表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
96/184

96列車 ギャグ裁判

 11月27日。

永島(ながしま)君。ちょっと調べてほしいものがあるんです。」

アド先生は僕にそう持ちかけてきた。

(調べてほしいもの。なんだろうか・・・。)

 アド先生の後についていく。アド先生は自習室1に来た。自習室1は学校の車両庫。つまり、調べてほしいものとは・・・。

「この中にある車両がちゃんと動くかどうか調べてほしいんです。」

「・・・。」

唖然とした。量が量ですごい。普段家で見ている量ほどではないが、自分も家にあるものすべてを動かしたことはない。これを今から全部動かせというのだ。

「アド先生。これを全部調べろと。」

「そうです。」

アド先生は分かっているじゃないかというようなそぶりをする。

「今回のキラキラ展は12月23日から26日までの長丁場なんです。それでもって言った車両が走らないということがあると困るんです。」

(確かに・・・。)

「だから、あらかじめ持っていく車両のほうを決めたいと思うんです。」

アド先生は続けた。

永島(ながしま)君ならわかるでしょう。いつもバンに乗せていってますけど、車両を持っていくのにそんなにスペースがないでしょ。」

乗せているハイエースのことだ。確かに。普段他のところで展示をするというときバンの中はほとんどモジュールで埋め尽くしているため、車両ケースがそう大量に入るとは思えない。いや、思わない。

「それで君たちの私物も合わせれば、持っていく車両のほうを少しは削れると思ってねぇ・・・。」

とアド先生は言った。

「じゃあ、まずは、ここから運び出せってことですよねぇ。」

当然のことを聞いた。何をやるにしても、この部屋は狭い。部室よりも狭いのだ。

「そうですね。」

アド先生はそういうと部屋から出ていった。そうして、今日集まった留萌(るもい)潮ノ谷(しおのや)空河(そらかわ)朝風(あさかぜ)を呼んできた。

 僕はそうなるであろうということを見越して、車両ケースを出してきた。そして、

留萌(るもい)。ちょっとこれ運んでって。」

とすれ違おうとするときに留萌(るもい)に持っていた車両ケースをパス。

「おい、こんなバケツリレーありか。」

「バケツじゃないけどな。」

留萌(るもい)には文句があるみたいだった。だが、そんなの僕が知るはずはない。

 すぐに自習室1に戻って、また箱を出す。

永島(ながしま)さん。これ運んでけばいいんですか。」

空河(そらかわ)が聞いてくる。

「うん。学習室1のほうに運んどいて。」

「はい。」

そういうと空河(そらかわ)は1つ、朝風(あさかぜ)は2つ箱を持って学習室のほうへ行く。

(えっと。これもか・・・。)

「はっ。」

声を上げて2段ベッドの下の段に眠っているケースを問いだす。

永島(ながしま)。私も手伝うか。」

留萌(るもい)が戻ってきていた。

「いや、いいよ。これ運んで。」

僕は留萌(るもい)に機関車などの単品が入った箱を渡す。

「ちょっとこれ重くないか。」

「そりゃそうさ。機関車とかしか入ってないもん。」

「・・・。」

留萌(るもい)さん。それ運びますか。」

「ありがとう。」

「えっ。ちょっと留萌(るもい)さん。」

その声が廊下から聞こえてくる。

留萌(るもい)。元ソフト部だろ。」

「関係ないよ。この頃体力落ちてるの分かってるんだ。この前の体力テストこれまでBだったのがCに落ちたし。」

「知るか。俺のほうはずっとDしかとってないんだぞ。」

「それこそ知るか。」

少しばかり声を掛け合って、留萌(るもい)はまた部屋を出ていく。

(これで何箱向こうに言ったんだ。・・・。それにしても、まだあるのかよ。)

家にあるのは30箱。ここにあるのを数えるのにはいい機会だと思った。

「よし、これで終わり。」

最後の一個は僕が運び出した。

「それで終わりですか。」

朝風(あさかぜ)が僕に聞く。

「うん。これで終わり。」

そう答えて、小走りで学習室1のほうへ向かった。

「1、2、3、4、・・・。」

学習室1のほうでは留萌(るもい)が運ばれてきた箱の数を数えていた。

「何箱ある。」

すかさず聞く。

「17。17箱ある。」

(17かぁ・・・。うちより少ないな。)

「アド先生持ちすぎだろ。」

「・・・。」

「17かぁ。僕のほうはどれくらいあるのかなぁ・・・。」

空河(そらかわ)がつぶやいている。

「・・・。」

 しばらくそのままの姿勢でいるとアド先生が向こうから階段を上がってやってきた。テスト線を用意してきたのだ。

「じゃあ、お願いします。」

そういうとアド先生はテスト線を設置して、また来た方向に戻っていった。

「・・・。」

「じゃあ、やるかぁ・・・。」

僕はそう留萌(るもい)たちに声をかけた。

 それからというもの僕はこの中にある車両のことをチェックしていった。

(えーと。これは221系の箱だから中は当然221系なはず。)

と思って箱を開けてみた。

「・・・。」

中身は・・・。

留萌(るもい)。これ何だかわかる。」

すぐに留萌(るもい)に振った。

「えっ。これ・・・。ああ、これはキハ55とかっていうやつだよ。」

「へぇ。・・・。」

そんな形式聞いたことがない。

「にしても、入ってる箱が違うじゃん。」

「中にはこういうのもあるのかもなぁ・・・。」

そう言って僕はほかの箱もすべて中身を調べてみた。案の定そういう箱が出てくるのだ。

「おいおい。これはオハ35じゃん。」

「オハ35に交じって10系も入ってる。」

「・・・。」

「これは一般客車でまとめちゃっていいかなぁ・・・。」

「いいんじゃないか・・・。」

触れてはいなかったが、どの箱に何が入っているのかはっきりさせてくれというのもアド先生の指示だ。

「じゃあ、そういうことにしとくわ。」

 一方、空河(そらかわ)朝風(あさかぜ)のほうは走る車両とは知らない車両のほうを調べている。

「ゲホ。ゲホ。ゲホ。」

「どうした。空河(そらかわ)。なんか吐き気がするものでも引き当てちゃったか。」

「ああ。見てみるか。お前にこの吐き気移してやろうか。」

「はっ。移してくれなくて結構。」

「見てみやがれ。これで吐き気がしないほうがおかしいぞ。」

「・・・。」

自然とその中身が気になる。その箱をのぞいてみると、

「いやな貧乏くじ引いたな。」

留萌(るもい)これ分かるのか。」

「分かるわけないだろ。この水色のイモムシ。」

「・・・。」

留萌(るもい)さんでも分かんないって相当上イッテますねぇ・・・。」

「ナヨロン先輩だったら分かるかも。」

「あの人かぁ。あの人なら。」

まぁ、ナヨロン先輩でなければわからないようなものまで中にはある。

「・・・。」

「動くなー。」

空河(そらかわ)はその水色の車両に向かっていう。

「ジジジジジジジ。」

水色の車両は声を上げて、ゆっくり動き出した。

「死ねー。」

空河(そらかわ)は運転席から立ち上がり、それに凸ピンを食らわせる。するとその車両は横に倒れて、動かなくなる。線路から外れて、電気がもらえなくなるからだ。

「はっ。ザマァ。」

「おい。ふざけるな。」

朝風(あさかぜ)が声を上げると、朝風(あさかぜ)のほうで走らせていた車両がそれにツッコんだ。

「はっ。ザマァ。」

「おい、こら直せ。」

「いいだろ。ゴミはそこでふんぞり返ってれば。」

「・・・。」

「おい。空河(そらかわ)これはゴミなんかじゃないぞ。くそゴミだ。」

「くそゴミは死ねー。」

「・・・。」

「おい。空河(そらかわ)。くそゴミのほうはそこまででいいからこっちも調べてくれ。」

「はい。」

空河(そらかわ)にその車両を渡す。中身は・・・。

「死ねー。」

開けたと思われた。その直後にすぐにこの声。空河(そらかわ)からしてみればくそゴミ以外の何物でもないのだろう。

永島(ながしま)さん。この「ハイパーに問題を起こす子」動いてくれません。」

「おいおい。名前は冗談じゃないのか。本当に「ハイパーに今問題を起こしてどうするんだよ」。」

「・・・。レールクリーナーやっったほうがいいんじゃないか。」

空河(そらかわ)。お酒よこせ。」

朝風(あさかぜ)。酒癖が悪いぞ。」

 その時、潮ノ谷(しおのや)はこのやり取りを唖然とした顔で見ていた。

「あの。留萌(るもい)先輩。みんないつもこういう感じなんですか。」

「まぁね。ていうか、今まで展示とか言ってたんだし、知ってるだろ。」

永島(ながしま)先輩が時々ああなるのは知ってましたけど、空河(そらかわ)たちがああなるのは知りませんでした。」

「・・・。」

「ハイパーに問題起こしてんじゃねぇよ。バーカ。行けー。」

朝風(あさかぜ)が声を上げても783系は動いてくれない。

留萌(るもい)。こいつ死刑でいいよな。」

「死刑はよくないと思います。せめて無期懲役にするべきです。」

潮ノ谷(しおのや)が話に入ってきた。

(なんだよ。さっきまでついていけないみたいなこと言っといて・・・。)

「だって、無期懲役でも動いてくれなかったら無期懲役にする必要がないだろ。」

「じゃあ、無期禁固の刑にすればいいと思います。」

「無期禁固って。」

潮ノ谷(しおのや)さん。禁固は面白くないから今この場で殺すべきです。」

空河(そらかわ)は禁固に反対のようだ。

「分かった。」

ちょっと全員が言いたいというようになるのを抑えてから、

「よし、今から「ハイパーに問題を起こす子」に対する動いてくれないか裁判を始める。」

「なんですか。そのギャグ漫画的な裁判は・・・。」

潮ノ谷(しおのや)が声を上げる。

「弁護人静かに。」

「俺はいつ弁護人になった。」

「さっき。」

(いい加減だな・・・。)

「裁判長。この「ハイパーに問題を起こす子」は幾度の展示で動いてくれなかったそうです。検察側として、死刑を求刑します。」

留萌(るもい)が言う。

「それに異議はありません。」

空河(そらかわ)の声が聞こえる。

「同感です。レールクリーナーをぶちまけても動いてくれないなら、そうするべきです。」

「・・・。」

「静粛に。」

手をたたく。

「意見を言いたいようだが、ここは弁護側、検察側の意見は省略いたします。」

「その時点で裁判になってねぇよ。」

潮ノ谷(しおのや)のツッコミが飛ぶと、

朝風(あさかぜ)。これあの箱の中ツッコんどけ。」

「はい。」

「先輩たちはいったい何がしたかったんですか。」

「何も。」

僕、留萌(るもい)空河(そらかわ)朝風(あさかぜ)の声がそろう。

「・・・。」


永島家の人々。関係する人々。

永島宗一(そういち)。祖父。79歳(2008年当時)。

遠江急行(こうきゅう)4代目社長。2010年3月31日付で、すべての経営を隆則(たかのり)に譲っている。


永島香奈枝(かなえ)。祖母。76歳(2008年当時)。


永島隆則(たかのり)。父。49歳(2008年当時)。宗一の三男。

2010年4月1日から遠江急行(こうきゅう)5代目社長。


永島(のどか)。母。45歳(2008年当時)。


(みなみ)駿(しゅん)隆則(たかのり)の姉雅美(まさみ)の息子。25歳(2008年当時)。

幼少期の遊び相手。幼稚園に通っていた時、駿とほぼ鉄道のことしか話していなかったため、小学校の時の閉じこもる原因を作ってしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ