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短編(超短編)

ハートダンス

作者: 芝田 弦也

何かを書こうと思ってキーボードに触れたわけじゃない。

ただ、久しぶりにパソコンに触れて指の運動をしてみようと思っただけなんだ。

だから何かを主張しようとか、何かを伝えたいとかは、一切ない…と思う。

だらだら指が動く限り、気がすむまでカタカタカタカタ黄色く変色して

薄汚れてきたキーを押し続けよう。うん。決めた。そうしよう。

夜はこれからなんだ。僕の夜はこれからなんだ。


室内の薄暗さとは対照的に煌々と灯るディスプレイから溢れる光が

日中から酷使してきた目に燦々と降り注がれる。

意識しないと今にも瞑ってしまうほど、しょぼしょぼな目が悲鳴を上げて

瞼を閉じさせようと脳へと指令を送り続けている。

その度にフラっと意識がどこか遠くに流れて無の時間が流れる。

その暗闇の中を駆け巡る様々な音楽が頭の一部を覆う機器から流れ始めては

終わりを告げて、また次へとバトンを渡して流れていく。


時たま流れる激しい低音に意識が呼び戻され、

ブラックアウトしていた視界が一転してチカチカと人工的な光に包まれるが、

その眼下に広がる光景を遮断しようとすぐ暗幕が降ろされそうになる。

そんな中、無意識に指は何かを求めてキーボードの上を彷徨い

何かを打ち込むが言葉にならない文字の羅列が画面に打ち出されていく。


文章を作成する為に立ち上げていた文章ドキュメントは

瞬く間に白い部分を失い黒々とした意味のない言葉で覆われていく。

言葉にすることも侭ならない何かが画面を覆いつくす頃には、

先ほど流れていた曲は終わりを迎えて新しい曲へとバトンを渡し終えていた。

 

音のリレーはまだまだ続く。主が終わりを告げない限りずっと、ずっと。

様々な種類の音楽がキーボードの乱れた操作音と混ざって流れていく。

夜は更けたばかり。また新しい音が芽吹いて奏でていく。

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