最後の交渉
クロック師団の都攻めからひと月程経った頃・・・
北討伐軍を指揮するアントレイヤのテントに1人の兵士がやって来た。
「アントレイヤ最高司令官!北軍から使いの兵が来ていますがどう致しますか?」
兵士はアントレイヤに敬礼するとそう報告した。
「何?使いの兵だと?この戦を停戦にでもしようと言うのか?」
アントレイヤは怪訝そうにそう言った。
「分かりません……… 内容を聞こうとしても内容はアントレイヤ様に会って直接伝えるとしか言わないので……… 罠かも知れません、どう致しますか?」
兵士は眉間にシワを寄せアントレイヤにそう聞いた。
「罠か……… まぁ、いい武器を持ってないか徹底的に調べてからここにとうせ」
アントレイヤは両腕を組みそう言った。
しばらくすると北軍の使いの兵がアントレイヤのいるテントに入って来た………
「ブル最高司令官からこの手紙をアントレイヤ殿にと……… 」
北軍の使いの兵はアントレイヤに一礼すると懐から手紙を出し誰かに見られてはいけないのかアントレイヤに素早く手紙を手渡した。
アントレイヤは怪訝そうに北軍の使いの兵を一瞬見た後手紙を読んだ。
手紙を読んだアントレイヤは10分程何かを考えた後、北軍の使いの兵に………
「ブル最高司令官に分かったと伝えてくれ」
そう言ったのだった………
その後何度かブル最高司令官とアントレイヤの手紙のやり取りは続くのであった・・・
ーーー
「ロウ大丈夫?」
森の泉を眺めていたロウにセナがそう聞いた。
辺りは暗く2人の前には焚き火があった。
なかなかテントに戻って来ないロウを心配したセナがロウを見に来たのだった。
「うん……… 」
ロウはセナの顔を一瞬見てそう答えた。
「きっと上手くいくよ・・・心配しなくても大丈夫だよ」
セナはロウの顔を覗き見ながらそう声をかけた。
この時アントレイヤとロウの交渉が明日に迫っていた。
「うっ、うん」
セナに覗くように見られたロウは照れながらそう答え・・・
「セナ……… なんかさ、僕だんだん責任を感じて来ちゃってさぁ……… もし、この最後の交渉が失敗したらどうしようかって……… ブル最高司令官にもセナにも北地区の人達にもみんなに悪いなって………」
ロウは覗き見るセナにそう言った。
「なんだ、そんな事で悩んでたの?私はてっきりロウの父上の事で悩んでるのかと思ってた、ロウはそんなに私達の事は心配しないでいいんだよ?それにさ・・・交渉は1度失敗してるんだから駄目で元々でしょ?」
セナはそう言いロウに微笑んだ。
「心配しないでいいなんて・・・」
ロウは体を震わせそう言い、
「そんな考えが僕には出来ないんだよ!だから僕は悩んでいるんだ!」
ロウは声を荒げセナに背中を見せた。
「ごっ、ごめん……… なんかロウの気に障っちゃったみたいだね……… ロウを元気づけようとここに来たんだけど私、失敗しちゃったみたいだね……… じゃ………私はこの辺でテントに戻るね……… 」
セナはそう言うと立ち上がった。
すると慌てた様子でロウも立ち上がりセナの手を引っ張った。
「まっ、待って!僕の方こそ声を荒げちゃってごめん、ち、違うんだ……… なんて言えばいいのか……… 僕が怒ったのはそういう事じゃないんだ……… 」
ロウはセナの手を握り顔を赤く染めた………
「す……… 好きだから……… 君の事が好きだから君の事を心配しないなんて僕には出来ないんだよ! 」
ロウはセナの手を握ったままそう言った。
静寂に包まれた森の泉にロウの言葉と鼓動が響き渡った………
⁈
「えっ?」
セナはロウに手を握られたまま顔を赤く染めた。
焚き火の光が微かに2人の顔を照らしロウはセナを抱き寄せた………
しばらく静寂が2人を包んだ後、
2人はキスをしたのだった………




