貴様しかおらぬのだから」
「こんだけでランクオーバーの堕神と戦うのかよ」
ブラックマンと呼ばれた男は苦虫を噛みちぎったかのような顔をしながら言い返す。
堕神とはかつて神だったものが知能や全ての能力を著しく退化させた凶悪な生物の総称で、かつて人天魔戦争で先兵を務めた下級神達の成れの果てとされる、一度死して尚も生存を願いあらゆる邪気を吸い属性を反転させた魔なる堕ちた神、化け物となり下がったとしても神としての能力はむしろ神であった時よりも強大で、討伐するのにSランク級の冒険者が10人は必要とされる、通常であれば10000人規模の騎士団が必要とされるほど、明らかに戦力不足だ。
「しかも三体かよ」
「毒づいても仕方あるまい、町の皆には危害を与えるわけにはいかん、今は高レベル冒険者達は出払っている」
「腹くくるしかないか」
二人は頷きながら天空を見上げ醜悪な翼をもった巨大な悪魔のような生物を視界に入れた瞬間…爆ぜた。
「「へ?」」
マーロックとブラックマンはいきなりの出来事に眼が点になる。
「堕神かよ、あの雑魚共がまだ出てやがる」
ブライトは左手を掲げため息をつく。
「兄さん、ちょっといきなり神話級はないでしょ、詠唱なしで」
「あいつら生半可なのだと復活するじゃんかよ」
ジルの言葉にブライトはため息をつく。
「それに俺が一匹やる間に二匹はキサラが殺ったしな」
「普通に音もなく遠距離で魔力だけで爆発させたキサラも大概だけどね」
「だってお困りじゃない」
「いやいいんだけどさ」
「それより腹減ったな」
「マイペースだな、お前も」
欠伸をするディーを見ながらブライトはまたため息をつく。
にこにこしながら見ているミリアとびびっているカゲロウをみて
「あーめんどくせえから、町いくか」
自分も規格外なのを棚にあげて町へとブライトは声をかけて向かうのだった。