鍵
クロック師団の都攻めから数日後・・・
不穏な動きをみせる北軍の一団がいた・・・
「ロウ君!これから先は私から一歩も離れるな!君には私の前に立ち塞がるアントレイヤを最後にもう一度だけ説得してもらいたいのだからな」
ブル最高司令官はロウの顔を見てそう声をかけた。
「はい、分かってます、僕が北軍にいる事で親父も僕の覚悟が本物だってきっと分かってくれると思います、そうすれば親父だってきっと僕達の仲間に・・・」
ロウはそう答えブル最高司令官から目をそらした。
「きっと君がこの戦いの鍵になる・・・奴もそれを分かってて君をこの物語りの主人公にしたのだろう、主人公なのに出番が少ないからって気に留めるなよロウ君!」
ブル最高司令官はそう言い軽く微笑んだ。
「はっ、はい・・・」
ロウは目をそらしたままそう答えたのだった。
ーーー
「ボル最高総司令官殿大変です!中央地区の防衛網が北軍に次々と突破されてます!奴ら始めからこの戦争を仕掛ける準備を前々からしていたみたいです!」
兵士が慌てた様子でボル最高総司令官の部屋へと入って来てそう報告した。
「ドン!!!」
「えーい!ブルの事だそんな事は分かっておる!アントレイヤは!アントレイヤは何をやっている!北討伐軍を派遣しただろうが!」
ボル最高総司令官は机を叩きそう怒鳴り声をあげた。
「はっ!すでに北討伐軍は北軍と幾度も接触し戦を行なっていますが北討伐軍はもう10万にも満たない兵数でして・・・それに比べ北軍は前々から戦の準備をしていたのでしょう、次から次へと北地区から兵士を送り込んで来て、現在は30万もの兵士を揃えてる様でして、その・・・」
兵士は冷や汗をかきながらそう答えた。
「なんだと⁈ 北軍が30万も兵士を揃えているだと⁈ 」
ボル最高総司令官は手を震わせそう言った。
「はっ、はい、その様です・・・」
兵士は冷や汗をハンカチで拭きながらそう言った。
「飼い犬のあの、ブ、ブルに、や、やられた・・・」
「私はもうお終いだ!エリート貴族の私があんな野良犬の様な奴に!負けるなんて!」
ボル最高総司令官は手足を震わせながらそう叫び声をあげ机から崩れ落ちた。
「まっ、待って下さい!ボル最高総司令官殿!まっ、まだ負けた訳ではないではないですか!我々には王族兵もまだ残っているのですよ!」
兵士は崩れ落ちたボル最高総司令官に近寄りながらそう言った。
「馬鹿者!王族兵に要請をかけた時点で私の・・・中央軍の負けを認める事になるんだよ!指揮権は王族兵に全て奪われた上に、この戦争が終わった後は私は無能な最高総司令官として処刑されるだろう」
ボル最高総司令官は手足を震わせ目を赤くしてそう言った。
「そっ、そんな・・・」
兵士がそう言うと兵士の顔がみるみる青ざめていった。
取り乱したボル最高総司令官はしばらくすると冷静を取り戻し一言呟いた・・・
「なっ、なんとかしなくては・・・」




