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第2話 始まり 1節

 乾いた暑さが、小さな食堂の中にたちこめている。小さな窓からは、淡い赤色の光りが、射しこんでいる。

 そんな食堂の中に、赤い髪をした1人の女性が、丸太みたいな椅子に座っている。女性の左手には、酒の入ったガラス瓶を持っている。

 そして、女性は左手に持っている瓶を、木のテーブルに置いてある小さな色ガラスのコッブに注ごうとしている。

 「リコー姉さん、また、酒を飲もうとしているんですか」

 どこかから、少女の冷たい声が、響いてきた。

 女性が、食堂の入り口を見ると、栗色の髪をした少女が立っている。少女は仕事帰りなのか、麻で作られた半袖と、半ズボンの仕事着を身につけいる。

 「いや、違うよ。そろそろ白夜さやが、帰ってくると思って、夕食の準備をしようとしていたんだよ」

 リコーと、呼ばれた赤い髪の女性は、驚きを隠そうと早口でまくし立てた。

 その間に白夜と、呼ばれた少女はテーブルに近寄ってきた。

 「じゃあ、テーブルの上にあるお菓子が、今日の夕食ですか?」

 白夜は、テーブルに乗っている高そうなお菓子を見回してから言った。

 「うん、そうだよ」

 白夜は、リコーの言い分が終わるや否や、テーブルを烈しく叩いた。叩いた衝撃で、テーブルに乗っているコップやお菓子が、小さな音を奏でた。

 普段、温厚な白夜の顔は、怒りのあまりに真っ赤に染まっている。

 「うん、そうだよ、ではありません! ここに広がっている物は誰が、賄っていると思っているのですか?

 そして、姉さんが、今年の初夏に、仕事を辞めさせられてから、誰がお金を稼いでいるのか分かっているのですか!」

 白夜は、1通り言い終えると、肩で荒くなった息を整えている。

 静かな空気が、暗くなってきた食堂を包んでいく。耳に入って来る音は、白夜の荒い息遣いだけだ。


 「明日、仕事でも探しに行くか」

 静寂を破ったのは、今まで黙っていたリコーだ。

 「え?」

 まだ、息が上がっている白夜は、混乱の声をあげた。

 「だから、明日、仕事を探しに行くよ」

 リコーは、今まで叱られていなかったかのように言った。

 白夜は、何を言ったらいいのか、死にかけている魚のように、口を開けたり、閉じたりを繰り返している。

 「それでは姉さん、私もついていきます」

 白夜はやっとの思いで、口から出てきた言葉を結んだ。

 「それじゃー、お菓子をなくそうよ」

 リコーは楽しんでいる声で言った。

 白夜は渋い顔をして、空いている丸太の椅子に座ってお菓子を食べ始めた。


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