表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

それから僕たちは君の家に行った。

君は家に着くと早速、道具を出し、材料を並べお菓子を作って行く。

僕が何を作っているか聞くと、クッキーを作っていると答えてくれた。

てきぱきと材料を混ぜ合わしていく。

形作るときに、人型にくり抜き、君は僕に似せた顔を持つクッキーを作った。

嬉しそうに見せてくる。

クッキーが焼きあがるのを待つ。

その間、僕たちはいろんな話をした。

その内容はいつも通りで、最近読んだ本だったり、くだらないことだったりした。

お互い生前のことは触れない。暗黙の了解のように。

時間が早く感じた。

あっという間に焼きあがってしまった。

「じゃあね、楽しかったよ。」

「うん、さよなら。」

僕は魂だけになり、クッキーに溶け込む。

君はその間、ずっとふわりとした笑顔を見せていた。

僕は完全にクッキーに溶ける。

意識はあるけど、何も見えないし聞こえない。

夢を見ている感覚だ。

そのうち、どこかが持ち上げられる感覚がした。

そして、さくりと、心地よい音がしたような気がした。

次々とサクサクという音が響く。

ああ、今僕は、君に食べられているんだな。

多分今君は嬉しそうに幸せそうに美味しそうに泣きながら食べているんだろうな。

感覚で、そういう風に食べている事がわかる。

これで僕は、君と一つになる。これが僕たちの恋の形。

可笑しな話だ。


最後の一つを口に含む。

君は噛み締めながら、味わう。

ゆっくり、ゆっくりと口の中で粉々に砕き、少しづつ、ゆっくりと飲み込む。

そして、完全に全てを飲み込む。


じゃあね、さようなら。


   ***


彼の存在が完全に消え、後には彼女と空っぽになった皿だけが残されていた。

「さよう…なら…。」

彼女はいつまでも、いつまでも、泣いていた。


これで完結です。

感想などお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ