クロック師団vsキルメール師団 序章
あれから…
クロック師団はいくつもの町を制圧した…
そのあまりの勢いに中央軍は後手後手を踏まされ、南討伐に来たはずの南討伐軍はいつしか防戦一方に変わっていったのだった…
そんな時だった…
ルーキ師団長が防衛を任されている町へクロック師団が向かっているという知らせが入った…
クロック師団はすでに南討伐軍の間では有名になっており名前を聞いただけで逃げ出す兵士が続発していた…
ルーキ師団長はその知らせを受け急遽クロック師団に交渉の遣いを走らせたのだった…
ーーー
馬に乗って次の町を目指すハッド師団長の前に1人の兵士が走ってやって来た…
「ハッド師団長、キルメール師団から交渉の遣いが来てますがどうしますか?」
兵士が額から汗を流しながらハッドにそう言った。
「キルメール師団?交渉?なんの交渉だ?」
ハッドは小馬鹿にしたようにそう言った。
「はっ!我々が今向かっている町には来ないで欲しいと、そう言っております!」
兵士は敬礼し、そう報告した。
「ぶっわっはっはっは、中央軍は弱い上に馬鹿が多いのか?ぶっわっはっはっは」
ハッドは高笑いをしながらそう言った。
「えぇ… ですがその遣いの者が言うには… その町を攻めればバル様が困る事になると… そう言っているのですが… 」
兵士は困った様子でそう言った。
「はぁ?町を攻めたらウチの最高司令官が困るだと?なんで敵の町を攻めてウチの最高司令官が困るんだよ!ばかばかしい!遣いの奴に言って来い!派手に断るとな」
ハッドはそう言った。
「はっ!ではその様に言って来ます!」
兵士はそう言いその場から走り去って行ったのだった…
ーーー
「派手に断るだと?」
知らせを受けたルーキ師団長が眉間にしわを寄せそう言った。
「はい… 」
兵士が顔を下に向けながらそう言った。
「そうか… あんな厄介な師団に暴れさせるなんて一体バル殿は何を考えているんやら… 」
ルーキ師団長は頭を掻きそう言った。
「どうしましょうか?」
兵士が困った様子でそう聞いた。
「南の様子がおかしい、ボル最高総司令官にそう報告して来てくれ」
ルーキ師団長は腕組みをしてそう言った。
「はい、ではその様に」
兵士がそう言いその場から立ち去ろうとした時…
「あと… 都を防衛しているギールさんに言っといてくれ… もし俺に何かあった時には俺の家族をギールさんに頼みたいと… 」
ルーキ師団長は兵士に一瞬悲しい顔を見せそう言った。
「はい… 分かりました… ですが… 」
兵士は困った様子でそう言った。
「何?何か問題でもあるの?」
ルーキ師団長は困った様子の兵士が気になった。
「はい… あのですね… もし俺に何かあった時にはとか… あまりそう言うセリフは言わない方がいいかと… 死亡フラグが立ちますので… 」
兵士は困った様子でそう言った。
「何?死亡フラグだって?縁起でもない事言わないでくれる?俺は元スペード師団の特攻隊長だよ?そんな俺が死ぬ訳ないでしょ?さっきのセリフは念のために言っただけだよ」
ルーキ師団長は死亡フラグという言葉にあきらかに動揺しながらそう言った。
「はぁ… ですが特攻ってやっぱり… 死… いや… 何でもないです… では行って参ります」
「ガチャン」
兵士は嫌な空気だけを残しその場から去って行った。
「冗談じゃないよ、あの野郎、変な空気だけ残していきやがって、あー、もう、俺も他の兵士みたいに逃げちゃおうかなー、何か嫌な感じがして来たわー」
ルーキ師団長はそう独り言を言いながら椅子に腰をかけた。
「クロック師団か… 短期間でここまで有名な師団にするとは大将は一体どんな奴なんだ… 」
ルーキ師団長は窓の外を見ながらそう独り言をつぶやいたのだった…




