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MIDDLEPHASE06 南

2017/7/19 誤植、誤字訂正

GM:さて、それじゃあ次のシーンに入ろう。舞台は同じく事務室。テールが連れ去られてから数分が経ったが、ノーチルは床にへたり込んだまま動こうとしない。


フィル:……いや、そっち(お父様)はとりあえず無視だ。まずはアミーから。


ルーン:見てたぞニート。《テレポート》する寸前にテールちゃんから何か耳打ちされただろ。何を聞いたんだ?


GM:ふむ。ではその質問に対し「ワイもようわからんのやけど…」と、前置きした上でこう答える。「嬢ちゃん、ボソっと一言『南』とだけ言いおったで」


ルーン:南?南に何かあるのか?


GM:ファットは地理的には大陸の南端に位置する。つまりここから南にあるものは…


スイレン:海か。


フィル:え、どういうことだ?…テールちゃんは海に連れ去られたってこと?


ルーン:このタイミングだとその認識で間違ってないと思うけど…でも、だとしたらテールちゃんはどうやって《テレポート》先の情報を手に入れたんだろう?


フィル:アミー、何かわかる?


GM:「いや、ワイにもさっぱりや…嬢ちゃん、《動物とお話しする》の好きやったけど、周りに動物もおらんかったし…南なんて、誰から聞いたのか…」


ルーン:ん?


フィル:ちょっと待って。なにそれ、初耳なんだけど。


スイレン:《動物とお話しする》って…テールちゃん、《アニマルエンパシー》使えたの!?




説明しよう。《アニマルエンパシー》とは!

話の流れからお察しの通り、動物とお話しができるようになるという《スキル》である。




ルーン:待って!?テールちゃんってスキル使えたのか!?


GM:別に驚くようなことじゃないだろ。この世界観ならな。因みにテールと付き合いの長いルーンとフィルは、テールがスキルを使った場面を見たことがあるよーな気がしてくるよ。


ルーン:なんでそんな曖昧なんだろう…。


GM:ハッキリと思い出すためには難易度10の知力判定だ。


フィル:(ダイスを振る)…成功!


ルーン:(ダイスを振る)…お、出目11で成功。


GM:ではルーンは、テールが『種別:ポーション』のアイテム『聖水』を作っていたことを思い出すよ。


ルーン:聖水を作るスキル…《ピューリファイ》か。


スイレン:アコライトのスキルだな。神官のテールちゃんらしい。


GM:フィルは、テールが民衆に神様の教えを広めるのがとても上手だったことを思い出す。


ルーン:ん?なにそれ、スキル?


フィル:あー…たぶん《フェイバード》……かな。これもアコライトのスキルだ。


スイレン:まさかとは思うが、同じアコライトスキルの《テレポート》の転移先も、テールちゃんなら分かったなんてことはないよな?


GM:それはどうだろうね。アコライトに《テレポート》の転移先がわかるなら、今頃皆必死にテールを追いかけ神殿を飛び出してる頃だと思うけど。


スイレン:まぁ、それもそうか。


フィル:そもそもボク(アコライト)が分かってないしね。


ルーン:うーん、となるともう少し知ってそうな人に話を聞くしかないな。おじさん、いつまでもそんなとこでうなだれてないで、テールちゃん捜すのに協力してよ。


GM:おじさんってノーチルのことか?なら彼はゆっくりと顔を上げ、君の方を見てこう言う「ダメだ。テールには大した魔法は教えておらん。聖水を作る《ピューリファイ》がせいぜいだ。《フェイバード》《アニマルエンパシー》は自分で身につけたようだが、この状況では関係ない。…せめて、テールも《テレポート》が使えれば…」


フィル:やっぱり合ってた。


スイレン:神官長さん。テールちゃんは他にスキルを使うことはできないのですか?


GM:「いや…ワシはこれ以上のことは知らん。他にテールが自力で身につけていたのなら話は別だが。《魔術の知識の深い》娘だから、もしかしたら魔法の一発くらい使えるのかもしれぬが…」


ルーン:テールちゃん、魔術の知識豊富だったのか。初耳。


GM:「ワシはもともとウィザードだからな。『出自』が『魔術師』なら珍しい話ではあるまい」


ワット:……?


フィル:でも、だからといってスキルって遺伝とかで使えるようになるものじゃないですよね?さすがにテールちゃんが1人で習得するのは難しいんじゃ…


GM:「それはもちろんそうだが、あの子は《神に愛されている》からな。努力次第では攻撃魔法とは言わずとも、ちょっとした小技くらいは使えるようになるかもしれぬ」


ルーン:………?話が見えないんだが。


フィル:つまりお父様は何が言いたいんだ?


ワット:…そのことについてちょっと思ったんだけどさ


スイレン:?


ワット:さっきノーチルさん、テールちゃんの魔術の知識が豊富なのは『出自』が『魔術師』だからだって言ったよね。


フィル:……言った…ね。


ワット:これ見て。




そう言ってワットが提示したのは基本ルールブックの『ライフパス』のページだった。




スイレン:『出自:魔術師』…取得スキル《マジックノウリッジ》か。


フィル:待って。なんでライフパス?テールちゃん、NPCだろ??


ルーン:…いや、まさかとは思うが…テールちゃん、データ的にはPCと同じなんじゃ…


スイレン:…このGMならありえる。てか、むしろよくやる。


GM:…………(笑)


フィル:じゃあ、仮にそうだとして、纏めると『種族:ヒューリン』『メインクラス:アコライト』『サポートクラス:??』ライフパス『出自:魔術師』『境遇:?』『目的:?』取得スキル、アコライトスキルから《ピューリファイ》《フェイバード》、一般スキルから《マジックノウリッジ》《アニマルエンパシー》


スイレン:ライフパスはとりあえずいい。今はスキルの方ですね。


フィル:とりあえず選択肢の少ない種族スキルからだ。たしか1話でハーフじゃないとか言ってたから、選択肢に残るのは《オールラウンド》と《プロビデンス》…神に愛されてるとか言ってたし、《プロビデンス》かな。


GM:(思ったよりバレるの早かったな…)


ルーン:あとはサポートクラス。おじさん、何か心当たりは?


GM:「すまぬが…無い」


ルーン:じゃあ、他に何か伏線めいたセリフは…


フィル:ルーンちゃんのオープニングじゃない?『秘密の友達』


スイレン:幽霊めいたお友達と話せるサポートクラスか。………シャーマン?




※シャーマンとは。

神に祈りを捧げる祈祷師のクラス。敵を呪い殺すスキルを使える。




ルーン:私、テールちゃんのイメージが一瞬でガラリと変わった気がする。


GM:待て待てっ!?テールちゃんがそんな暗いサポートクラスなわけあるかっ!?


ルーン:なんだ違うのか。よかった〜


フィル:となると、あとは私のオープニングでお父様が言っていた「最近部屋の中でアミーと2人だけで話しているようには聞こえない…」って情報が未解明だな。


スイレン:なるほど。ではアミーくん、お答えを。


GM:いや、それに答える前にアミーはこう言うよ。「な、何や?ワイと嬢ちゃん以外に部屋の中に誰かいるなんてど、どこから聞いたんや!?」


フィル:あ。


GM:ノーチルがフィルのことを半目で見ている。(一同笑)


フィル:あのー…お父様……


GM:「いいんだ…今は緊急時だ……」と、涙声で顔を伏せる。


フィル:スミマセンしたぁっ!!!!(一同爆笑)


GM:まぁ、そんなことはどうでもいいんだ(笑)アミーはテールの部屋での話し声についてこう説明するよ。「嬢ちゃんはどうも動物に好かれやすい性格みたいでな。昼は野良犬、夜は野良猫たちが何匹か嬢ちゃんの部屋の前まで来て、窓から話しかけて来るんや。それで多人数で話してるように聞こえるんとちゃうかな?…嬢ちゃんは、『あまり家に野良の動物集めすぎるとお父さんに怒られるかもしれない』ゆーてナイショにしてたみたいやけど」


ルーン:《アニマルエンパシー》すごいな。


スイレン:で、今の話がテールちゃんのサポートクラスに関係あるとすると…


フィル:動物に関係するクラスは少ないから、ほぼ『サモナー』で確定だね。一応『テイマー』ってクラスもあるけど、アレは15レベル以上にならないといけないし、テールちゃんはそこまでレベル高くはないだろう。


スイレン:さて、あとはサモナースキルの中でなにを習得しているかだ。


GM:…まぁ、そこまでわかってるんだったらもうヒント無しで気づくと思うよ……(笑)そもそもの目的を見失ってなければ。


ルーン:目的……………って何だっけ?


GM:おい。


スイレン:ダメじゃないルーンちゃん。テールちゃんが言い残した「南」の意味を考えてたんでしょ?


ルーン:あぁ、そうだったそうだった。


フィル:まぁ、あのタイミングで「南」なんて言った時点で「南に行くから助けに来て」って意味と捉えて間違いないだろう。問題は、何故行き先が「南」とわかったか。


スイレン:サポートクラスがサモナーなら、ひとつだけ、その答えにたどり着けるスキルがありますね。というわけでGM、今回テールちゃんが使ったスキルは…


フィル:わからないことをなんでも質問できちゃう便利スキル!《クウェリィ》だ!!!




説明しよう!《クウェリィ》とは!!

PCがわからないことをなんでもGMに質問できてしまうという超便利な謎解明スキルである。

テールちゃんはNPCながらにこれを使い、GMから《テレポート》の転移先を聞き出すことに成功したのだ。

尚、『テールちゃんの中の人はGMなんだからわざわざ《クウェリィ》する意味はないだろ』とかいうツッコミはしてはいけない。




GM:…正解だ(苦笑)……当初の予定の半分くらいのヒントで辿り着きやがったな。


フィル&スイレン:いぇーい!!


GM:じゃあ、一度整理のために《テレポート》の寸前に起きたことを詳しく解説しておこうか。まず、"黄香子イエロー"がの魔法陣を広げた際、テールはそれが《テレポート》の魔法陣であると一瞬で見抜いた。これは《マジックノウリッジ》があったからだ。


ルーン:ふむ。


GM:転移されたら自力で帰ることは叶わない。そう考えたテールは信頼できる友達(ルーン)を頼ることにした。《クウェリィ》で転移先を特定し、その大まかな場所をアミーに耳打ちし、投げ捨てる。あとはアミーがルーンに「南」と伝えてくれれば…


ルーン:まぁ、とりあえず南に行ってみようとは思うね。


GM:そう。それがテールの狙い…というか、ルーンを信じた結果の行動だ。「ルーンちゃんなら絶対助けに来てくれる」ってね。


スイレン:なるほど。じゃあわざわざテールちゃんのスキルなんて暴かなくても素直に「南」に行っていればどちらにしろテールちゃんと会うことはできたのか。


GM:そうなるね。でもまぁ、謎を残したまま「南」に行くより、解明してから行った方がスッキリするし、しっかり暴いてくれてよかった(笑)


ルーン:…さて、となると早速南へ行こうという話になるわけですが……南ってたしか海なんだよね?どうする?泳ぐ??


フィル:ルーンちゃんはともかく、ボクとスイレンさんは溺れる可能性が極めて高いため却下で。


スイレン:ノーチル神官長、今の話は聞いていましたよね?


GM:「あ、あぁ。聞いていたが…」


スイレン:船をお借りできませんか?


フィル:あぁ、スイレンさんナイスアイディア!それなら海でも大丈夫!


GM:いや、ノーチルはそれに難色を示すよ。「…ダメだ。"黄香子イエロー"は強い。船で行ったら接近がバレて近づく前に粉微塵にされるのがオチだ」


ルーン:ぬぅ…。


スイレン:じゃあ、どうすればいいんだろう…


GM:と、ここで君たちに陽気な声がかけられる。「なんだべ?海さ出たいべか??」(一回爆笑)


ルーン:マイケルさんっ!?今までどこ行ってたんだよ!??


GM:「わりぃなぁ。騒ぎさあったのはぎづいでたんでげんども、オラ足さ遅ぐでよぉ…と、そんなごどより、おめぇら海さ出たいんだべか?」


フィル:出たい…ですけど……


スイレン:え、マイケルさんが私たち3人を背中に乗せてくれるんです?


GM:「いや、さすがにそれは厳しいべなぁ」


ルーン:まぁ、そりゃそうだ。


フィル:そっかぁ…


GM:「ただ…1匹にづぎ1人までなら運んだるべ!」


一同:…………は?


GM:すると突然、マイケルの背後から2匹のサハギンがぴょこぴょこっと飛び出して来た!!「そういうことなら…!」「オラ達に任せるべー!」(一同爆笑)


ルーン:待てっ!!??(笑いながら)変なのが増えたっ!??


GM:マイケルは今出て来た2匹を紹介する。「紹介するべ。こいづらはオラの息子だ。兄貴の方がジャック、おどうどはソーンっていうべ」


ルーン:マイケル!ジャック!!ソーン!!??(一同大爆笑)


スイレン:お前そのアホみたいなネーミングセンス早く直せーーーっ!!??


GM:ほへ〜?ナンノコトカナー?(反省の色ナシ)


フィル:ま、まぁいい。運んでくれるなら幸いだ。すぐにでもテールちゃんを助けに行くぞ。


GM:では君たちがマイケル一家を連れ南へ向かおうとした瞬間。「ま、待て…」ノーチルが呼び止める。


ルーン:おじさん安心して。私たちがテールちゃんを取り戻してくるから。


GM:「無理だ!」ノーチルが断言する。「私の目利きが正しければ、奴は…"黄香子イエロー"は正に化け物。おそらくレベルは40にも上るであろう。君たちにどうこうできる相手ではない」


一同:40っ!!??


ワット:はぁーっ、そりゃ何もできずに倒されるわけだ。今の俺らの13倍以上のレベルだもんな。


GM:因みに、先ほどの"黄香子イエロー"の暴れっぷりを見ていた兵士や他の冒険者たちの中には、テールを助け出すのに協力してくれそうな人はいないよ。みんな"黄香子イエロー"が作り出した恐怖に呑まれている。因みにマイケルもこう言っている。「オラは息子たぢに危険(きげん)なごどさせるわけには行がね。わりいけどおめぇらの送り迎え以外には協力でぎねぇぞ。それでもええか?」


スイレン:それは…そうでしょうね。


GM:だから、行くなら君たち3人+マイケル一家。実働隊は君たち3人のみとなる。それで40レベルエネミーと対峙して何ができるのか?と、ノーチルは君たちにそう問いかけているんだ。


フィル:なるほどね。…(少し考えて)……たしかに、"黄香子イエロー"を倒すのはとても難しいことでしょう。だけど、それならそれでやりかたはある。


スイレン:"黄香子イエロー"に見つからないように接近、テール奪還。即逃亡。成功率?そんなことを気にしていてはできるものもできませんよ。


GM:ノーチルが問う。「では君たちは、"黄香子イエロー"を倒せぬとわかった上で南へ向かうというのか。…一体何故、どうして娘のためにそこまでしてくれるのだ…?」


ルーン:どうしてもこうもないよ、おじさん。テールちゃんが「南」だって教えてくれたんだから、助けに行かないわけにはいかないでしょ?だって私たち…『テールちゃんを取り戻し隊』だもん!!!


フィル:そのとーり!


スイレン:神官長。お友達を助けに行くのに、これ以上の理由が必要ですかね?


GM:「……ありがとう」その言葉を聞いたノーチルが、涙を流しながら頭を下げた。「…娘に君たちのような友達がいて本当に良かった。娘を…テールを、必ず、取り返して来てくれ…!!」


ルーン:……うん。もちろん!


フィル:そうと決まれば早速行くよ!マイケルさん、早く早く!!


GM:「了解りょーがいだべー!!ジャック!ソーン!準備はええなぁー?」


スイレン(ジャックになって):おーけーだべぇ!


ルーン(ソーンになって):だべーーーっ!!(笑)


GM:「おし、そんじゃ行ぐべよ、(みんな)腹括ハラくぐれぇ!!」こうして、ルーン、フィル、スイレンの3人とマイケル一家の3匹は、海へ向けて全速力で駆け出した。全ては、テールを助けるために!


ルーン:よーし、頼むよマイケルさん!南へ向けて、しゅっぱーつ!!!


GM:「ま、待ってけろーっ!?おら、足遅ぐで追いづげねぇべーっ!!」(一同爆笑)


フィル:し、締まらないなぁ(笑)


GM:なはは!ではまぁこんないつもの調子に戻ったところで、このシーンを終了しよう。

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