近づきたい、君佳くん1
01 ===近づきたい、君佳くん1===
―――私に好きな人ができた―――
同じ加賀谷高校で同じクラスの二年C組の霧島君佳くん
―――背は168cm、虫も殺せないような顔立ちと性格だけど、剣道が強くて、でも私と同じ文芸部に入っている
―――そんな君佳くんがどうしようもなく私は好きです。
今日最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「では、日直の望月さんは学級日誌を忘れないように」
HRも終わって放課後になった。今日の日直は私だ。はやく文芸部の部室でダラダラしたいけど、まずは学級日誌を職員室に届けないとね。
「有朝ー、先行ってるよー?」
「わかったわ。あ、新しい本が廊下の脇に積んであるからね」
「それは急がねばっ!」
私の悪友?の高村栞が意気揚々と文芸部へと駆けていった。彼女は、…有り体に言って腐っている。
学生の希望の本が毎月図書館に数十冊入るのだが、青少年の育成に宜しくない本がたまに混じることがある。図書管理の先生に発見され次第、文芸部に払い下げられると言うわけだ。栞はその腐りかけた本を、それはそれは美味しそうに味わうハイエナの様な女である。
私は授業中や暇な時間に日誌の記入を済ませたので早速職員室に向かう。何事もなく日誌を担任に渡す。
「望月、今日のクラスはどうだった? 体育の時間に仲間外れは居なかったか?」
うちの担任の担当教科は化学だ。先生だけあって本気で生徒の事を考えている30代のポジティブ系の教師だ。こうして私に聞いてきているが、体育の時間にこっそり授業を観察していると言う抜け目の無い、食えないお節介系である。
「仲間はずれは居なかったですね」「グループで少しギスギスしてるくらいだと思います」
「俺は体育の時間はできるだけ見てるんだけど、やっぱり少し変な空気あったよな? どうにも女子の集団心理が分からないよ」
はぁ~、メンドクサイ流れになりそ…。調べた所で何もできないんだから生徒に丸投げしとこうよ。変に首突っ込んでもややこしくなるだけだぞ~
「先生がどうこうできる物でもないと思いますよ?」「女子によくある縄張り争いですよ。では、失礼します…」
「…ああ、日直ご苦労様」
私に事情聴取すれば生徒を管理できると思ってるのがちょっと気に入らなかったので、素っ気なくあしらって退出した。
そんなことより文芸部に行こう。きっと君佳くんがもう居るはずだ。スタスタと歩いていき、部室の扉をガラガラと開ける。おーいたいた!長机の端の方のパイプ椅子に座って本を読んでいる。どうやらミステリーの様だ。ページの進み具合からして、トリックを考えている最中かな?。
「鈴先また何か言ってた?」
「あー、女子の空気が悪いとか言ってたね」「ほら、また体育の時に来てたみたい」
「鈴先、また体育の女子見てたか…なんというインモラル!」
あの先生は日直にいつもクラスの雰囲気を聞いている。ロクな情報入ってこないと思うんだけど…
「……」
君佳くんは相変わらず無言でミステリーを読んでいる。…っと見せかけて意識は私と栞の会話に集中しているようだ。いぢらしいな!かわいい。
「ん~?」
腐った栞が意味ありげにこちらを見ている。てめー、BL本片手にこっち見んな。しかもコイツ、女の子同士もイケるという腐り具合、つまり薔薇と百合という御目出度い花園を頭に入れている。
「君佳くん、なに読んでるの?」
「一昨日発売されたミステリーだよ」
君佳くんは絶対に恋愛物を読まない。攻略は難しそうだ。
息抜き用作品の予定です。
思い立ったらチョコチョコと書いていきたいとおもいます。