99列車 振り分けて
この中にはたくさんの模型が登場していますが、これらはいま発売されていなかったり、製品化辞退されていないものもあります。今回出てくるのは発売されていた・されているものです。
この物語に出てくるものがそうなっているだけですので。
翌日11月28日。この日も走る車両と走らない車両のことを調べた。
「永島君。もう一つ頼みたいことがあるんですが、走らない車両のほうは何で走らないのか書いてほしいんです。」
とアド先生から指示を受けた。
僕はアド先生からその受け取った白い紙を持って学習室に向かった。
「永島。何だって。」
部屋に入ると木ノ本が聞いてきた。
「んっ。昨日は知るやつと走らないやつに振り分けてたじゃん。それで走らないほうは何で走らないのか理由書けって。」
「成程なぁ。あれじゃあただ振り分けただけだもんね。」
「・・・。」
今日この部活に参加しているのは僕、木ノ本、留萌、柊木、諫早、空河、朝風、夢前。
「分かりました。振り分けるほうはまた僕たちでやりますから、安心してください。」
朝風が紙を受け取って、テスト線のほうへもどっていく。そして、空河と一緒になってテストを開始した。
「さて、俺も改造するやつ改造するかぁ。」
独り言を言いながら伸びをした。
「改造って・・・。」
木ノ本の声がそう言っていたかもしれないが、聞こえなかった。
僕はちょっと車両ケースを人差し指でなぞるようにして、何が入っているのかを調べた。その中でまた目を引くのがTOMIXのハイグレード仕様という箱がグレーになっている箱だ。
そのうち一つを取り出して、中を見てみた。するとわけのわからないクリームに橙色のラインが入った気動車が入っているのが見えた。明らかに国鉄車であるのはすぐにその色で分かる。
(国鉄かぁ・・・。)
と思ってその上の表示を見てみれば、やはり国鉄だ。JNRと表示されていて、形式はキハ55となっていた。
ちなみにJNRとはJapan Nation Railwayの略である。
「・・・。」
この気動車を見てふと思った。
それを探してみる。確かMicro Aceの車両ケースにこれだけ。プラス心臓(M)が入っていないものが一つあった。
(あった。)
目的のものが見つかった。入っているのは上からキハ55×3、キロ25、キロハ25、キハ55、キユニ26の7両。
(これだけよく集めたなぁ・・・。)
集めた人に感心するが、家にもこれぐらいあることなので、そんなでもない。
だが、全部の車両は何も手が付けてなかった。これでは見栄えが悪い。
「・・・。」
「永島。何見てるんだ。」
留萌が聞いてくる。僕が手に持っているものを覗き込んで、
「うわぁ。・・・。空河喜びそうなのがあるぞ。」
と空河を呼んでいた。
「キハ55とかそういうやつでしょう。それだったら昨日見ました。」
空河にはなんだったのかわかっていたらしい。
「・・・。」
(これどうにかしたいなぁ・・・。車両庫の中に何かあるかなぁ・・・。)
思い立って車両庫のほうへ行き、その中をあらしてみた。
すると案の定これが入っていた単品の箱がゴロゴロと出てきた。
学習室に戻って、
「よしやるぞー。」
声を上げて、机代わりに使えそうなところに単品のケースを置き、近場に椅子を持っていく。そしたら、ケースのふたを開けて、中身を取り出した。
中にはいろいろなものが入っている一見するとどこに着くものかわからないのもあるが、今はそれはどうでもいいだろう。今この状態で判別がつくのが貫通幌と信号炎管。後はヘッドライトを2灯式に変換できるパーツ。これは製品のヘッドライトにかぶせるだけだが・・・。
もともと車両をしまっていたプラスチックをケースの中から出して、その下に埋もれている説明書を取り出し、広げる。するとこの部品はどこにどうつくのかということが明記されている。
貫通幌、信号炎管の付くところは説明書を見なくても分かる。まずは、車両を床下と車体に分解し、車体の貫通ドアにつけられている踏み台を内側から、マイナスドライバーで押して、外す。そうすると2つの穴が開いたとても不格好な形になる。そこに変わりの貫通幌を押し込む。これでここは完成。信号炎管は車体の天井。小さい穴が開いているところが一つある。そこにこの小さな部品をつける。失敗するとこれがどこかに飛んで行って大変なことになる。
次、説明書を見て、残りの部品がどういうものか見る。黒くて、下から(上から)見ると三角形の2辺のような形になっているものと反対側が大きく、片方が小さいプレートのような部品はスノープロウというのが分かった。これは雪が降るところでの使用だが、なんかつけていないと不格好な気がする。自分はプレートのほうがいいので、プレートのスノープロウをバンパーになる部分。車両の前側の取付口に取り付けた。その次の部品。これも黒く、横に長い。長いと言っても1センチあって1.5センチの部品。これは台車に付ける排障器。これの取り付け口を上にして、台車に就けようとしても、言うことを聞いてくれない。プラスドライバーを使ってスノープロウを取り付けた側の台車を外す。その後、外した台車に台車用の排障器を取り付ける。これでもなかなかいうことを聞いてくれず、最後はマイナスドライバーで強引に押し込む形を取って取り付けた。
それを7両もやっている間に時間はお昼になった。
「永島さん。このE751系どうしますか。お酒やってもなかなか動きがよくならないんですけど。」
朝風が聞いてきた。昨日もそうだが、快調に動いてくれるという車両はなかなかない。ほとんどの車両から「ジジジジジ」という音がしたりしている。中には走る分には走るのだが、途中で止まってしまったりとするものまである。
「うーん。保留でいいんじゃないか。」
「保留ですね。」
「永島さん。この485系のカプラー死んでますよ。」
今度は空河だ。そう言って僕に485系(3000番台)の電動車2両を指差した。これは連結してくれないのだという。
連結してみても明らかだ。モハ485形の幌とモハ484形の幌が完全に干渉しあっている。これで下の連結器が連結できない状態になってしまっているのだ。
「・・・。これ別にM入ってないし、これのMが動けば動く方に入れていいと思う。」
と回答した。
「了解です。」
「今回って新幹線も走らせていいんですよねぇ。」
今度は柊木だ。
「だからって、0系とか持ってくなよ。持ってっていいのは「つばさ」と「こまち」だけだからな。」
念押しした。
「もちろん。それだけですよ。他に何持ってくっていうんですか。」
「分かってるならいいよ。」
「にしても、ここのやつって走るんですか。」
「えっ。」
さすがにそれは知らない。
「空河。朝風。すぐにこの400系とE3系。動くかどうか調べて。」
「分かりました。」
朝風から返事が返ってきた。
「あいよ。こいつらお願い。」
柊木はTOMIXと書かれている400系の箱とKATOと書かれているE3系の箱を手渡した。
結果は・・・。
「翼さん。これ死んでますね。モーターが死去してます。」
「そうか・・・。」
ようは走らなかったということだ。
「走らせるんだったら買うしかないのかなぁ・・・。」
とつぶやく声が聞こえた。車両ケースの方を振り返ってみてみると、まだ希望があるのが見えた。
「柊木。諦めるのは速いみたいだぜ。「つばさ」だけだけど。」
「えっ・・・。」
そして、その結果は・・・。
「永島さん。この子は快調に走ります。」
とのことだった。
「よかったな。KATOのE3系は言うこと聞いてくれたみたいだぜ。」
「・・・。でも「こまち」のほうがどうにもならないんですよねぇ。」
残念そうな口調だ。
「そこはしょうがないだろ。」
「「つばさ」だけ持ってってもしょうがないんですよねぇ。「こまち」もいないと・・・。」
「・・・。」
分からないわけではないが・・・。
「永島さん。俺が持ってくのって網干と宮原の6000番(223系)でいいんですか。他にももってきてほしいなら持ってきますけど。」
今度は諫早。
「・・・。他に何かあるの。」
「まぁ、いろいろ。」
それから諫早と持ってくる車両のことについて話し合い、網干と宮原の223系はエントリーが確定した。
その後、朝風たちが描いた調子が悪いものリストに目を通すと、
(KATO、223系2000番台。モーター死亡。)
他にTOMIX、485系(北越カラー)。モーター・パンタ死亡。GREEN MAX、キハ75系。死去。Micro Ace、485系3000番台。カプラー死亡。分かると思うが、すべてに対して死亡とか死去という表現しか使われていない。
「なんだよこれ。」
「なになに。」
木ノ本もそれに目を通していたが、
「なにこれ。何がモーター死亡よ。」
おなかに手を当てて笑い出した。よっぽどおかしいことしか書いてないということだ。僕だってそれを見ていて、笑えてきた。
「死亡とか死去とか表現がすごいなぁ・・・。まぁ、合ってないわけじゃないけど。」
「お前、あれにモーター死亡とかって書いたのか。それじゃあアド先生に伝わらねぇだろ。」
「いいら、別に。」
笑いの渦になった後今日の活動は終了した。みんなに宿題を授けて。
瀬戸学院大学の人々
大津守。顧問です。49歳(2008年当時)。
瀬戸学院大学交通サークル顧問。由来は東海道本線大津駅。
膳所茂 。現在大学2年生。
由来は東海道本線膳所駅。余談ですが、駅名は屈指の難読駅の一つです。
猪谷恵也。現在大学3年生。
由来は高山本線猪谷駅。
青木洋輔。現在大学3年生。
由来は阪神電鉄青木駅。青木も難読駅の一つです。
真鶴彰人。現在大学3年生。
由来は東海道本線真鶴駅。
幸田努 。現在大学3年生
由来は東海道本線幸田駅。
根府川泰知。現在大学4年生。
由来は東海道本線根府川駅。