MIDDLEPHASE04 牙の遺跡
2017/8/30 違和感があると指摘された表現等を修正
2018/7/19 あとがきに注釈追加
GM:さて、ではここでシーンを切り替えよう。フィルの質問に対してだが、ノーチルは「話は移動しながらだ」と言って君たち全員に《フライト》をかけてくれた。これで安全に遺跡内に侵入できる。
ワット:よし、それじゃあ一応俺が先頭になって遺跡に入って行こう。
GM:では、ゆっくりと穴を降下しながらノーチルが「…先程の質問に答えよう」と言ってくる。
フィル:…………………
GM:「何故私が『牙の遺跡』の場所を知っているのか。それはね……私がファット大神殿の神官長だからだよ。フィルくん」
ルーン:?…どいうこと?
GM:「代々、ファット大神殿の神官長には『牙の遺跡を護る』という使命が課されているんだ。…もっとも、そう簡単に見つかる遺跡じゃないから基本的には遺跡の場所を秘匿するだけなのだがね。だから、私も実際に遺跡に足を踏み入れるのは実は初めてなんだ」
フィル:…とすると、3話のオープニングでノーチルさんがボクに「アミーをどこで手に入れた」って聞いてきたのは…?
GM:ノーチルさんは『進化したスキル珠』の存在を知ってはいるが遺跡に入ったことはない、つまり実物のスキル珠を見たことはなかったんだ。だからアミーを初めて見たときに「…まさかスキル珠か?」って勘付いたんだけど、その確証が持てなかった。だからフィルにあの質問をしたわけだ。
スイレン:なるほど。いくら害意のない私たちとはいえ、代々秘匿してきた遺跡に入られたとあっては放っておくわけにもいかないでしょうしね。
GM:そう。ただフィルから返ってきた答えは「アミーはテールに教えてもらった遺跡の中で見つけた」というもの。ノーチルはテールに『牙の遺跡』の場所を教えていないし、テールが独自に『牙の遺跡』について調査してたとは考えにくい。その上嘘発見スキル《インサイト》を使っても、フィルの発言の中に嘘は見られなかった。だからその時点でアミーとスキル珠は無関係だと結論づけてしまっていたようだ。
フィル:おぅ…あのとき《インサイト》なんて使われてたのか……危なかった。
ワット:なるほど…それでさっき遺跡の入口で俺らを見つけたときに驚いていたのか。
GM:そういうことだね。
スイレン:ふむ。…ノーチルさんがこの遺跡のことを知っている理由はわかりました。ですが、何故ファットの神官長が『牙の遺跡』を護っているのか、理由がわかりませんね。
GM:うん、もちろんその件に関しても説明してくれる。…が、その前に今度はノーチルさんの方から君たちに質問が飛んでくるね。「君たちは『粛清』というものを知っているかね?」
ルーン:へっ?
フィル:『粛清』…か。アリアンロッドらしい単語が出てきたな。
スイレン:神様が汚れきった世界をやり直すために使う『世界リセットボタン』のことですね。過去3回、これによって世界が滅んでいます。
GM:「その通り」ノーチルは頷く。
ワット:へぇ、そんなものがあるのか…
『粛清』に関する詳しいことは『アリアンロッドRPG2E 基本ルールブック①』に掲載されているので、そちらを参照して下さい。
スイレン:…で、その『粛清』がどうしたんです?
GM:「神の裁きたる『粛清』だが、なにも神々だって好きこのんでこの世界を滅そうとしているわけではない。可能なら、事態が『粛清』に至る前にその原因となる根を排除してしまいたいと考えるのは当然のことだろう」
フィル:………?
GM:「その考えに基づき神々が作り出したのが、特定の人物に対してのみ『粛清』を発生させる対個人用神の裁き…『天罰』という仕組みだ」
フィル:……お、おう…
ルーン:なんだそれ、怖っ!?
ワット:世界を壊せるような大規模なものを個人に対して放つの?それ余波とかで結局世界滅びるんじゃ…
GM:いや、その心配はない。『粛清』と『天罰』では裁きを執行する者が違うんだ。
スイレン:というと?
GM:「過去三度の『粛清』は"水の"マリッドや"風の"ディジニら、各属性を統べる『精霊王』という存在によって執行されてきた。それに対して『天罰』は全ての獣の産みの親である『動物の王』という存在が下すものなのだ」
フィル:動物の王か。そりゃまた超常的な存在が出てきたもんだ。
GM:動物の王は全部で7柱存在する。
"蹄持つ獣の王" カトブレパス
"空飛ぶ鳥の王" シームルグ
"鱗持つ蛇の王" ヨルムンガンド
"水泳ぐ魚の王" リヴァイアサン
"小さき蟲の王" アラクネ
"すべて持つ竜の王" ファーヴニル
GM:ーーーそして、"牙持つ獣の王" フェンリル。こいつが今回の話の肝となる存在だ。
フィル:牙持つ獣……『牙の遺跡』……
GM:「今から300年以上前に、ある人物に対してフェンリルによる『天罰』が執行された。理由は「神への叛逆」…フェンリルの使いである『牙の御子』という存在が殺害されたことに起因したものだった」
スイレン:なるほど。「部下の仇ィイ!!」ってフェンリルさんがやっちったわけか。
GM:ツッコミどころはあるがとりあえずその理解でいいや。で、その人物の殺害動機は『牙の御子』からフェンリルの力の一部が入っている『業の石』というものを奪うことにあった。
ルーン:なんかまたヤバそうなものが…
GM:まぁ、この『業の石』の力によって『進化したスキル珠』が作られるわけなんですが…
一同:やっぱやべぇやつだった!!??
GM:まぁ、最終的にその『業の石』は『天罰』後に『牙の御子』の後継者によって取り戻されたわけだが…ここからがめんどくさいところでな。
ワット:………?
GM:フェンリルは神々と同じ神界に暮らす超常的存在、故に人々の住む物質界にむやみに干渉することができないんだ。
ワット:……というと?
GM:物質界に存在する『業の石』を自分で直接回収しに行けないんです。…まぁ、それだけが理由じゃないんだけど。
ルーン:……お、おう。
GM:故にフェンリルは後継者御子に命じてこの『牙の遺跡』を作らせたんだ。ここに『業の石』と『進化したスキル珠』を封印しておけばそう簡単には見つからない。ただし、万が一ということもあるので遺跡には守護獣としてマンティコアのトリコさんを配置。さらに遺跡に一番近い位置にある都市であるファットの神官長に、遺跡の存在を護る任が課されたというわけだ。
フィル:……えっ?じゃあまって、何?もしかしてこの遺跡のさらに奥に…?
GM:はい。『業の石』があります。
一同:………………………
フィル:えっ…やべぇやん。
ルーン:今まさに"黄香子"がその遺跡の奥に向かっているわけで…
ワット:あっ…やべぇわ……
スイレン:いや、ここで逆転の発想をしよう。"黄香子"が『業の石』を持ち帰ってくれればフェンリルがナゲット団を『天罰』で滅ぼしてくれるのでは….?
GM:ノーチルが言う「そんなものにテールが巻き込まれでもしたらどうする。今私はファットの神官長という立場だけでなく、一人の父親としてもこの場に来ているのだ」
スイレン:あー…それもそうですね。
GM:…では、そうこう話しているうちに遺跡の中、2話でクライマックス戦闘をした部屋が見えてきたね。
ルーン:あ、もうそんなところまで。
フィル:まぁ、こんな長話をしていればそりゃ着くか。
GM:では、このへんでこのシーンを終了しよう。…少しずつ、ナゲット団の目的も見えてきたかな(笑)
※本編で語られている「動物の王」という存在はアリアンロッドRPG2Eの公式設定ですが、「牙の御子」「天罰」に関する設定は全て本リプレイのオリジナル設定となっております。これらのオリジナル設定に関する質問などがございましたら、是非、感想欄ないし著者のアカウントのメッセージまでお寄せください。