88列車 効果発動
オーバーレイユニット一つを墓地におくって効果発動!!
遊戯王ZEXALから。
10月22日。昼・・・、
「永島。ちょっとさぁ、俺と一緒に大阪いかない。」
最初に聞いた第一声がこれだった。そう持ちかけてきたのは佐久間。変に顔がにやけている。
「どうしてだよ。ていうか、また・・・で行こうとかっていうんじゃないだろうなぁ。」
「それは言わないって。人巻き込んでまでそういうことするわけないだろ。」
「しかねないから言ってるんじゃねぇか。で何。」
「だから、大阪にオープンキャンパス見に行こうぜって言ってるじゃん。」
それは最初言ってなかったような・・・。
「うーん。考えとくわ。」
僕はこう回答した。テレビでやっていたことだが、これは大阪の人たちが使うことわるときの決まり文句らしい。
「そう言わずに行こうよ。大阪だぜ。めったに行けるようなところじゃないし。」
それは学生がということだろう。もう東京都の大都会に住んでいる人が言うような言葉ではない。浜松から一番近い大都会は名古屋だが、僕はそこまで遊びに行ったことがない。これは僕が普段の生活に照らし合わせていったのだろうか。もちろん、僕にはこんなこと考えられないことだが・・・。
「なんていう学校なんだ。」
留萌が興味ありげに聞く。
「笹子観光っていうところだけど。」
(笹子・・・。)
どこかで聞いたことがあった。
「へぇ。この子が寛太の娘か。かわいいなぁ。」
「だろ。」
寛太はさくらの頭をなでる。
「でも、隼輔。お前遠江急行で本当にいいのか。」
「俺はいいよ。ていうか、俺にも子供がいてなぁ。家族も養わなきゃいけないし、すぐに転職っていうことも・・・。でも、寝台特急を運転したいってことあきらめたわけじゃないんだ。時期が来たら、そっちに行くよ。」
「時期が来たらって。こなかったらどうするんだよ。笹子出た肩書きが泣いてるぞ。」
「うるさい。人の心配より自分の心配しろ。もうすぐ俺たちもしごかれる時だぜ。クレペリンにな。」
隼輔は笑ってどっかに消えていった。
「クレペリンかぁ・・・。」
寛太はため息をついてさくらのほうを見た。
「今の人だれなの。」
聞かれる。
「おっ。俺の高校時代からの親友さぁ。俺と同じでJR希望だったんだけど、JRに入れなくてなぁ。それで今は江急ってところで働いてる。お前の一つ下の女の子もいるみたいだぞ。確か名前は結香って言ったかなぁ。」
そうだ。これは小学校3年生の時。浜松工場でやっていた成程発見デーの時の話だ。笹子は確か専門学校で、お父さんが出たところは大阪にあるとの話だった。
「それ知ってる。」
「マジ。」
「うん。だってお父さんが出たところだもん。」
(なんで世の中ってこんなに狭いのかなぁ・・・。)
「そうだったっけ。」
木ノ本は忘れているようにも思える。
「あっ。これは話してなかったね。」
「なんだ。」
「話し戻すけど、留萌は行かない。」
「うーん。お父さんの母校だしなぁ・・・。どんなところかは見ておきたいわね。」
実をいうと留萌はこの専門学校のことは聞いているが、中身はほとんど知らない。
「木ノ本は。」
「まぁ、将来的にそういうところに行かなくちゃいけないし・・・。」
「で、永島は。」
「さっき言ったじゃん。考えとくって。」
「お前の考えとくってあてにならないんだよ。」
(確かに。)
(あてにならない・・・。萌にもそういうこと言われたことあるような・・・。)
それはいつだったっけ。なんて考えることはできない。なんかいっぱい言われてきたことのような気がするからだ。
「まぁ、まだ時間あるからさぁ、気が向いたら声かけてくれよ。」
そういうと佐久間は席を立った。13時15分近くになったからだ。
「木ノ本。次の授業なんだったっけ。」
「えっ。数Ⅱだけど。」
「数Ⅱかぁ。あれだんだんわけわからんになってくんだよなぁ・・・。」
独り言を言って、自分の席から立ち上がる。
(とうとう、その時が来たんだな・・・。)
心の中であの約束を果たさなければと思った。
放課後。今日は部活がある。部活と言ってもこの頃はモジュールを作ったりしているため、1学期初頭と活動内容はほぼ同じである。
「ナガシィ先輩。それ取ってください。」
柊木が傍らにあるトンカチを指差す。
「あいよ。翼。頭かち割れるから注意しろよ。」
「投げるの無し。」
柊木があわてて止める。
「冗談だって。はいよ。」
いつもマイペースな永島だが、今日はいつにもましてマイペースなところがある。柊木にトンカチを渡すと席に座って本を見始めた。ここに置いてある古い時刻表だ。これをめくっていると何かと面白いらしい。これには今見れない名前が多く乗っているそうだ。
「おい、木ノ本見てみろよ。」
呼ばれる。
「これ「鳥海」だぜ。」
永島が指差している先には「鳥海」という文字がある。だが、こんな名前聞いたことがない。
「「鳥海」ってなんだよ。走ってるところは「あけぼの」と同じみたいだけど。」
だが、目線を動かしてみると別のところに「あけぼの」の文字がある。嘘かと思ってもう一度その場所を見てみる。だが、嘘ではない。
「「あけぼの」がなんで。」
「木ノ本さん知らないんですか。「あけぼの」はもともと山形新幹線のルートのほとんどを通って青森までいってましたけど、山形新幹線が開業するからっていう理由でそこ通れなくなって、陸羽東線経由の寝台特急が「あけぼの」になって、羽越線経由の寝台特急が「鳥海」になったんですよ。」
朝風が口をはさむ。
「へぇ、そうなんだ。」
「そうなんだじゃなくて、これくらいふつうです。」
「朝風。ちょっと頭に来るんだけどその言い方。」
「榛名はもうちょっと勉強したほうがいいって。」
「留萌先輩の言うとおりですね。木ノ本先輩は撮り鉄にしては知識がなさすぎます。」
留萌と北石が続ける。
「ちょっと。」
「事実を言ったまでです。」
「北石。殴られたい。」
「殴られる筋合いじゃありません。さっきも言いましたが、僕は事実を言ったまで・・・。」
すると木ノ本が首を絞める。
「事実をなんだって。」
「あ・・・だから・・・その・・・。」
さらに続けていると、
「ギブ。ギブです。」
北石がそう言うと首絞めを解いた。
「本当にやることないじゃないですか。」
「殺しはしないから大丈夫。善知鳥先輩じゃないから。」
「・・・。何となくわかります。」
北石は頭をなでながら、外を見る。
僕はその間何をしていたかというとただ、傍観していただけ。それが終わったらまた時刻表めくりに戻った。このときは案外すごい時間に設定されている列車があることがよく分かる。他にこの中で見つけた今では見ることのできない名前は「特急ライラック」、「特急アタッシュやくも」、「特急おき」、「特急つばめ」など。他にもいろんな名前があるが僕の頭の中で強く印象に残っているのはこれらだけだ。
他に時刻表をめくっていて想像できるものがある。それはこのときは知っていた車両たちだ。今は見ることのできない車両がこの96年からの14年間で多くある。それの中にあるとすれば、「特急雷鳥」の新潟行き。大阪~青森間の「特急白鳥」。「きたぐに」、「能登」、「はまなす」以外の急行列車。もちろんこれ以外にもたくさんある。昔はこういうのが走っていたなぁということがここに踊っている時刻だけで伝わってくるのだ。
「へぇ、昔は「サンダーバード」って呼ばれてなかったんだ。」
木ノ本が時刻表をまた覗き込む。覗き込むと行っても最初は僕が呼んだから違うか・・・。
「ああ。こんな「スーパー雷鳥 サンダーバード」なんて長ったらしい名前で呼ばれてた。他に同じような名前は「スーパーくろしお オーシャンアロー」っていうのもあったなぁ。」
「それって長すぎるから短くしたってだけでしょ。それうえカタカナで。」
「理由はほぼそれに近いなぁ。まぁ、そんな名前が生まれた理由って他に使われてた車両が485系か381系じゃなくて681系か283系だったっていう違いしかなかったけどなぁ・・・。」
「・・・まぁ、確かに。」
「ふぅん。「スーパーあずさ」みたいなことは考えたくなかったんだな。」
「まぁ、私たちは気にならないけど、関西人だと気にするんじゃないか。東京と同じ発想は嫌だとか。」
というと一呼吸おいて、
「永島。どうして、関西のほうの快速は「新快速」って呼ばれてるか知ってるか。」
「えっ。」
これは聞いたことがない。
「その反応は知らないって感じね。」
「ああ。」
「その理由は東京に「特快」があったから。」
「どういう意味よ。」
木ノ本には通じなかったみたいだが、僕には通じた。さっきの同じ発想は嫌だということだろう。
「もし大阪にも「特快」が走ったら、パくったことになるじゃん。そうじゃなくて「新しい快速」を取り入れたいから「新快速」ってつけたんだって。」
「じゃあ、さぁ、両方走ってる名古屋はどうなるわけ。」
「・・・。」
確かに。名古屋は特快も新快速も走っている。
「さぁ、中京だから中くらいの考え持った人しかいなかったんじゃない。」
これは留萌も分からないようだった。
18時ごろ。僕は切り上げようとする。
(そういえば、永島がオープンキャンパスに行かなきゃ・・・。)
ふとその考えが浮かんだ。
「じゃあ、俺はおいとまするよ。」
と言って部室のドアを開ける。
「あっ。あ疲れ様です。」
他の人もそう言って帰る永島を見送る。
「私もここで。」
ちょっと強引過ぎるかもしれないと思ったが、そう声をかけて、部室を出た。
(榛名。どうしたんだ。)
先に出て行った永島はもうステージのほうにいる。今は追いつきそうにないが・・・。ステージを走って横切り、グリーンベルトに出るところで捕まえた。
「永島。」
「何。」
永島は意外そうな顔をした。
「お前、何でオープンキャンパス行こうとしないんだよ。」
「えっ。だって面倒だから。」
確かに。永島はいつも遊ぶ時も面倒だからという理由で来ていないことが多い。
「面倒だからじゃないだろ。将来いかなきゃいけない学校のことなのに。どうしていこうとしないんだよ。頭おかしいだろ。」
「・・・。」
なんか萌に接しているような気分だ。
「いい加減にしろよ。成りたいって思うものがあるなら、本気でそれに打ち込めよ。なんでそんな風なんだよ。いつか痛い目見る。」
「・・・。」
「永島言ったよねぇ。何に趣味もって打ち込もうが自由って。それはどんな変なことに興味持とうが自由ってことで、打ち込む度合いが自由ってことじゃないだろ。」
「・・・。」
確かに。僕が言ったそれはそういうことになる。
「私を本気にさせてくれたその言葉が、お前の本気を引き出せないってことはないだろ。」
「・・・。」
ここまで言って口から出る言葉がなくなる。今ので通じたのかどうかは分からない。今はただ永島からの返答を待つだけだ。
「・・・。木ノ本の言うとおりだな。」
一言返ってくる。
「分かった。佐久間が言った笹子。行ってみるよ。」
(よし。)
心の中で言う。
帰路。萌にメールを打った。
「永島は11月13日、笹子観光のオープンキャンパスに行く。」
(これで、もし永島にあった学校だったら、永島はここ一本になる。)
今日あの密勅が効果を発揮したのだ。
引き続き、
佐久間悠介。本作中一番部活の出席率の低いキャラクターですね・・・。
由来は飯田線の佐久間駅。下の名前はほぼなんでもいいや状態でした。
醒ヶ井瑛介。部活の中で手先が器用な人。
由来は東海道本線の醒ヶ井駅。
箕島健太。
由来は東海道本線三島駅。漢字が違うのはこのままではどうかと思ったからです。
室蘭友紀。木ノ本と留萌を鉄道研究部に入部させようと手引きをした。
由来は室蘭本線の室蘭駅。