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家に帰ると、やっぱり誰もいなかった。リビングにもいない。また自分の部屋で待っておこうと考えていると玄関が開く音がした。
「ただいまー。」
母さんだ。帰ってきた。
いきなり話しかけるには心の準備が整っていない。リビングで待っていよう。
廊下を歩く音が聞こえる。
扉が開く気配がした。
ガチャと、リビングの扉が開き、母さんが入ってきた。
疲れた表情をしている。
なんだか少しやつれている気がする。
僕は、母さんに話しかけようとしたけど、やっぱり緊張して言葉が出ない。
そんな僕を、気にせず母さんは荷物をテーブルに置き、リビングを出て行こうとした。
いつも通りだ。僕のことなんて見てくれやしない。
でも、約束した。
話さなきゃ!
「母さん!」
すこし遅かった。もう出て行ってた。
追いかけてリビングを出る。母さんは廊下を挟んで反対側にある和室に入っていた。
僕も和室に入る。
ここに来るのは久しぶりだ。
ここ仏壇も置いてあったのか。
かあさんは仏壇の前に座って線香を焚いていた。
写真があるようだがよく見えない。話しかけようと近づく。
「ねえ…、母さん。ちょっと…。」
仏壇の前におかれている写真が目に入る。
僕はそれを見て驚愕する。
なんで? なぜ?
意味がわからない。
訳を説明してくれ。
どうして
どうして、僕の写真があるんだ。
***
次の日、いつも通りに山に行き、君と話すために待っている。
本を読んで待っていると、君がやってきた。
僕に気づき、君が僕に近づく。
君は僕の目の前で立ち止まり、手に持っていたバスケットを落とした。
君の顔は真っ青になり、震えている。
「どうして、どうして…。」
震えた声で君が尋ねる。
「君は…もう消えかかっているの?」
体を震わせ、青ざめた顔を見せ君は恐る恐る僕を見つめる。
「やっぱり…、そう見えるんだね。」
僕はそう呟き、空を見上げる。
今日はいい天気だなぁ。
透き通るような青い空、雲ひとつない。
本当にいい天気だ。
大きなため息をつき、息を整え、君に全て話す決意をする。
僕は君を見つめる。君は、真剣な目で僕を見る。
「どこから話したらいいんだろう…。
まずは、結論から言うとね。
僕は、死んでいる。」
「そんな…。じゃあ、君は…。」
「そう、幽霊だ。」