ENDHINGPHASE01 代償
ルーン:お、
ワット:あ、、
フィル:心臓を…?
スイレン:………
GM:イルゼが刀を抜くと、ディアモンはガフッと吐血し、膝から崩れ落ちた。
フィル:いや、ディアモンさんだよ?心臓刺されたくらいじゃ死なない死なない。
スイレン:いや、それはさすがに…
GM:ディアモンは明らかに致命傷を負っているが、まだ動いている。今すぐに治療をすればあるいは生き延びることができるかもしれない。
ルーン:私、伯父さんのすぐ近くにいるはずなんだけど、えーと、どうしよう…
GM:いや、ルーンが何か行動を起こす前に、ディアモンにまだ息があることがわかったイルゼは右手の刀を振り上げ、ディアモンの首を切り落とそうとする。
ルーン:!? いや、それは見過ごせない。前に出て紅月で受け止めます。
GM:イルゼが放つ。《フルスイング》ーーー《クロススラッシュ》!
ルーン:《カバーリング》!
フィル:《アフェクション》!!
GM:ガァアン!! ルーンの刀とフィルの障壁がイルゼの強力な一撃を受け止め、その衝撃が部屋全体を揺らした。ーーーその一撃はなんとか凌ぐことができた…が、
フィル:《クロススラッシュ》は、二連撃……
GM:そのとおり。直後に飛んできた左の一撃が、ルーンの小さな身体を部屋の壁際まで吹き飛ばした。
ルーン:どうにか耐えることはできない?
GM:できない。なんならダメージロールを振っても良い。その場合、こっちは《ボルテクスアタック》も使わせてもらうけどな。
フィル:それは…無理だ。たぶんディアモンさん並の一撃が飛んでくる。耐えようがない。
ルーン:う、うーん。
スイレン:ルーンちゃんはともかく、私達はまだ動けるはず。《ウォータースピア》とレールガンでイルゼさんに攻撃、フィルくんはディアモンさんに《ヒール》を…
GM:それも無理だな。君たちの方にはフォーゼンがクロスボウで大量の矢を飛ばしてくる。ディアモンの方を気にしている余裕はない。
ワット:マジか、まだ邪魔をするのか!? さっきフォーゼンを倒しておけば…
GM:フォーゼンが口角を釣り上げつつも、笑うのを我慢しているかのような震えた声でイルゼに命じる。
ルーン:…………………
「イルゼ ーーー殺れ」
「はい。お父様」
ルーン:………………………………………
GM:「フハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」 まるで壊れた機械のように、ダムが堰き止めた水を放流するかのように、魔族フォーゼンは高く、高く狂い笑った。そんな彼のもとに、血に濡れた刀を携えたイルゼが近づいてくる。
「よくやった、イルゼ。後で褒美をくれてやろう!」
「ありがとうございます。お父様」
GM:イルゼがフォーゼンの隣に並び立つ。するとフォーゼンは懐から一つの珠を取り出した。
スイレン:そりゃ当然持ってますよね…。
フィル:量産されてんなぁ。
GM:「そろそろ、帝国軍の猛者共が集まってくる頃合いだろう。さすがにこれ以上の長居はできん。愛娘が上げた大戦果を土産代わりに、三年ぶりに我が家に帰るとしようか。…《模倣版テレポート》!」 一応、城内では転移系の魔術が阻害されているはずなのだが、何の細工をしたのか、珠はパリンと割れ、正常に《テレポート》のスキルが発動し、イルゼとフォーゼン。二人はどこかへと、転移して行ってしまった。
一同:…………………
上位魔族"百面相"のフォーゼン
文献によれば、万人に化けるこの魔族をそれと特定し、撤退させるまでに追い込んだ例は過去になく、今回が初めての事例となる。
それに成功した帝国の名声と、実行した取り戻し隊の評価は、今後爆発的に上がることだろう。
しかし、それと引き換えに払った、払わされてしまった代償は、得た名誉がちっぽけに見えるほどに、途方もなく大きいものであった。